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ローマ人の物語 8 危機と克服
著者 塩野 七生 (著)
【新風賞(第41回)】繰り広げられる意味なき争い、無惨な三皇帝の末路。帝国再生のため、時代は「健全な常識人」を求めていた−。皇帝ネロの死にはじまってトライアヌスが登場する...
ローマ人の物語 8 危機と克服
危機と克服──ローマ人の物語[電子版]VIII
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商品説明
【新風賞(第41回)】繰り広げられる意味なき争い、無惨な三皇帝の末路。帝国再生のため、時代は「健全な常識人」を求めていた−。皇帝ネロの死にはじまってトライアヌスが登場するまでの三十年たらずの時代を描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
塩野 七生
- 略歴
- 〈塩野七生〉1937年東京都生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業。「ルネサンスの女たち」でデビュー、70年以降イタリア在住。著書に「海の都の物語」「わが友マキアヴェッリ」など。
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目立たぬ時代ではあるが...
2007/08/14 15:36
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネロ帝の自殺後、ローマにはカオス(混沌)が訪れる。紀元69年の一年間にガルバ、オトー、ヴィテリウス、そしてヴェスパシアヌス4人の皇帝が、相次いで即位した。同じ国の軍隊同士が戦い、ローマでも市街戦がおこった。それらに乗じたガリア人は、独立国家を作った。同時代人の歴史家タキトゥスは、「すんでのことで帝国の最後の一年になるところだった」とその危機の重大さを記す。
しかし、この危機を回避し、パクス・ロマーナを再び取り戻したのは、四皇帝最後の人、ヴェスパシアヌス帝であった。シリア軍総司令官であった彼は、名将ムキアヌスとともに、ヴィテリウスを討ち、混乱を鎮めて帝位に就く。その10年の在位中、国はよく治まり、また彼の後を継いだ長男ティトウスも名君として善政を施す。
早世したティトスに代わって帝位に就いた弟のドミティアヌスは、ネロ以来の悪帝として後世に知られることとなる。これとても、人気抜群で若い死を惜しまれた兄との比較で、悪く言われたまでで、死後、皇帝としての栄誉を剥奪されたこの人もよい政治はおこなった。しかし、民衆の恨みをかった彼は暗殺され、その後政界にはふたたび不穏な空気が流れた。それを回避したのが、ネルヴァ、すなわち五賢帝最初の皇帝であった。
本巻が扱うのは、パクス・ロマーナ期における唯一の混乱とその回復というローマ史の中では地味であまり知られていない時代であるが、それでも、そこには魅力的な人物や特筆すべき事件にあふれている。個人的には、ヴェスパシアヌスの「充分にふくらまなかったパンのような」顔(表紙の肖像を参照!)とおおらかな性格とが、大好きだった伯父にそっくりで、それだけでローマ史中最も好きな英雄の一人になっている。
また、ユダヤ人によるローマ帝国への反乱、すなわちユダヤ戦争―特にユダヤ教徒にとっても、またキリスト教徒にとっても重要な、かつ怒りをもって覚えられるマサダ砦の陥落―が、彼らとは別の視点から描かれていることにも注目したい。それは作者の塩野が、西洋のキリスト教史観と異なる視点からローマ史を描いたことを示す好例である。なぜならこの事件を彼女は、迫害される哀れな人々というよりもむしろ、長い迫害の歴史から意固地になり、他民族との協調性を失った民族が選んだ無謀な集団自決として描いているからだ。
ローマが伝統としてきた多神教と、他のいっさいの神を否定するユダヤ教など一神教との対比は、シリーズのかなり前から言及されていたが、塩野のとらえかたは、一言でいえば「寛容の多神教」と「不寛容の一神教」だろう。これには多くの人が異議を唱えるだろうし、彼女とてこれほどストレートには断言していないが、現代の国際紛争の多くが、宗教、それもユダヤ教、キリスト教、イスラム教といった一神教の狂信的信仰に根ざしていることを考えるとき、このような視点が少なくとも現代の国際問題を考える上で大きな示唆をあたえてくれることだけは間違いない。塩野は、キリスト教がローマ帝国の国教となっていく過程を描いた巻(第14巻)でも、再び同じ視点から、西洋文明の基盤であるこの宗教に鋭いメスを入れている。
あらゆる宗教のあらゆる神々を神殿に祀り、完全なる信仰の自由のもとさまざまな民族との共存をはかってきた古代ローマの多神教と、自分の信ずる神以外をすべて排斥したユダヤ教やキリスト教の一神教。これらのうちどちらが、現代のわれわれにぴったりくる生き方か、各自これらの巻を読んで考えてみてほしい。
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リーダーの要件。リーダーシップに欠ける政治的トップは国の危機を招く。
2010/05/30 00:02
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風紋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1992年以来毎年1巻づつ刊行され、2006年に全15巻が完結した壮大なシリーズの第8巻目である。
本巻では、ネロの死からトライアヌスが登場するまでの30年足らず、68年夏から97年秋までが描かれる。この間、ガルバ、オトー、ヴィテリウス、ヴェスパシアヌス、ティトス、ドミティアヌス、ネルヴァの7皇帝が矢つぎばやに入れかわった。
アウグストゥスにはじまるユリウス・クラウディウス朝は、ネロの死により崩壊した。
直後から、ローマ市民同士が血で血を洗う内戦へ突入した。わずか1年の間に、ガルバ、オトー、ヴィテリウスの3皇帝が相ついで即位し、そして自死または殺害された。
その虚をついて、ゲルマン系の一部族の指導者ユリウス・キヴィリスがローマに叛旗をひるがえす。反ローマの「ガリア帝国」は次第に勢力を拡大し、ライン軍団を構成する7個軍団のうち6個軍団が降伏し、敵に忠誠を誓った。ローマ史上、タキトゥスのいわゆる「一度として経験したことのない恥辱」であった。
ヴェスパシアヌスが内戦を収拾した。叛乱を制圧し、フラヴィウス朝を創始した。「健全な常識人」だった彼は、「なかったことにする」寛容な措置で内外ともに報復を抑え、新たな繁栄の礎を築いていった。その長子ティトス、二子ドミティアヌスも堅実な路線を継ぎ、善政をしく。
しかし、元老院を圧迫したドミティアヌスは、暗殺に斃れた。
元老院はただちに議員のネルヴァを皇帝に推す。内乱の記憶は、まだ人心にまだなまなましく、異論は起きなかった。五賢帝時代の幕開けである。
連綿とつづく『ローマ人の物語』の特徴は、リーダーの人間学である。リーダーシップが、これでもか、というほど書きこまれ、分析される。
本巻では、ことに負の側面からリーダーの要件が剔抉される。反面教師となるべきリーダーの特徴である。すなわち、ガルバにおいては人心把握の失敗、オトーにおいては実戦の経験不足、ヴィテリウスにおいては消極性、無為。・・・・なにやら、現代日本の宰相を思わせる特徴ではないか。
その立場にふさわしくないリーダーの下では危機が起こり、続く有能なリーダーによって危機が克服される。こうして「ローマ」は栄え続けてきたし、繁栄は危機の後にもやってきた。
著者はいう。歴史は、史料に立脚して書かれる。史料は不確実な性質をともなう。歴史家は史料を信じるが、作家は史料を疑いの目をもって利用する。このちがいは、「人間性をどう見るか」による。自分は、この長大なシリーズを書き続けるにあたって、一つの判定基準を採用した。すなわち、ある皇帝が成したことが共同体すなわち国家にとってよいことだったか否かは、彼が行った政策ないし事業を後の皇帝たちが継承したか否かによって判定する、という基準である、云々。
タキトゥスをはじめとする同時代人にとっては悪名高いネロも、その勢力を削いだがゆえに元老院から憎まれて功績を抹消されたドミティアヌスも、この「判定基準」で見なおすと、評価されてよい側面が浮き上がってくる。
通説に与せず、個性的なまなざしで史料を洗いなおすところに、埃をかぶった史料の中から血の通った人間を救出し、21世紀の読者のまえに生き生きと現前させるのだ。
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混乱の時代
2023/11/14 10:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
政治の混乱、次々と惨殺される皇帝たち、 普通の国だったら当然のように、崩壊 終焉に進んでゆくはずであるが、古代ローマ帝国はこの時点では生命を失わなった。その秘密な何なんだろうか という興味で読み進めた。とは言うものの英雄が登場するわけでもなく、地味な印象の巻であった。
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混乱から平和へ
2024/01/10 20:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
ローマ市民に不信任を突きつけられて自死したネロのあとの混乱期と回復期について書かれています。
まず登位したのがガルバ帝、属州総督から軍団の推挙を受けての皇帝就任という形での皇帝だったが名門出身であり経歴も立派だった。
にもかかわらずなぜ早々に失脚したのか。
彼の政策の失敗を見ていくと、危機管理能力にもセンスってものが必要なんだと痛感する。
もちろんガルバ帝ももう少し若いか、信頼のおけるブレーンがいればまた違ったのかもしれませんが。
結局半年ほどの在位で属州からの反乱の報になすすべもなくなっているところでオトーに暗殺されて終わる。
ガルバ帝に続くオトーは、すでに皇帝を名乗って進軍してくるヴィテリウスとの戦いに負けてあっさりと自死して終わった。
しかしこれがローマの軍団同士の戦いという悲劇によって後に禍根を残すことになるのですが。
その禍根を押し広げてしまったのがヴィテリウス帝だった。
とりあえず勝てばいいやという安易な考えで、さらに内戦の戦後処理も適当すぎるあたりがヴィテリウスの性格を示していると思う。
当然長続きするはずもなく、冷静に策を練ったヴェスパシアヌスに追い落とされた。
軍団叩き上げで名将として知れ渡っているのでもないヴェスパシアヌスだったが、彼の成功はシリア総督であったムキアヌスとエジプト長官アレクサンドロスという協力者を得たことかもしれない。
三人で練り上げた計画は完璧で、元老院議員でさえなかったベスパシアヌスを皇帝にすることに成功する。
ヴェスパシアヌスは帝位についてガリアの反乱、そして前からの問題だったユダヤ戦役を終結させてようやく平和をもたらした。
財政の安定化で金策とした税で笑われたりするも、皇帝としての責任をよくわかっていたのだと思う。
病死するまでの十年間、すべてをやりきった人生だったのだろう。
ヴェスパシアヌス帝が建てさせたというコロッセオをもう一度見に行きたくなった。
ヴェスパシアヌスの後を継いだのが長男のティトゥスだった。
短い在位期間中に起こったポンペイの災害に奔走するあたりからも、よき皇帝の姿が浮かんできます。
短いからこそ良かったと揶揄したのは誰だったか。
当時に過労死なんてものはなかったのだろうけれど、病死もしくは密かに暗殺されて短い生涯を閉じる。
弟のドミティアヌスは、兄とは違って自己顕示欲が強かったようです。
公共事業で都市ローマを整備するとともに、皇帝の宮殿を建てさせる。
さらにすでに安定していたローマの境界をリメス・ゲルマニクスの思想でさらに強化しようとした。
ドミティアヌス帝が暗殺されて後に暴君と呼ばれるようになったのは、けっして無能であったからでもダキア戦役で失敗したからでもない。
家庭内の問題が発展した挙句の暗殺であって、さらに弾圧されていたと感じていた元老院が死後に復讐したに過ぎなかったのだろう。
後を継いで皇帝となったのはネルヴァ、五賢帝の時代へと続く。