紙の本
1Q84ブームの中。ぜひ読んで頂きたい本
2010/04/28 21:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こうじ・1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず初めに申し上げますが、私はオウム真理教信者ではありません。
まして特定の宗教に傾倒してもおりません。
ものすごい村上ファンではありませんが、同氏が地下鉄サリン事件以後
この手の問題に力を注いでいるように感じる。
その手の本を手に取った方には読んで頂きたい本。
内容はなんてことないオウム真理教元信者との対談がメイン。
対談も大体はのんびりとしたものでテロ事件の事は知らなかった人が大半のようです。(この内容が真実か、それが本当かどうかはまた別の話として。)
はたして1Q84の「さきがけ」グループと「あけぼの」グループのように
穏健派と過激派のグルーピングがあったのか?
その背景には何があったのかを考えさせられる本。
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『アンダーグラウンド』でサリン事件の被害者に丹念なインタビューを行った著者は、今度はオウム信者・元信者にインタビューをした。オウムとは何だったのか。『アンダーグラウンド』では、被害者の、事件に対する対応の多様さ、ひいては人生の多様さ、その多様性を丁寧に、まるで著者が被害者の一部になったかのようにリアルに浮かび上がらせてくれ、そのため読者は非常に深い部分に直に触れられ、サリン事件を我がことのように感じたわけだが、さて、今回のインタビューを読み終わったこの疲労感と苛々。これはインタビューを実際に行った著者が感じていることかも知れない。信者や元信者たちの、この多様性のなさ。とにかくみんなまじめ、そんで頭いいんだけど固いのよ。その固さは、自分が救われることにしか興味がない自己中心性というか狭さ、にも関連するし、曖昧さやいい加減なことに耐える力が弱い脆弱な自我構造のせいにも思える。人生は困難でしんどくて、いろいろくよくよ考えて悩むのは、そりゃ多かれ少なかれみんなそうだし共感できる。何より苛々するのは、そこですぐ答えを欲しがって、自分の外に答えを求める、自己を放棄したあの態度だ。著者があとがきでいう「それは私であるかもしれないし、あなたであるかもしれない」という言葉は胸に響くが、苛々は消えない。これはもしかすると、オウム的なるものを、異質なものとして排除して事足れりとしているこの社会の閉塞状況への苛々か。河合隼雄先生と著者との対話が巻末にあり、ここでちょっと救われたな。
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実におもしろかった。彼らの考えを否定することは出来ない。むしろ共感できるところがいっぱいあったあたしは、りっぱなオウム信者??(笑)
彼らも同じ人間。ただちょっと世の中になじめなかっただけ。被害者から見たらオウム信者は絶対悪であるけれど、内部にとっては麻原は神であった。いつから歯車は狂っていったのか。はじめからこれが目的だったのか・・・。どちらにしろ、何も知らなかった末端信者にとっては迷惑な話だよね。
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2003.12.18 どこかひとつ 「『アンダーグラウンド』をめぐって」 ,
2003.12.19 悪いヤツ 「『悪』を抱えて生きる」 ,
2003.12.20 必要悪 「『悪』を抱えて生きる」
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信者へのインタビューは興味深かった。興味の域は出なかったけど。 でも、河合さんとの対談にはたいせつなことがたくさん書いてあった
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「アンダーグラウンド」の続編。読後に残った混沌を混沌のままにするのではなく、ある程度整理する作業は必要だと感じたので最後に河合隼雄氏との対談が入っているのが良いと思いました。
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警察や医者にピンキリがあるように、ホームレスにもピンキリがあるように、宗教にもピンキリがある。良い人も居れば悪い人も居る。政治だって会社だってそうでしょう。膨れた組織の多様性は確実に、当然ある。でも何故かそれは僕は気付けない事だった。読んでるとあからさまな宗教的な思想や行動強制さえなければ、僕は末端の純粋な信者とは話しが合ってしまう気がする。あくまで個人的に哲学的な意味で。一義的な自分の考えが恥ずかしくなった。幹部のした事は僕の価値観の中で正しくないし、被害者の方からしたら当然許されないと思うけれども。例えば大企業の幹部が社長命令で汚職をして、それが露見して会社が社会的なダメージを受けて、そして当然何も知らされずに純粋に愛社精神すら持ち営業を毎日汗をかきながら頑張っていた末端の平社員が首を切られる。それに感じる矛盾と似た事を僕は社会に感じた。
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こうしてオウム信者の話を一人一人読んでいると、彼らは特別異常な人というよりはむしろ物事に対して「まあ世の中こんなもんか」と思えず、生きることに対して普通の人が問うのをさける程本質的な問題に自分なりに答えを出したくてオウムにたどり着いた人が多いのに驚いた。途中そのあまりの真摯な姿勢に現実との乖離を見て気分が悪くなった。著者が「日本の一般社会になじめない人達の受け皿を作るべき」と言ってたが、それは制度としてはかなり難しく、社会の流れでそういう隙間が結果的に出来ればいいくらいの話だと思う。善OR悪の二つの選択肢だけじゃ全然人生も社会も図れない。
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大学の図書館にあった。
世界の終わりとハードボイルドワンダーランドと間違えて借りた(私も思い込みの激しい野郎だ)。
意気揚々と頁と捲ったらさっぱり違う内容でびっくらこいた。
オウム真理教の話。
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2009.03.08. ポスト・アンダーグラウンド。今度は信者・元信者へのインタビュー。視点が変われば意見ももちろん変わる。正直、こちらの人というのは、偏っている印象を受けた。もちろん、普通にいても問題ないんだろけど、なんというか。この現実世界では、生きづらい人なんだろうなぁ・・・と思ってしまうような人もいて。村上さんのインタビュアーとしての姿勢が、とても真摯なのも印象的だった。
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「一人の老人が自らの死の仲で目覚める」
麻原のカリスマ性と堕落、
現代におけるオウム真理教団は、戦前の「満州国」の存在に似ている、
純粋で理想主義的な「大義」も含まれ、「自分たちは正しい道を進んでいるのだ」という確信を抱くこともできた。
林郁夫の手記・・・自分がこの世界にこうして生きている意味を、そしてほどなく死んで消えていく意味を、できることならこの手で確かめたいと思っているのだ。
「現実というのは、もともとが混乱や矛盾を含んで成立しているものであるのだし、混乱や矛盾を排除してしまえば、それはもはや現実ではないのです」「残念なことだが、現実性を欠いた言葉や論理は、現実性を含んだ言葉や論理よりも往々にして強い力を持つ」
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オウム真理教、信者側の証言。
被害者、目撃者達のインタビューをまとめた『アンダーグラウンド』の分厚さに比べ、こちらはだいぶ薄い(と言っても普通の単行本の厚さ)。母体数が違うからなぁ・・・。
もちろん実行犯たちへのインタビューではなく、在家の信者や食事係など事件とは直接の関わりのない人たちへのインタビュー。
このような形で「加害者」と呼ばれる人たちの証言はなかなか聞く機会がないので新鮮な思いで読んだ。
通して感じたのは、彼らが純粋な思いの持ち主だという事。それは良いとか悪いとか言うのではなく、単に私の感じ方。
世の仕組みが生き難いと感じている人々にとって、オウム真理教は屋根のある場所を提供していたのだなぁ。
それだけで教団の方針は良かったのに。
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所謂「大衆メディア的プロセスを辿らない情報」としての価値を感じる。
村上の文筆からは、時に深く突っ込み、問いを投げかけたとしても、相手に対し人間として興味をもつ徹底した姿勢を常に感じる。
「煩悩の消滅」と引換に、自己の行動原理を他者に預ける…という行為は、誰しも憧れるものだと思う。頑なに行動を徹底していれば充実感が得られ、ハコ一つ分の中で100%のレトリックを守っていられるのだもの。
「”悪”とは個人的なものなのか、システムなのか?」
「”善”が”悪”を駆逐する中で”悪”になっていくプロセスは?」
「”事実”を暴くより、一人ひとりの”真実”に向きあう意味は?」
そんなことを、読後に引き続き考えている。
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上春樹が、オウム真理教徒(元教徒や、現在もその精神を引き継ぎ信仰している人など)にインタビューしつづったルポ。
現実嫌い、ルポ嫌いの私でしたが、著者の小説が好きで手を出しました。これは、現実嫌いルポ嫌いの人のほうがより感情移入でき読み込めるルポだと思います。特に漠然と世の中に対する不信感、世間への不満を感じ「世は生きづらい」と思っている人に。
「世の中の、日常にかまけて人生を見つめようとしない人に自分はついていけない」
「そんな中でオウムは自分にとってのユートピアだった。そこでなら、人生について考えている仲間が出来た」このインタビューの中の多くの信徒たちの考えはこのようだと思います。
…初めてこうなったのは自分だったかもしれない、と思いました。マスコミに喜劇的・狂気的にえがかれた教団の実態がこうであったこと。
最後に著者と、ユング派心理学者 故河合隼雄氏の対談が載っています。両氏の対談も、非常に面白い。非常にニュートラルな視点で全く新しいオウム事件のみ方を示しています。
通常のルポと違い、一人ひとりの精神面、思想面を傾聴するというスタイルで書かれた、非常に深みのあるルポ。内容の濃い、一読の価値のある本です。
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再読。読んだのは6年くらい前なので、初読の気持ちで読んだ。
興味を持ったもの、あるいは危機感を感じたものについて、とことん調べて追求していく姿勢の芯の強さと、それを可能にする深い洞察力を村上春樹から感じた。怖いと思ったのは、オウム真理教に所属していたもしくはインタビュー現在所属している人々の考え方に、自分と一致している点が多くあるということ。現代社会が抱える矛盾と、善悪の基準に迫る本だが、村上春樹もまだ結論は出ていない様子。この人の書く本の中にそれを見つけていきたいと思った。