紙の本
組織変革のロジックを実務レベルで身に付ける
2001/11/21 16:15
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投稿者:平野雅史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、企業組織を如何に設計するかについて、企業戦略的な観点から、また、実務家の使いやすさを重視し記された書である。
企業組織関係の書は、その著者と内容の傾向の観点から、大きく3つに類別できるように思われる。一つは、大学研究者が記したもので、確かに理論的な背景はしっかりしているが企業の企画担当者が使うにはあまりにも現実離れした感がある。一つには、コンサルティングファームが記した手法ものであるが、手法はあくまで手段に過ぎず組織設計・変革の目的と合致しない限り利用価値は乏しい。また、一つはケースものであるが、経営者のリーダーシップに焦点があてがわれ、知識体系の整理が煩雑な感があった。以上のように、組織設計やHRM関係の書は、企業の企画担当者が知見を得るには帯に短し襷に長しの感が否めないものが多い。
この点で、本書は、組織設計の考え方、フレームワークといった、著者が長年に亘るコンサルティング実務のなかで培ったエッセンスが盛り込まれており、実務家には非常に利用価値が高い内容となっている。本書に貫徹するこのエッセンスは、大きく二つの要素に分けられるであろう。
・企業組織は企業戦略を実現するために設計される。
・企業組織は論理的に各要素・手法間が整合的でなければならない。
企業はその戦略を実現するために組織を設計する。戦略は持続的に競争優位を確立するためのものであるから、組織はこの目的に照らして合目的的に設計される必要がある。本書ではこの主張が首尾一貫しており、方法論に惑わされて細部に囚われることなく、合目的的な組織設計のあり方を学ぶことができる。
また、ロジカルに思考して組織を設計する必要があることは実務家が皆意識することであるが、ことが人を扱うものだけに、実際には容易ではない。この点で本書は、ロジカルに思考していくための着眼点『フレームワーク』を提供しているし、それぞれ行う施策の定義や目的を明確にして論じており、知識体系がしっかりしている。
本書の内容は決して新しいものではないが、それだけに長年耐えられるであろう普遍性と汎用性ある知見を提供する書である。組織変革には明に暗に抵抗が付きまとう。これに対抗して、戦略を有効に実行し得る組織を構築するには、論理に裏打ちされた設計は必須であり、この点で本書の存在は力強い。
紙の本
1999/12/1
2000/10/26 00:20
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投稿者:日経情報ストラテジー - この投稿者のレビュー一覧を見る
サプライチェーン・マネジメント(SCM)やエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)など、経営革新を支える新しい経営手法への関心は高まる一方だ。これらの実践に情報技術の活用が不可欠なことは言うまでもないが、もう1つ忘れてならないのが「人」の問題である。
いくら最新の情報システムがあっても、それを使いこなす人間系の議論が欠けていては、狙い通りの効果が上げられない。ライバルに負けないスピードとコア・コンピタンス(中核となる事業)が企業に求められる時代では、むしろ人や組織のあり方を根本から見直すことが重みを増している。
こうした経営環境のなか、情報化時代の組織論を正面から取り上げたのが本書である。カンパニー制、ネットワーク型組織、実力主義の評価制度など、日本企業が取り入れ始めた新しい手法を具体的に解説しているほか、各手法がなぜ脚光を浴びているのか、実際に導入するにはどういう手順を踏むべきかといった、総合的な視点で記述している点が特徴だ。
全体は大きく3章で構成する。「組織とは」と題する1章で組織論の基本を定義し、続く2章の「組織設計のプロセス」で、うまく機能する組織の設計と、それを定着させるノウハウを解説。最後の3章「現代の戦略的組織制度」で、実例に基づいた最新動向を詳述している。
組織論を解説した本は、理想論や机上論に終始して「勉強にはなるが現実味に乏しい」という読後感をもたらすものが少なくない。その点、本書は各社の事例を重視しているだけに説得力がある。ソニーやマツダ、リクルート、HOYA、ベネッセコーポレーションなど著名企業の先進事例をふんだんに扱っており興味深く読める。
終身雇用をはじめとする伝統的な日本企業のスタイルが変わりつつあるなかで、社員はどのようなキャリアパスを描くべきか。そのヒントを得るうえでも、役立つに違いない。川上
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波頭さんの本は面白い。10年以上前の本だが内容は決して古くない。
最近、組織改革に携わっていた関係で読んでみました。
M&Aも含めて組織を変えるというのは大きなエネルギーが必要です。
本書は組織とは?から始まり、それを設計するために留意すべき事項がわかりやすく書かれています。
組織改革をしようと思うんだけど、どこから手をつけるのかわからないという人にとってはよい材料になるのではないでしょうか。
読む度に見え方も変わってくるのではないでしょうか。
多くの抵抗を受けるのは必至です。
そんな中、それを押し進めるためには、本当に組織改革によってこの会社はよくなるんだという思いを一人一人に伝えて協力してもらうしかありません。
案を描いただけでは組織は変わらない。
組織について考えて思うのは、競争力をつけるために考える戦略を考える際には必ず組織の問題が出てくるということだ。(同時に人事関係も)
多くのコンサルファームでは戦略や人事、オペレーションなどサービスに応じてチームを切ることが多いが、そんなきれいに切れるわけではないと思う。
実際には継ぎ目なくこれらの問題は降りかかってくる。常にどこに対応できるように垣根なく勉強し続けることが必要だと思いました。
人事関連でいうと正社員を切ることが本当に難しいのだと感じる。
様々なものの流動性が増している中で人だけは手をつけずにきている。
これが競争力を低下させる要因になっても尚、日本は人材の流動性に手をつけないのだろうか。流動的にさせないことで首がしまっている部分もあると思うのだが…
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組織設計の原理原則が体系的に書かれている良書です。後半には企業事例も掲載されており理解が深まります。組織は事業環境で変化すべきだと思いますが、原理原則は不変だと思います。
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ロジカルシンキングの本
論理的思考とは何かを明確にして、その重要性が解説されている。
その上で、思考方法(帰納・演繹) についての解説。
分析についても言及されている。
分析の定義やそれを行うプロセスも丁寧に解説。
それを行う上で注意すべき心理的なバイアスも解説。
終始ロジカルだけど、最後の最後で結局のところ
論理的な分析は”執念”が一番大切と言い切るとこが好き。
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大分前に書かれている本だけど、組織設計に関する基本的な知識を得ることが出来た。
内容が濃く、情報量も多いので全てが頭の中に入っているとは到底言えない。
また読み直さないといけない本のひとつ。
しかし、並行して常に2〜3冊を読んでいるとはいえ、最近読了にかなり時間がかかる。
特にこの本は3週間ぐらいずっと読んでた。
時間かかりすぎ。。。。
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再読。「ポスト終身雇用」とリンクする部分もあり、続けて読んだのは正解だった。
当社のボードは戦略とセットで組織設計に取り組んでいるのか。問題意識がわいた。組織を扱うコンサルタントの成果はどう図るのか。変革して終わりか。そんな問題意識もわいた。
テキストとして素晴らしいが、上場企業規模で記載通りに進められることは可能だろうか。難しいことだからこそ、トップがコミットメントしなくてはならず、責任とセットで取り組まなくてはならないのだろう。ゴーンさんの様に。
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組織設計実務の基本書として名高いとのこと。確かに理論と実践のバランスがきわめて良い。特に、第2章の組織設計のプロセスは秀逸で、これに基づいて進めればとりあえず大外しはしないんじゃないか。コンサルの人たちがネタ本にするのもよくわかる。
「ぼくのかんがえたさいきょうのそしきせっけい」ではなく、基礎的なところからしっかりと体系立てて組織設計をしたいならまずこれから始めるのがいいでしょう。
難を言えば、参考文献や引用の表示がないことか。どこまでが過去の蓄積を基にしていて、どこからが著者のオリジナルな意見なのか、参考文献や引用が示されていないとわからない。そうなると、情報の確からしさを判断するのが難しい。参考文献を明示する本や文献に慣れてしまうと、参考文献がないのはとても不安になる。無いなら無いで困ることもないんだろうけど。
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組織を設計する、組織を改革するということは、
現行の組織制度を多面的に検討し、事業戦略の実現を果たすために、社員の行動様式に変化をもたらすような、組織と運営体制を策定することです。
■組織設計の6つのステップ
①プロジェクトの編成
・プロジェクトを発足しなければ、既存組織の既得権のバイアスが何らかの形で掛かってしまうリスクまた、プロジェクトの責任者はトップであるべき
・外部のコンサルタントを利用する方が有効。社員だけだと従来のやり方に馴染んだものになってしまう為、課題の客観視ができない
▽ポイント
a.プロジェクトチームのミッションと権限の明確な規定
b.経営トップのコミットメント
c.外部コンサルタントの活用
d.各部署の支援メンバーの組織化
e.守秘活動の徹底
②組織課題の整理
組織制度の問題点を抽出し、組織課題を発見するための切り口
・必要十分な組織機能が備えているか
・ミッションを果たすための運営要件が付与されているか
また、組織風土についても特徴を明らかにすることが組織課題の把握に有用である場合も多い
③基本理念の設定
課題や組織要件を踏まえて、それらを包括的に解決しうるような新組織の基本理念を決定すう
④3Sへの展開
組織骨格、制度・ルール、人財配置の3つの基本的な方針を案出し、詳細な具体化設計を行っていく
⑤移行準備
新組織への移行プランを策定していく
-新組織制度について社員の理解を図ること
-損組織制度にシフトすることに対する前向きなムードの醸成
⑥定着化
一時的な混乱や生産性の低下が生じるものである。
こうしたトラブルが発生する都度、対症療法的に変革施策を1つ1つ是正していては、新組織の理念や狙いを妨げることに繋がりかねない。
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やや古い本ではあるのだが、一線で活躍する著名コンサルタントである波頭氏が書かれた組織論の本。専門的になりすぎず、簡易すぎず私には丁度いいレベルでした。
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個人と組織、人間とシステム、は自分の中での研究テーマかもしれない、と感じた後で読んだ、組織の基礎本。
#実践しきれてないけど組織を知るための良本ですシリーズ①
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波頭亮氏の文章は本質的でロジカルなので自分にとても合う。改めて組織とは何かを考えるきっかけがあって本を手に取ったが正解だった。組織の定義「組織とは、複数の組織成員の有機的共働によって、より効率的に共通の組織目標を達成することを通じて、各組織成員の得る個別効用を極大化させるための集団」は非常に秀逸な表現だと思う。組織や組織デザインを考える際には何度も読み返したい。
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人事制度を考える時に、概念として組織とは何かなどを考える時にお手元にあると良い。正直出版された時期が古めなので、最新の潮流は押さえ切れていない部分があるのは仕方ないが、概念を理解する上では使いやすい。
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「戦略策定概論」の続編。これも、初版は1999年とかなり古いが、今でも組織設計を上手くできてない会社が多いことからも、重要なテーマは昔と何ら変わってないし、この時点で、これだけの形式知としてまとめあげてることに驚かされる。そして、読んでいれば分かるが、実務上での勘所が散りばめられている。本のサブタイトルに、“理論と実際” とあるだけあって、その“実際”こそが実行していく上では重要だったりする。例えば、組織改革プロジェクトの期間の長さは、課題抽出だけが目的ではなく、“メンタル面での地ならし” (声を拾っている姿勢をアピール)のためとしており、まさに正しさだけでなく、感情的な人間を考慮することを説いている。
個人的に重要なポイントを抽出すると、
・得意に注力し、個人活動以上の成果を得るのが組織
・どれくらい固定化するのか ≒ “組織を設計する”
・組織設計は、構造、制度、人材配置をデザインする
⚫︎組織改革の目的は、行動パターンを変革すること
⚫︎象徴的な抜擢と更迭を行う
⚫︎足して2で割るような改革は効果がない
・取捨選択をし、一時的な効率ダウンを覚悟し、断行。
・5〜7年で意図的に組織を変え、活性化させていく
・変革の狙いを明確にし、トップとプロジェクトを発足。
→課題整理→理念設定→3S展開→移行準備→定着化
(ムード情勢、モニタリングは丁寧に。断行の意志!)
【課題整理の切り口】
・まず5機能診断「企画、意思決定、調整、実行、評価」
・機能不全は「責任、権限、資源、報酬」が適切か?
・風土「事業姿勢、資源配分、評価特徴、社員意識、外部からのイメージ、意思決定パターン」も考慮が必要
・ヒヤリング、任意の全社員アンケートを実施
例えば、マネジメントサイズも具体的な数字が示してあり、分かりやすいし、現実的にそのくらいだよねと共感できる。
以下は読み返し用↓
・市場の変化に、いかにスピーディーに対応する組織体制を構築するかということが、戦略を立案することと同等以上に重要な経営テーマとなってきている。
・より効率的に共通の組織目標を達成することを通じて、各組織成員の得る個別効用を極大化させる
・組織の各成員が求める具体的効用には差異がある
・組織は、個別活動以上の活動成果を実現するものでなければならないと言うことである。
・組織目標とは、バラバラの動機を持つ組織成員の誰もが共通に受容できるものであり、かつ個人の目指す効用の実現につながるものでなければならない。
・共有化された組織目標ベースとして、個人に期待する成果を明らかにする。そして、個人がその成果を達成することを通して、それぞれの求める効用を得ると言う構図を作り上げる。これができて、初めて組織として機能する手段になるのである
・個別活動以上の成果を達成し、個人が得る経済的、精神的報酬が個人が1人で行うよりも大きくなること、これが個人が組織に帰属する必然性である
・組織が、合理的な分業や、共同によるシナジーを生むものでなければならない
・柔軟な組織と言う概念こそが、構造的矛盾をはらんでいるという重大なポイントを理解する
・柔軟な組織を求めるということは、これまでの固定的な組織で得られていた効率的な業務遂行という大きなメリットを失ってしまうことになる。
・どれくらい固定化するのかを規定するということが、すなわち組織を設計するということなのである
・組織は、組織骨格、制度、人材配置と言う3つの領域から構成される。
・組織を設計するとは、実行しようとする戦略に整合した、ストラクチャー、システム、スタッフィングと言う3つのエスについてデザインすることに他ならない。
・情報、金、人は、企業の主要な刑事源であり、これらの経験を組織の中でどう扱いどうかスカッと言う規定と仕組みが2つ目のエス、システムなのである
・システムを社員にどのように思考し、判断し、活動することを求めているのか、と言う社員の行動への要請を具体的に表した法体系とも捉えられる。
・人材のミスマッチが起こっていたり、単なる員数管理的なやり方で人材配置を行っていたら、それだけで企業競争力が低下する。適材適所の実現が、組織の上の重要な課題なのである
・壁に張り紙をしたり、前者にアナウンスしたところで、そのような風土はなかなか実現しない。組織編成や評価制度、意思決定制度を整えるなどの制度上の工夫の方が有効であることが多い。
・システムの中でも、評価、報酬のシステムの組み方が特に重要になってくる。
・組織には、一般論として、最適なマネジメントサイズというものがある。上司が部下の個人個人の状況に対して、十分に目配りの利く人数は10人程度、またそこまできめ細かくとはいかないが、必要十分な直接的なマネジメントができる範囲は大体30人程度までである。
・群の組織を見てみると、分隊で3人、小隊で10人、中隊となると30人、そして大隊が100人という体制を組んでいる
・業務の種類の違いや特徴を考慮すると言う観点に加えて、どのように業務を切り分けるのが合理的かと言う観点も、組織をデザインする上で大切である
・同じ製造メーカーであっても、業務の特性によって、効率的、合理的な組織のデザインは異なるのである。
・組織を改革すると言う事は、単に組織図を書き換えたり、業績評価制度を改定したりすることではなく、組織成員のものの考え方や行動パターンを変革すると言うことを明記していただきたい。
・何を捨て、何を取るかを明確に意識し、デメリットを振り切る位の覚悟がないと、組織改革はなかなかうまくいかない。
・既得権を失う人が、必然的に少なからず出てくるのである。
・変革の導入に伴う、一時的な組織能力や業務効率のダウンをある程度受容しない限りは、新しい組織としての本来の狙いを実現するには至らない。
・意図的に組織を変えていかないと、組織はすぐに保守化、硬直化、肥大化するものであるため、1つの組織体制を長期的に持続する事には、限界が生じてしまう。
・どのような戦略を実現するための組織改革なのか、どのような組織成員の行動様式を実現させるのか、どのような効果を求めるのかといった変革の狙いを明確に認識することが大前提として必要である。
・企業において、組織設計、組織改革を行う場合には、必ずプロジェクトを発足させて行うことが必要である。
・既存の各部署から独立した専任プロジェクトチームが担当しなければ、既存組織の既得権のバイアスが何らかの形でかかってしまうリスクが大きいためである。また同様の理由で、このプロジェクトの責任者はトップであることが望ましい。また、経営コンサルタントなどの外部の目を活用するのに、プロジェクトの形をとることが有効なためである。
・現行の組織制度上の問題点を抽出し、組織課題を発見するのに有効ないくつかの切り口から洗い出し、整理する。
・課題の解決策の積み上げを行うのではなく、抽出された課題や要件を包括し、新組織のあり方を示す基本理念を打ち立てることが、組織設計プロセスの重要な勘所なのである。
・まず、組織の基本理念を踏まえて、ストラクチャー、システム、スタッフィングと言う3つのエスの基本的な方針を案出する。望ましい風土についてもここで明示しておく。
・特に重要になるのが、新組織制度についての社員の理解を図ること、新組織制度にシフトする事に対する前向きなムードの醸成である。
・移行後3ヶ月とか6カ月位の期間を経て、全社的な定着状況や不都合のチェックを行い、導入後ほぼ1年をめどに必要な修正を行う。その際、業務効率を過大に優先したり、かつてのやり方に大きく揺り戻したりすることがないよう、新組織の理念と狙いを充分浸透させる意識が重要である。
・各部門、各階層の声に対して、耳を傾け、入念に声を拾っている姿勢をアピールすることが重要で、十分な期間を要するのである。
・新組織制度を導入し、組織成員の行動様式を変革していくためには、組織を変えることに対する社員の受容性が極めて重要である。
・プロジェクトを編成する際のポイントは、
「ミッションと権限について、明確に規定」
「トップのコミットメントが不可欠」
「外部コンサルタントの活用」
「各部署の支援メンバーを組織」
「守秘活動」
・組織診断でまず行うのは5機能のチェックで、「企画、意思決定、調整、実行、評価」の5つである。
(全社、個別ユニットそれぞれで)
・組織の4つの運営要件とは、責任、権限、資源、報酬である。
・十分に果たしていない遂行事項に対して、その背景にどのような阻害要因があるのかを4つの運営要件ごとにチェックし、明らかにしていこうとするものである。
・責任体制を診断する観点は2つある。ミッションが明示されているか、そして、責任者は明らかかの2点である。
・権限としてまず挙げられるのは、担当業務に関わる決定権である。例えば、目標とする売り上げを達成するために、売値を決めたり、売先を選定したり、一緒に組む相手を決めたりすることに対する権限がないとスムーズな営業活動は行えない。人に関わる権限とお金に関わる権限についても見ておくべき事項である。これら2つは業��遂行のために不可欠な要素である。人に関わる権限としては、具体的には人の採用やアサインメント、さらに評価や処遇の決定権などが挙げられる。お金に関する権限については、お金の使い道の自由度の権限が中心となる。
・経営資源である、人、金、情報の3つの観点で整理。ミッションを達成するために必要なスキルを持った人材が配属されているか、必要なだけの人員数が配属されているか。資金力は充分か、その使用ルールは適切かなどをチェックする。情報には外部情報と内部情報の2つのタイプがあり、問題となりやすいのは社内の情報である。事業運営に必要な情報コンテンツが充分か、また情報のストックやアクセスの方法は整っているかなどをチェックする。ミッション達成のために必要な経営資源が与えられるているかというチェックだけでなく、過重な経営資源を付与しているために、資源の無駄遣いになっていたり、資源効率の悪化が起こっていないかの観点からのチェックも忘れてはならない。
・どのような成果をあげたら、どう評価され、どういう報酬が与えられるのかが明確にされており、かつ納得感があること、これが組織の構成要員である人が動機づけられる1番の仕掛けである。
・留意しておかなければならないのは、組織ユニットに付与される報酬、あるいは評価ルールは、当然のことながら、主対象は組織ユニットであって、個別の人ではない。ただし、組織ユニット内の組織構成員のモチベーションこそが、その組織ユニットの動機と活力を形成するわけであるから、報酬のチェックの事項としては、個人に与えられる報酬内容にまで言及せざるを得ないのも事実である。
・風土の観点からも、多角的に企業を診断することにより、その企業の個性を形作っている特徴を確認して、その中で企業戦略の達成の障害となっている、あるいは今後障害となり得る要素を課題として把握しておく。
・組織や制度の現状把握し、課題を抽出するためにはヒアリングを行うのが妥当である。
・自由提出と言う形態で、全社員を対象とするアンケートを行うのも有効な手法である。
・ヒアリングの機会に参加することにより、ガス抜きを行い、合わせて新組織体制の必要性を啓蒙したり、場合によってはヒアリングでのやりとりを通して、組織制度のあるべき姿を示唆するための場として活用することまでもできるのである。
・組織の基本理念は、ある程度抽象度が高く、しかもストレートでシンプルなワーディングによって、新しい組織がどのような体制を持つことになるのかを十分にイメージさせるものであることが望ましい。言葉の裏にはあえて犠牲にしなければならないと言うメッセージを含まれていることである。新しい組織では、何にプライオリティーを置くのかと言う最重要テーマを高い次元で設定するのが組織理念である。この基本理念にのっとり、ストラクチャー、システム、スタッフィングを設計していく。いくつかの代替案に迷ったときに、その中から1つの案を決定する指針を与えるのが基本理念である。
・組織図の描き方にはルールがあり、こうしたルールを踏まえて組織図を描くと、おのずと組織理念が組織図にも投影されてくる。個々のボックスの高低の位置関係はそのまま部門の“格” を表している。
・企業のポリシーがストレートに伝わってくる組織図は無駄がなく美しい。
・ミッションを決める際のポイントは2つある。「1組織1ミッション」の原則と「工夫の余地を残す記述」にすると言う2つである。
・人材のデザインにおいては、ピーク時ではなく、むしろボトムに近いレベルで必要な人員数を考える。ピーク時には、テンポラリーに人材を補強することで、変化に対応する弾力性の高い組織を実現し、固定費も変動費化していくことが重要である。
・例えば、営業日報を書くことを義務づけても、その日報が組織的に全く活用されてないで、ゴミと化すだけならば、誰も真面目に正確に書こうとしなくなるし、そのうち止めてしまうものである。
・どれくらいのアメであれば、どのくらいの頑張りと成果が期待できるのか、ムチはどのように使うのかのさじ加減こそがシステム設計の要諦となる。
・人間の本音のところに合致した仕掛けになっていなければ、その制度やルールは実行されない。
・システム設計に際して、盛り込むべき本音の対象としては、貢献意欲、功名心、チャレンジ精神、競争心、自己実現欲求といった前向きなものと、嫉妬心、変化への抵抗、同列安住心、リスク回避の傾向といった後ろ向きなものとがある。
・スタッフィング作業においては、まず手をつけるのが、部門長クラスのスタッフィングである。この選定と配置はトップマネジメントの仕事である。次に各部門で主要な役割を担うキーパーソンと管理職の選定を行う。プロジェクトが関与するスタッフィングはこのレベルまでが妥当であり、一般部員については人事部に引き継ぐ形で行う。
・保有人材について把握しなければならない要素は3点に集約される。能力のタイプ、能力のレベル、そして性格や興味である。
・能力的には、非の打ち所のない適性を有していても、本人がそのポジションと業務内容に興味がなければ、モチベーションが喚起されず、成果に結びつかない。
・ポジションや業務に対する自己申告を出させ、能力的適性について、人事部や上司が判断して決める。
・高度な能力を持つ人材は、多数存在するわけではなく、エース級の人材をどう配置していくかと言うのは、組織の生産性と組織能力を決定する重要なファクターである。エース級の人材になると、最も得意とする業務以外でも能力レベルの高さによって大きな成果を出し、かつその業務に就くことによって、新しいスキルまで高レベルで習得してしまうことも珍しくない。
・スタッフィングの3つのポイントは「重点分野への傾斜配分」「大胆な抜擢と更迭」「短期的な戦略のパフォーマンスと中長期的なキャリアプラン」で考える。
・組織改革の狙いの達成度は、組織成員の新組織制度に対する「理解の度合い」と新組織体制に対するメンタル面における「受容度」によって決まる。
・ムードの醸成に必要不可欠なのは、まず第一に「トップの決意と強いコミットメント」の姿勢をアピールすることである。第二に、継続的な広報施策による呼びかけである。ニュートラルの立場にあるものには、繰り返し、呼びかけを行うことによって、かなり受容度を高めることができる。
・移行後、日が浅いうちは“やりにくい” の声が必然的に上がってくる。この声にその都度応じて修正していたのでは、狙いとする理念や新しい行動様式の実現はおぼつかない。「目指すべき理念と行動様式がどれくらい達成されたか」にポイントを置いて、各部署、各成員の活動をチェックしなければならないのである。
・企業人の大半は、出世と報酬がモチベーションの軸になっている。1時間の訓話以上に、1人の抜擢、1人の更迭の方が強いメッセージとして、社員に伝わるケースが多い。
・職位、植生の改変を連動させて行う事は、社員の心理面での抵抗感を緩和する上で、大変有効である場合が多い。
新体制で管理職となる者には、マネージャー、マネージャー以外の課長職であった人材は、エキスパートのように。
・分社化した新会社は、これまでの体制や人員を見直し、効率化を実現するものであるが、IBMが目指しているのは、効率化の成果とともに、個別事業の収益化である。そのためにIBMの企業グループ内にとどまらず、外部の企業からの受託も進めている。コアコンピタンスではない分野は外部に任せるという経営戦略。
・資産や資本を持たないこれまでの事業部制では、業績評価は、予算と実績の管理を中心とした損益計算書の管理であったのに対し、カンパニー制では、それに加えて、バランスシートのマネジメントまでもが求められる。資本効率の向上を基本に据えた形をカンパニーに求める発想が重視されているのである。
・M&Aは、人と行動様式を買うことと捉えることである。例えば、次々とヒット商品を生み出す研究所も、新規顧客開拓能力に長けた販売会社もその強みを全て、そこで働く人の能力とやる気と行動様式が生み出しているものなのである。したがって、彼らのやる気をなくさせたり、従来の行動様式を大幅に制限するようなマネジメントを導入してしまうと組織の生産性は急落し、顧客を失い、目論んでいた競争力強化は果たせない。
・ネットワーク型ビジネスシステムとは、最も強い機能を持った企業同士が顧客に対するバリューを極大化するために、最適な形で連携し、事業の展開を行う取り組みである。
・ネットワーク型組織とは、成員の自律的判断によって、局所最適化を迅速に実現しながら、同時に、全社的な調和と最適化をも達成する組織体制である。
・人間には、素質や能力の水平的ばらつきが存在する。この点においては、多様な成員構成が実現でき、望ましいこと。しかし、残念ながら、人間には水平的ばらつきと同時ように、垂直的ばらつきも現実として存在する。ネットワーク型の組織がうまくいく要件として、水平的なレベルの統一が必要と言うことになると、どの椅子にも座れない人が出てくる。
・例えば、異業種交流会は不毛で、多くは全く実を結ばずに終わってしまう。なぜなら、コーディネートコストをどちらも取りたがらないからである。
・これまでのピラミッド型組織が持っていたコーディネートのための仕掛けがない分、それを補う仕掛けと工夫が不可欠なのである。
・ネットワーク型組織が最適であるケースとしては、法律事務所とか、コンサルティング会社、投資顧問など、いわゆるプロフェッショナルファーム型の企業が挙げられよう。
・一般の企業においても、ネットワーク型組織が効果的に機能し、得るケースがある。あるテーマについて、組織、横断的なメンバーで結成するプロジェクトチームがそうである。
・経営者育成プログラムは、プログラムの中にトップとの率直な討議の場を設けている。プログラムの内容は、あらかじめチームごとに現実の企業課題についてテーマを与え、その解決策を各自が事前に準備する研修の場でチームごとに解決策を討議し、経営層がそのアウトプットを評価して良い施策は即座に実行する。
・これまで会社都合で行われていた移動、キャリアパスについて、自己申告制度を導入して、本人の希望と選択に基づいた運用を行うことも、自己責任型の人事制度を実現していく上では、重要なポイントとなる。
・経営の不透明さは、戦略的に重要なネットワーク形成のチャンスを逃すことを意味するのである。
・キャッシュフローは、事業活動に伴い発生した実際の現金の流れであるため、国や会計基準の違いによって変わることがなく、企業実態を正しく把握できると言う特徴を持つ。フリーキャッシュフローは事業活動で獲得した手元に残るお金のことを表す。
・EVAはROEの弱点を補完する新しい評価指標として近年注目されている。
経済的付加価値= 税引後営業利益- 総資本調達コスト
・95年前後とは、まさに日本企業の組織制度にとって歴史的大転換点であった。組織制度上の新しい工夫や仕組みの雛形がほぼ出揃った感があるのも、この3年間の意義として大きい。さらには、マトリックス組織やネットワーク型組織のように理論的には魅力的ではあるものの、実行面では意外に難しいことが判明してきたのもある。各企業が戦略を学習、体得したからこそ、結局、企業の強さは、戦略では差別化が難しくなり、組織能力によって競争力が決定されるようになった。
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組織とは何か?という大前提から、その目的、成立要件、構成要素、設計・展開・定着の方法論までが、前半までで網羅されている。これらは時代が変わっても不変であろう内容で、今読んでも非常に含蓄があり色褪せない。
後半は事例メインになり、さすがに古さを感じるが、1990年代の空気感(インターネットの勃興、国際会計基準への変更、ディスクロージャー熱の高まり、等)に触れられる点では面白い。