紙の本
人はこんなにも繊細で感じやすいと豊富な実例をあげ、説明してくれる。人を生かすも殺すも、その人の接している人びと次第だ。
2001/12/28 00:06
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すみえ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人として他者と関わって生きている人、総てにお勧めする。近頃の日本人は、他者の気持ちを汲むことを忘れ勝ちだと思う。自分の威圧的態度が、まわりの人にどんな影響を及ぼすのか。人びとがこの事をしっかりと認識し、意識して行動すれば、解決出来る問題は無数にあると思う。作者の人柄の暖かさが、随所に滲み出ている、上質で誠実な本だ。
投稿元:
レビューを見る
好きなことをやって生きる!とか、一昔前流行ったワクワク。
最近言われている言葉で言うとすれば、【フロー体験】。これらのベースにある重要な概念、内発的動機付けや、自律ということを深く掘り下げている。安易に成功者と負け組などに二分する考え方にどうも疑問を感じる!そんなあなたにおすすめです。
投稿元:
レビューを見る
05-05-12
この本の主たる執筆者は、内発的動機づけ*1の研究の第一人者であるアメリカのデシ(Deci, E.L.)です。デシは、「外的報酬は、内発的動機を低下させる」*2という事実を明らかにした心理学者です。
内発的動機づけは自律的でありたい(自己決定したい)、有能でありたい、周囲の人と暖かい人間関係をもちたい、といった気持ちに支えられています。
自律的(自己と一致した行動をする)であることと対立した概念は統制されることで、圧力をかけられての行動がこれにあたります。
デシは統制された行動は良くないといいます。それでは、学校はどうなるのでしょうか。様々な目標があり、いろいろな制限があります。目標を達成させ、規則を守らせるには、子どもを様々な手段で統制する必要があるのではないでしょうか。デシは、次のように考えています。
制限を決めることは、子どもの責任感を育てる上でも非常に重要である。問題はそのやり方なのである。子どもの視点で考え、子どもの立場に立って、プレッシャーを与えるのではなく、子どもの自発性やチャレンジしようという気持ち、責任をもとうとする姿勢を積極的に励まし、子どもの自律性を支えることが重要なのである。
統制しないで励ますというスタンスは一見容易なことに思えるが、実は難しく、より多くの努力や技術が要求される。
子どもの自律性を支える具体的な方法は、次のようなことになるでしょう。
?目標を決める過程に子どもをかかわらせる。
?目標を達成できなかったことを、子どもの行動とすぐに結びつけずに、それを解決すべき問題とする。
?学習の中で、子どもが学習にかかわった選択を行う場面をつくる。
?指示をするときに、脅かしたり、強要したりなど圧力をかけない。
?比較してほめたり、評価をしない。
外的な報酬を与えない。
?競争させない。
この本は、心理学実験の話や日常での出来事を織りまぜて書かれおり、比較的読みやすいものになっています。普通の本ですが、後ろに索引があり、一度読んだ後も、活用しやすくなっています。子どもの自律的な学習意欲を高めたい方には、おすすめです。
*1:自ら学ぶ・やる意欲。外から圧力をかけられることなく、自らの偽りのない気持ちにもとづいて学んだり仕事をしようとする意欲。
*2:外的報酬が自律性を阻害する。例えば、いったん報酬を使いだしたら後戻りできないとか、報酬を得るために手っ取り早い最短のやり方を選んだりする。
投稿元:
レビューを見る
自律性の大切さが分かる。
内発的動機づけには、相手の立場・状況を理解すること、相手の有能さを認めること、相手に選択を与えることといった自律性の支援的態度が大きな役割を果たす。
強制の受け入れも、反発もどちらも自律とは反対の強制力への統制反応であり、真の自由意志に基づく自己表現ではないということは納得であった。
自律的支援の環境が重要ではあるものの、どんな環境でも自律的みる個人的資質も影響を及ぼす点は、自身の世界観にも生かしたいと思った。
08-49
投稿元:
レビューを見る
著者のデシは,内発的動機づけの権威として有名な心理学者である。この本は,彼が明らかにしてきた人間の動機についての研究内容を豊富な事例の紹介とともに一般にわかりやすく解説したものだ。罰や報酬などによる外発的動機づけは,興味や関心によって内側から生まれてくるやる気,つまり内発的動機づけを低下させるだけでなく,創造性や概念理解,柔軟性を必要とするような課題の成果に妨害的な効果を与えることは,僕も大学時代に習った覚えがある。しかし話はそう単純ではない。例えば,自分が常に勝者でなければならないと考えて,ハードなトレーニングを自分に課しているアスリートは自律的であるといえるだろうか。校則に反発し,わざとだらしない服装で登校する生徒は自律的であるといえるだろうか。どちらも一見自らの意思で行動を選択しているように見える。しかし実際には,社会が要求する一定の価値観を自らの中に取り入れ,それに沿った,あるいはそれに反抗した特定の結果が自分の価値を決定するような行動原理に従っている。デシはこれを自我関与と呼んでいる。迫り来る未来に不安を感じ,ちょっとした出来事を脅威と受け止め,激昂したり抑うつに落ち込んでしまう人(かつての僕のケース)が増えているのは,学校教育を含む現代の社会のあり方が,人々の自我関与を発達させる方向に働いているからだと見ることもできる。真の自分の意志に基づいて行動するにはどうすればよいのか,その力をつける教育はいかにして実現できるのか,そのヒントを与えてくれる本である。(菅)
投稿元:
レビューを見る
この本は偶然、自分自身をどう自律的に生活を送っていけばいいかを考えていた際に出会った一冊です。
正直、もっと早く出会っていたかった本です。ただ、今出会えただけでも良かったと思います。
人を育成する立場にあるどんな方にとってもお薦めしたい一冊です。今まで行ってきた育成方法がいかに育成される側の意欲やモチベーションを低下させていたかがわかります。
小学校低学年のときは、誰もが先生の質問に手をあげ、われ先と応えようとしているのに、年齢を重ねることに自発性がなくなっていく、この社会に対して、希望のある解決策の一助になると思います。
投稿元:
レビューを見る
内発的動機付けの中心的な考えかたがよくわかりました。著者のデシはモチベーションや人的資源管理の本を読むと必ず出てくる人です
投稿元:
レビューを見る
第1章
正しい問いは「他者をどのように動機づけるか」ではない。「どのようにすれば他者が自らを動機づける条件を生み出せるか」が問われなければならない。
第2章
内発的動機づけ - まるでその活動をすること自体が、その活動の目的であるかのような行為の過程、つまり、活動それ自体に内在する報酬のために行う過程を意味する。
金銭によって動機づけられるということのほんとうの意味は、金銭が人を統制するということなのである。そしてそのとき、人は疎外されるのである。つまり、真の自己を放棄するのである。疎外は、人が内発的動機付けとの関係を絶ち、興奮や活力との関係を絶ち、活動に取り組むことそれ自体を目的とした行為との関係を絶ち、存在の本質的状態(普通に存在しているとき以上の状態)との関係を絶つときに始まるのである。
第3章
ヘンリ・マレーは、人の身体に生理的欲求があるのと同じように、心にも心理的欲求があると述べた。人は自らの行動を外的な要因によって強制されるのではなく自分自身で選んだと感じる必要があるし、行動を始める原因が外部にあるのではなく、自分の内部にあると思う必要がある、ということである。
自律性の感覚が低まると - 統制されているという感覚に陥ると - 内発的動機付けが低まり、他のマイナスの結果が大変生じやすくなる。マイナスの効果を生じさせる出来事としては、金銭的報酬、脅し、締め切りの設定、目標の押しつけ、監視、評価など、人に圧力をかけ、人を統制するために、しばしば使われる手法。
投稿元:
レビューを見る
紹介されて読んだ本。紹介してくれた人に感謝したい。これは、本当に読んでよかった。
とは言っても、わかりやすい本というわけではない。心理学の本で、作者はずいぶんかみ砕いてくれているのだと思うけれど、ぼけっと読んでいるとなかなか頭に入ってこない。研究書なのだ。
うんと簡単に言うと、なんでやる気のない人っているんだろうってことだ。知的好奇心とか意欲とか、そういう大事なものをどっかに置き忘れてしまうようなことがどうして起きるんだろうという話。それを、長い長い時間をかけて実証的に検証した記録である。説得力がある。
たとえば、「外的報酬は内発的な動機付けを阻害する」、つまり「ちゃっとできたらご褒美をあげるよ」というのは、かえってやる気をそぐってことだ。意外な気がするけど、確かにそうかもしれない。
人間には、「自律性への欲求」「有能さへの欲求」「関係性への欲求」があって、そういうものがやる気を支えているという。その中でも特に「自律性」、つまり他人から押しつけられたのではなく、自分の意志で行動しているのだという思いが、人の意欲に大きく影響しているというのだ。
いろんな側面で人を抑圧する環境の中では、人はやる気をもって生きることが難しい。教育だって、(やり方よっては)もうどうしようもないくらい抑圧してしまうわけで、どんどんどんどん、元々持っていた意欲のようなものを奪い去ってしまっている面が確かにあるかもしれないと思う。
今までいろんな場で感じていたことを、きちんと整理して提示してくれたような気がした。それとは別に、目からウロコが落ちるような気持ちになった部分もたくさんあった。
紹介してくれた人が言っていたように、特に教育関係の仕事に携わる人にとっては、必読書のひとつなのではないかと思う。
投稿元:
レビューを見る
素晴らしい一冊。
部下や生徒、子どもなどの支援の対象者をどのように動機づけたらいいのか。このような問いのたて方では、この重要な問いに答えることはできない。正しい問いは「どのようにすれば他者が自らを動機づける条件を生み出せるか」と問わなければならない。
内発的動機づけとは、その活動自体の楽しさ、魅力によって好奇心、集中力、意欲がかきたてられる状態を指す。
デシは内発的動機づけのための3つの条件として、自律性、有能感、関係性(社会、他者との絆)の3つをあげている。金銭的な報酬は、その与え方によっては自律性の感覚をそこなう危険性がある。ただし、意欲やその活動自体の楽しさに対し悪影響を及ぼしかねないものとして、本書は単に金銭的な報酬のことだけを言っているのではない。
金銭的な報酬のみでなく、「外的な報酬」をさらに拡大し、圧力、統制、賞賛、競争心、名誉などの危険性についても述べている。それらは自律性だけでなく、有能感もそこなう危険がある。それらにより人の内面にはこだわりが形成され、服従、反抗、内的圧力等を引き起こす。競争や賞賛によって強化された「随伴的な自尊感情」は、人間として健全な「真の自尊感情」とは異なる。「随伴的な自尊感情」は大きな代償を伴うという。
また、社会規範等を含む価値観の内在化の二つの形態として「取り入れ」と「統合」をあげている。真に統合されたのではなく、「取り入れ」によってよく噛まずに飲み込まれたような場合には、その「取り入れ」られた価値観が内的圧力となり、自我関与を引き起こして「完全に機能する人間」「偽りのない真の自分」であることを妨げるという。
内発的な動機づけをつきつめていくと、「完全に機能する人間」「機械ではなく能動的な生命体である人間」にたどりつく。「人が真にあるがままにいきることができ自分の可能性を開花させることができるようになれば人は偽りのない自分を生きることができる」
真の自分自身、偽りのない自分自身であろうと求め尽くすこと、自分の可能性を完全に開花させること、それを内的圧力によってでなく、自分の内面をみつめ対話することで追求すること、幸福を求めるだけでなく様々な人間の感情を体験することが生きていることの本来の意味であるという見方。それらは仏教や禅の思想にも通じるものだと感じた。
本書には、「上の地位にいる人が自分自身の自律性を支援されなければ、彼らの生徒や子どもや部下の自律性を効果的に支援できない」とある。わたしの仕事は、支援すること、ファシリテートすることである。その私自身は本当に自律的であるか?内発的に動機づけられているか?生命体として、人間として完全に機能しているか? そういう問いをもって読み始めた本だったが、まさに私の問いに対しての示唆やヒントが満載されていた。特に「取り入れ」、「自我関与」、「随伴的自尊感情」に関するところでは、読みながら何度もどきっとした。
この本から派生して次に読みたい本として注文したのは「カールロジャーズ入門ー自分が自分になるということ」(諸富祥彦 コスモスライブラリー)
<トリガーワード>
プレッシャー ストレス 統制 自律的
反抗と服従は統制にたいする補償的反応
偽りのない自分 内的プレッシャー 上下の関係
正しい問いはどのように動機づけるかではなく、「どのようにすれば他者が自らを動機づける条件を生み出せるか」
有能感 報酬 ソマパズル
自分自身の行為の源泉 自己原因性 選択の機会
報酬を与える人の態度 プレッシャーと統制 競争
他者の自律性を支える
活力 フロー 外的な統制との対極
行動と結果を結びつける仕組み 有効な随伴性
有能感 最適な挑戦 肯定的なフィードバック
生命的な統合 絆
心理的に自由な完全に機能する人間
取り入れと統合
自律性への支援と自由放任
自我関与 自尊感情 外発的意欲
外発的価値の統合 自律性の支援
許容範囲 報酬と表彰
人間の自由とは真に自律的であることを意味する
真の自由とは環境をかえることに前向きであることと環境に敬意を表すことのあいだにバランスを見いだすこと
人間の自由の中心にあるものは選択するという経験である。
<活性化質問>
1)目標をもって達成にむけて努力することと内発的動機づけはどのように共存できるのか?
2)私の中で自我関与が内発的動機づけを妨げていないか?
3)完全に機能する人間、心理的に自由な人間になるためにはどうしたらいいか?
4)内発的自己を探求するためにどうしたらいいか?
投稿元:
レビューを見る
最近読んだ100冊の中でトップレベルの良書。上司、親、そして先生と呼ばれる全ての職業の人に読んでほしい。
投稿元:
レビューを見る
大学生のときに読んだ名著。人間の動機を内発的動機と外発的動機に分類し説明する。内発的動機で何かを頑張るのは本当に楽しい。
投稿元:
レビューを見る
20111030
第1章 権威と不服従
第1部 自律性と有能感がなぜ大切なのか
第2章 お金だけが目的さー報酬と疎外についての初期の実験
第3章 自律を求めて
第4章 内発的動機付けと外発的動機付けーそれぞれがもてらすもの
第5章 有能感をもって世界と関わる
第2部 人との絆がもつ役割
第6章 発達の内なる力
第7章 社会の一員になるとき
第8章 社会の中の自己
第9章 病める社会の中で
第3部 どうしたらうまくいくのか
第10章 いかに自律を促進するか
・何をどのようにするかを決めることについて
・どこまで自律的に行動させるか
・目標の設定と成果の評価
・報酬と承認を与えること
・障害を認めること
第11章 健康な行動を促進する
・行動を変える理由
・医師の処方箋に従わないことについて
・患者の自律性を支援することについて
・生物心理社会的アプローチ
・責任と自律性の支援
・自律性が支援できるように医者をトレーニングする
第12章 統制されても自律的に生きる
・特別な支援を見つける
・個人と社会
・動機付けの個人差
・自分をより成長させること
・自分の経験をマネージすること
・自分の感情を調整すること
・自分の行動を調整すること
・テクニックの使用
・自分を受け入れること
第4部 この本で言いたかったこと
第13章 自由の意味
投稿元:
レビューを見る
オススメです。
自律性は、いろいろ特長があげられていますが、一言で言えば、選択する自由を自覚をもって行使すること。自律性を支援するとは、相手を尊重することだと思いました。
手元に置いておきたい本。
ちなみに、自律性の考え方は、かなりモンテッソーリで有名な相良敦子さんの考えるそれと近いと思います。
投稿元:
レビューを見る
是非、上司に読んでもらいその後の行動を観察してみたいと感じた。また、自分自身もこの本を読んで、これから家庭・仕事とどのように変わっていくかを自身で振り返ってみようと思う。