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商品説明
BIS規制はアメリカのアメリカによるアメリカのための規制だった。そしてこの規制を受け入れた日本の行き着いた先は…。日本の金融界を地獄へと導いた、自己資本比率規制の「実像」を鋭く暴く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
東谷 暁
- 略歴
- 〈東谷暁〉1953年山形県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。『ザ・ビッグマン』、『発言者』の編集長などを経て、現在、フリージャーナリスト。著書に「グローバル・スタンダードの罠」など。
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紙の本
日経ビジネス1999/4/19
2000/10/26 00:17
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投稿者:斎藤 貴男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨今の大不況はBIS規制のせいだ、とは時折聞かれる論調である。言うまでもなく国際決済銀行(BIS)が定めた「国際業務を行う銀行は自己資本比率が8%以上でなければならない」とする基準のことだ。
日本の銀行はこれを遵守しようとするあまり、収益率の低い融資案件には見向きもしなくなった。かくて公益性は完全に失われ、中小企業に対する“貸し渋り”が常態化してしまったというわけだ。
銀行経営が健全でなければならないのは当然だ。とはいえ、8%という数字に根拠があるのかといえば、ない。しょせんは一握りの人間が、人為的に決めた数字にすぎなかった。
にもかかわらず、この問題に関する議論はあまりに乏しい。昨年秋に成立した金融早期健全化法でも、BIS規制は天から授けられたものででもあるかのように受け入れられた。
何かおかしくはないか?
本書はそんな問題意識を出発点に、BIS規制の実像を徹底的に検証した。
世界経済の分水嶺は1985年だった。市場を神とするレーガノミックスはこの年で終わっていた、と著者は説く。いわゆる双子の赤字が深刻化していく中で、新任のベーカー米財務長官はそれまでの不介入主義を放棄。経済立て直しのためにアメリカの持てる政治力をフルに活用する道を選んだ。
5カ国蔵相会議でプラザ合意が演出され、8%規制を決定するバーゼル合意へと至る。ターゲットは日本。果たして経済大国になりかけていた日本は、一時的な花見酒を享受したものの、やがて現在のような惨状に陥った。
著者は強調する。すべてはアメリカの、アメリカによる、アメリカのための戦略だったのだ。そのような現実もわきまえず、経済は経済だけだと、一切の政治的要素抜きで語られる現状は愚かしい。経済ほど政治が跳梁する舞台はほかにないのに、我々は世界経済がそれ自体で自立的に動いているのだと信じ込み、無謀にも丸裸で闘技場に出ていこうとしている──と。
国際的な政治・経済を動かす酷薄な原理に、改めて戦慄した。と同時に、バブルに狂奔していたころの銀行員たちの振る舞いを思い出さないわけにはいかない。彼らがもう少し真っ当であったなら、銀行経営を圧迫するBIS規制に対する社会の認識は、また違ったものになっていたはずだ。
文献取材の出典がその都度明示されていない点は残念な気がする。読みやすさを考慮したとのことだが、明示すればはるかに説得力が増したと思う。
頼むから、これ以上叩かせないでほしい。銀行の経営者たちに、改めてそう伝えたくなった。
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