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紙の本
頭痛と嗜虐
2008/05/03 12:32
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hamushi - この投稿者のレビュー一覧を見る
頭痛で眠れない夜の気晴らしにと本書を読み始め……よりひどい頭痛とともに朝を迎えてしまった。
冒頭から物語の末尾まで、無限に広がるぬかるみのように、縛り叩きと悪趣味な辱めの描写が続く。他国から狩り集められたという、美しい「王子」や「王女」たちの心身に加えられる執拗な虐待に、最初のうちこそ寒気がしてならなかったものの、すぐに寒いも熱いもなくなって、ただただうんざりしてしまった。
人はどんなことにも慣れるというけれども、たとえファンタジーであるにしても、ほんの数ページでそれらの「出来事」が単調に感じられるようになってしまった自分の脳の順応ぶりに、まず驚いた。
そして読後…訳者あとがきを読み、キリスト教文化というものの、ある種、得も言われぬ側面について、つくづく思うこととなった。
著者のアン・ライス氏は、カトリック教育の一環として、キリストの身体に釘が打ち込まれる苦痛を想像するなどという精神的エクササイズを受けるうちに、その苦痛を我がものとして受け止めるばかりでなく、「拷問される美しい中世的な聖者の姿」に重ね合わせることで、生まれて初めてエロチシズムを感じてしまったのであるという。
たとえばである。東京都北区王子の飛鳥山公園あたりに、いきなり巨大な十字架が立てられ、そこに半裸もしくは全裸の男が手足を釘で打たれて、半死半生で貼り付けられて群衆の注目を集めているとしたら、これはもうSMがかった猟奇事件以外の何ものでもないだろう。不謹慎と誹られることを覚悟した上で書くけれども、キリスト教の文脈から切り離してしまえば、十字架に釘打たれている半裸の男性像というのは、どう言い逃れようとしても、SM的な図案ではないと言うことは難しい。
宗教教育で、そのような示唆を受けた上、女性として性的な関心を極端に抑圧されるような教育を受け続けた場合、その破綻がどのような形で現れるか……アン・ライスのこのファンタジー作品は、その一例をまざまざと見せつけるものであると言えるかもしれない。
幸にして…なのかどうか、よくわからないが、私はアン・ライスが受けてきたようなカトリック教育および性的抑圧の強い境遇で育つことはなかった。そのせいかどうかというのも、よくわからないのだが、全編にわたって極端にエロチックかつ猟奇的な行為の描写が延々と続くこの小説を読んでも、官能の解放というものをほとんど感じないばかりか、逆に、本来官能に自然に伴って支え合う関係にあるはずの情緒の欠落のみを強く感じて、殺伐とした気分に陥るばかりであった。感情の共有、相手の気持ちをいたわり想像する心情、相互の信頼によって培われていく情愛…そうしたものが、この世界の主従関係には、微塵も存在しないのである。
そしてこの物語には、通常のファンタジーに約束されているような「救い」や「解放」や「ハッピーエンド」は存在しない。(どうやらレズビアンらしい)魔女の呪いで百年眠らされたのち、(バイセクシュアルらしい)皇太子の性的暴行によって目覚めさせられた「眠り姫」は、そのまま彼の城へと連行されて虐待の限りを尽くされ、王子の母親である(バイセクシュアルであるらしい)女王の、一層すさまじい虐待の洗礼を受けることによって、精神構造を完璧な「奴隷」のものに作り替えられ、さらなる被虐の試練へと旅立たされるところで、話が終わる。
この、ひたすら「られる」もしくは「される」ばかりの受け身の「眠り姫」が、最後の最後に、自らの意志によって虐待を受け入れ、主君の意志とは無関係に喜びを享受する域に達するという、奴隷としての精神的自立(?)を果たすところで物語(第一部)が終わるというのは、ある種の皮肉であるのか、それとも必然的結果であるのか、この種の世界に疎い私にはよく分からない。いずれにせよ言えるのは、「眠り姫」に深く執心し、自らの虐待支配のなかに閉じこめ、自己愛的な要求を一方的に突きつけることによって寵愛しようとしていた皇太子の思いの届かない境涯へと、「眠り姫」が旅立って行ったらしい、ということである。
皇太子を含む、この世界における権力者(つまり嗜虐者)側の人間は、弱者を徹底的に虐待して優位に立つという支配関係に強烈に依存した精神構造を持っている。他国の王族を最下層の奴隷に落として虐待するという風習は、王侯貴族の単なる(悪)趣味の領域に留まらず、より下層の社会構造にも深く食い込んでいて、それなくしては国が成り立たないほどに、奴隷を切実に必要としていることが、物語のはしばしから伺える。彼らの国が奴隷の徹底した洗脳教育や管理方法を編み出していることからも、その存在の重要さが分かるというものであるが、社会構造のなかでは全く逃げ場や救いのない奴隷たちにも、完璧な奴隷としての精神を獲得することによって、支配者側の精神的依存や支配の届かない内的世界を持つに至るという、ある種の逃げ道が存在したことになる。「眠り姫」は、その道をたどるべく、より厳しい試練を受けるために旅だったわけである。
正直言って、この世界の権力者側の自己愛性人格障害的な人間達が、どうにもこうにも好きになれなかったので、「眠り姫」の自立した被虐行動に傷つき悲嘆にくれる王子たちの様子が描写されるに至り、ほんの僅かだけ、胸のすく思いがしたのではあるけれども……やはり読後に残ったのは盛大なる頭痛であった。
「眠り姫」の旅立ち後の続編を読めるだけの健康を取り戻すには、もうしばらくかかりそうである。
紙の本
眠り姫を目覚めさせたのは、王子の硬くたくましい○○だった!
2001/05/26 22:07
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:HANA - この投稿者のレビュー一覧を見る
だれもが知っている有名な童話「眠れる森の美女」。この童話のアダルトバージョンともいうべき小説が、アン・ライス著のこのシリーズ。
冒頭からいきなりハードなシーンでちょっと驚いたが、嫌悪感を感じないのはきれいなイラストと、宮殿で調教されるという、どこかしらおとぎ話めいた設定のせいだろう。
○○で目覚めた眠り姫は、王子に連れられ厳しい調教を受ける。苦痛と屈辱の中で、眠り姫はいつしか官能の歓びに目覚め、従順な性奴となる。そして、向上心あふれる姫は、さらなる過酷な奴隷人生を自らの意思で選ぶのだった。
紙の本
なによりも著者が一番楽しんでいそうな同人的ポルノ
2002/06/15 14:19
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浅知 恵 - この投稿者のレビュー一覧を見る
<眠り姫>をモチーフにしたSMチックな官能小説。ミもフタもないが、そうなんだから仕方がない。
眠りから覚めた<眠り姫>が、魔法を解いた王子様にあんなことやこんなことをされながら、奴隷としての自覚を深めていく。ちなみに王宮には<眠り姫>と同じような立場の王子・王女が奴隷として奉仕しており、まあ要するに何でもアリの世界である。
正直なところ、女性のセックス・ファンタジーというものがどういうものかよくわからないが、本書に関して言えば、ボーイズラブ大好きのおばさんが同人的に書いてみましたという感じで、とても楽しそうなのが微笑ましい。きっと訳者の柿沼瑛子さんも、嬉々として訳したことでしょう。
内容的には「よく出来た18禁ゲームのシナリオ」と言い切ってしまっても問題ないだろうし、そういう意味ではアン・ライスはきっと日本の18禁ゲームに興味を示すのではないかな。
「次はどんな屈辱を味あわせてやろうかしら」などと呟きながら小説を書くアン・ライスを想像しながら読むのが、おすすめ。