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目撃者は月 (光文社文庫)
目撃者は月
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偽家族 | 5-30 | |
---|---|---|
目撃者は月 | 31-62 | |
殺し殺され | 63-90 |
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紙の本
論理を大切にする都筑ですが、この本に推理傑作集の謳い文句はいけません。どう読んでもモダンホラーでしょう。ちょっと技巧に奔りすぎた
2006/11/06 20:22
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《ビルでのもみ合いから誤って人を殺してしまった男が現場に落とした免許証。自分のミスに怯える男が陥る狂気の世界》出版社の分類では推理小説ですが、恐くないモダンホラーが正しい気がします。
今は亡き都筑道夫のオリジナル推理傑作集と聞けば、見過ごすことはできないでしょう。私にとって都筑といえば、本格ミステリ作家ですが、ご本人はどちらかというとホラーのほうが鋤だったようです。ただし、都筑のホラーというのは、都会を舞台にした洒落たもので、恐怖譚とは違います。それを分かっていたからでしょう、彼は自分の作品をモダンホラーに位置づけていました。
で、今回は推理傑作集とありますから、私は『なめくじ長屋』の凝った漢字の使い方からルビの振り方、江戸時代の風俗、軽妙なユーモア、絶妙の論理や、ひねりで言ったら推理作家協会賞を取った『退職刑事』のことを思い浮かべながら、どんなに華麗な推理世界が展開するのかとワクワクしながら読み始めたのです。
ビルの横でのもみ合いから人を殺してしまった男が、自分の落とした運転免許証を気にかけるうちに陥る狂気。しかし、それで終わりかというと別の可能性が見えてくる話を始め、ともかくひねりが多い作品ばかりです。人間の狂気を扱おうとすると、本質的に解決は無くなってしまい、話が同道巡りをする傾向があります。そうした中で、犯人が被害者となり、観客が犯人となり、死んだはずの人間が生きているなどは当たり前のことかもしれません。
私は小説に感動や涙を望んでいるわけではないのですが、技巧を楽しめないのはお前が悪いと言わんばかりの都筑の作風を、単純に有り難がることは出来ませんでした。ひねりばかり加えた同工異曲の短編作品ばかりを続けて読まされると、いい加減厭きてしまいます。おいてけぼり、とはこんな状態をいうのでしょう。読者に媚びる必要はないですが、こういった本が魅力的かどうか、職人技に溺れた自己撞着といった感じです。
中味はどれをとってもモダンホラーというか、広義のミステリーと分類できるものばかり。表現や漢字にうるさいと言われていた都筑ですが、この本を出版社が推理小説集と謳う事に何の抵抗も無かったのでしょうか。『黄色い部屋はいかに改装されたか』で論理としての推理小説を高らかに宣言した作家らしきもない。推理のキャッチに飛びついた読者に、あとがきででも一言断りが欲しかったと思うのは、わたしだけ?