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商品説明
超古代の日本は世界の覇者だった…。抱腹絶倒の偽史書に、しかし国民は喝采し、権力者は動いた。誇るべき架空の歴史をでっちあげる奇妙な情熱、悲しき病理。日本人の心理構造を、抱腹絶倒の事例から暴く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
長山 靖生
- 略歴
- 〈長山靖生〉1962年日立市生まれ。歯学博士。鶴見大学歯学部講師。古典SF・大衆文学研究家。著書に「近代日本の紋章学」「近代日本の殺人ファイル」「偽史冒険世界」など。
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紙の本
自分を正当化するための偽りの歴史
2002/03/09 10:18
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投稿者:本門寺四十郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在の自分を正当化するために、あるいは正当であると思い込んでいる自分を取り戻すために、偽史はあちらこちらに出現する。「ユダヤの議定書」はその中でも代表的なものだが、日本においても偽史は数多く存在する。いや、この著者の言葉によれば、日本こそ偽史の本場と言えるかもしれない。
たとえば、西欧との比較で職人たちの法の制定の仕方を対比すると、西欧ではギルドが当初権威を守護聖人に求めていたのが、やがて自分自身を根拠として職業の格付けを確立するように努力しだす。これとあわせて、徹底した文献批判が行われ、偽文書・偽証明書・偽契約書を破棄し、その作成を厳しくする法律を制定して、今日に至っている。これに対し日本では、各職種の慣習を法としてまとめたはずの式目が、天皇綸旨の形で成立している。もちろんこれは偽書なのだが、にもかかわらず天皇という権威を根拠にその正当性を主張しているのである。
この二つの違いは、緩いながらも天皇の権威が千数百年も保たれた日本と、すべての権威がリセットされ、自らの権利は自らで守るしかなかった西欧との環境の違いによるものといえるだろう。それゆえ、日本においては偽史は決して真正面から否定されるものではなく、その奥に秘められた意向を尊重すべき存在と見なされてきたのだ。
そうした「偽史に甘い」日本において、果たしてどのような偽史が形作られてきたのかを述べたのがこの本だ。中盤、やや事例が繰り返しになる嫌いがあるが、それでも日本がさまざまなフィクションに基づいて運営されてきた国だというのがよくわかる。そのときやりたいことに対して、それにふさわしい偽史がすっと提示される。そしてその偽史に基づいて、自分の望むことを成そうとする。そういう国の動きがこの本には描かれている。
ただ、それだけではこの本は過去を振り返るだけの本にすぎなかったろう。一番見事なのは、最終章であり、あとがきである。偽史に彩られた日本という国の現在も、また日本国憲法の作成という偽史によって大いにゆがめられている。どうゆがめられているかについては、この本をぜひともご一読願いたい。
とにかく現在の日本の問題は、そもそもどこに原因があったのかを明確に指摘する良書であることは間違いない。