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商品説明
人はなぜ「なぜ」と問うのか。難解とされる「純粋理性批判」の核心を読み解き、カントが追究した根源的な問いを新たに問い直す。破綻する理性の起死回生に挑戦する思考のメカニズムとダイナミズムを解き明かす哲学入門。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
石川 文康
- 略歴
- 〈石川文康〉1946年北海道生まれ。同志社大学大学院博士課程修了。東北学院大学教授・日本カント協会役員。著書に「そば打ちの哲学」「カント第三の思考」ほか。
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紙の本
カントの思索の発端はアンチノミー
2002/10/13 23:08
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アルケー - この投稿者のレビュー一覧を見る
同一のテーマ(同一の主語)に、同時に肯定と否定の両方が提出されることを矛盾という。カントは理性のそのような場面をあえて提示し、それを「アンチノミー」(二律背反)と呼んだ。アンチノミーは四つあるが、第一のアンチノミーを論じる。
第一アンチノミーにおいては、テーゼとアンチテーゼの両方が証明されている。普通であれば、証明されたのであるから、喜ばしいことだが、矛盾しあう二つの主張が同時に証明されてしまったのであるから、喜ばしいどころではない。しかも、それを証明したのは、矛盾を嫌うはずの同一の理性なのであるから、ますます不可解である。
しかし、このことはもっと深い事態につながる。それは双方からの証明が成立したということは、両方の主張がともに成り立たない。すなわち偽だということである。これは互いに「相討ち」終わったことを意味する。
そしてその帰結とは、そもそも世界全体が存在しないということである。というのは、世界の有限な大きさも否定され、無限な大きさも否定されたのであれば(およそ大きさとは有限な大きさか無限な大きさか、いずれかでなければならならず、それ以外に大きさというものの観念が成り立たない以上)、世界は大きさを持つものとしては存在しない。要するに世界は存在しないということを意味するからである。
テーゼ 世界は有限である=有限な大きさを持つ
アンチテーゼ 世界は無限である=無限な大きさを持つ
両者は相討ちで、世界は大きさを持たない>世界は大きさを持つものとしては存在しない、要するに世界は存在しない
こうして、日頃疑ってもみない世界の概念が崩壊する。しかし、このような帰結を目のあたりにしたわれわれ自身は、依然として存在している。この帰結を導き出したのは、われわれ自身であり、われわれの理性にほかならない。存在しているかぎり、どこかに存在しているはずである。その「どこか」とは、やっぱり世界以外にない。
事態はどうなっているのであろうか。これを考えぬくのが、本書の課題にほかならない。カントが理性批判を開始した動機はこの事実に気づいたことにある。