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- カテゴリ:一般
- 発行年月:1999.9
- 出版社: 文芸春秋
- サイズ:20cm/417p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-16-363510-6
紙の本
盟約 上
時は明治、カナダで育った三郎は、まだ見ぬ父の祖国・日本へ渡る。近代国家への途上にあった日本。海軍に身を投じた三郎は、軍人として日露戦争に参戦する。日本と同盟国・イギリスの...
盟約 上
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商品説明
時は明治、カナダで育った三郎は、まだ見ぬ父の祖国・日本へ渡る。近代国家への途上にあった日本。海軍に身を投じた三郎は、軍人として日露戦争に参戦する。日本と同盟国・イギリスの絆を謳い上げる歴史絵巻。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
C・W・ニコル
- 略歴
- 〈ニコル〉1940年ウェールズ生まれ。作家、探検家。著書に「勇魚」「C・W・ニコルのおいしい交遊録」など。
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紙の本
古きよき時代の日英関係を背景にした、冒険活劇
2000/08/03 08:37
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投稿者:口車大王 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書冒頭、覚書より
本書は、隻腕の鯨取り銛一甚助(もりいちじんすけ)の変転を描いた『勇魚(いさな)』をひき継ぐ物語である。紀州の鯨捕りの村、太地(たいじ)に生をうけ、将来を嘱望されながらも、片腕を失って絶望の淵にあった甚助は、紀州藩士・松平定頼との邂逅を機に、幕末日本が直面する巨大な歴史の変動の場に立ち会うことになった。井伊直弼、吉田松陰、坂本龍馬、中浜万次郎。世界へ目を転じはじめた幕末の群像。彼らとの出会いを経て、やがて一度捨てた海への思いを取り戻した甚助は、海の彼方に自らの夢を賭け、ヴァンクーヴァーへと去った……。
そしてここに、新たな物語が幕を開ける。勇猛な鯨取りの血をひく甚助の息子、ひとりの荒ぶる若者の物語が——
覚書でもわかるように、本書は連作の第二部である。本書では、甚助の息子三郎が、日本海軍軍人として活躍する姿を通して、日露戦争を軸に、日本と英国の蜜月の時代であり、軍国主義に突入していく暗雲が漂い始める、19世紀末から20世紀初頭の日本を見事に描いている。
1945年8月15日以後、それ以前のことは全て間違っているとされている現代日本において、日露戦争における日本海海戦と東郷平八郎の名は知っていても、そのころの日本の置かれた状況と背景について、いったいどれほどの現代日本人が知っているであろうか。善くも悪しくも、我々はこの時代の延長線上に生きているのである。ハワイ王国との関係等、歴史的に埋没してしまった事実も登場し、架空と史実がないまぜになって、我々の依って立つべき場所はどこにあるのか、国際的に自信をなくしてしまっている日本人に「元気」を与える、栄養ドリンクのような小説である。
かた苦しいことを書いたが、そんな「へ理屈」を抜きにして、冒険活劇としても痛快な小説であり、一気に読んでしまう。できれば、前作の『勇魚(いさな)』から続けて読むと、面白さが倍増する。
書店であまり見かけなかったのが不思議である。「C.W.ニコル」という名前から連想される「自然派」のイメージと遠いからであろうか。しかしカナダやイギリス、日本の江田島や佐世保の自然描写は秀逸で、自然派ニコル氏の片鱗は十分感じさせられる小説でもある。そしてこれは、村上博基氏の、美しい日本語訳によって完成する。