紙の本
数学と哲学
2019/03/19 11:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
原子物理学と哲学は不可分であると物理学の哲学的本質を追求し、理論や技術の武器転用への反対の意思を示した科学者の戦間期と呼ばれた時から戦後にかけての対話仕立てになっているドラマティックなドキュメンタリー感を伝える異質の書。
紙の本
哲学的風味の原子物理学創成期五十年史
2004/02/19 21:50
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「この書物は、著者が体験してきた原子物理学の五十年間の発展にかかわるもの。科学と哲学、そしてさらに深く物事の本質を人々に考えさせるように、意図したもの。この本を通じて、科学は討論の中から生まれるものであるということを、はっきりさせたい。そのため、回想録を書くつもりはないので、あえて省約を重ねたり、緊張性を持たせたりすることにし、実際に行われた討論の歴史的正確さはあきらめることにした。しかし、本質的な点についての描写は正確でなければならない。原子物理学の誕生と発展の歴史にともなう思考活動について、何らかの印象を伝えたい」。
著者のハイゼンベルグは、量子力学を創設した立役者の一人である。この本は、物理学を学んだり関心のある人には、知られた名著である。近代物理学の最先端の研究者は、哲学的思考になるもののようだ。また、ドイツ人とインド人は哲学的な民族だ。その言語も哲学的思考に適している。このような背景からか、本書は哲学的な本である。十代での友人との討論でも、相当哲学的な内容になっている。著者自身が述べていうように、正確さよりも考え方の本質を明快にするため、著者がこの本を書いた時点で到達した境地から、振り返っているためであろう。
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06/4/17L 4/17〜5/2
確かに多少難しいが、さすがハイゼンベルグと思わせるような哲学的な本。
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【自然科学の歩みを理解するために】
自然図2F一般図書 289.3:H473 (新装版)
図開架 289.3:H473
医保図書室 420.28:H473b
若くして、行列力学(量子力学)の確立に寄与した物理学者の自伝。哲学的な深みがあって、味わい深い。
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■書名
部分と全体
■筆者
ヴェルナー・ハイゼンベルク
■選書理由
元多摩大学学長である中谷巌氏の推薦書
■内容
・不確定性原理を導いたノーベル物理学賞受賞者ハイゼンベルクの自叙伝。
・本書の大部分が、アインシュタイン、ボーア、パウリなどの世界を代表する科学者との会話が中心となっている。
・すばらしい物理学の発見がいかに生み出されてきたのか。
そして、科学が政治、芸術、思想、哲学といったさまざまな背景に囲まれて醸成されてきていることが示されている。
■所管
科学に携わったことがある人なら、
必ず自分の中にある知的好奇心をくすぶられる一冊です。
なぜか。
単なる自分の考えの道筋を追うというスタイルではなく、
多くの他者との会話・議論によって自分の考えがまとまっていく過程を示している。
公式や理論といったまとまった形が作られるまでの
背景を鮮明にあらわしていて、天才科学者が何を考えていたのかを
知れることがとても興味深く感じます。
しかしながら、
残念なことながら、
自分の読書力では十分にハイゼンベルクの哲学を完全に読み解くことが
できませんでした。
時間を置いてまた読みたい1冊です。
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率直に言って、極めて知的好奇心と刺激を受ける内容になっている。
ハイゼンベルグと言えば、不確定性原理が有名で、量子力学の発展に
多大な貢献をした事で有名だ。
本書を読めば、著者は今でいう高校生の頃から並はずれた知識と洞察力、哲学的思考を
持っていた事が分かる。天才とは、このような人を言うのだろう。しかし、
本書の内容は、決してそのような自慢話ではない。では、何か?
それは、
1.他者との会話の中で、自らの思考の整理とアイデアが生まれる事
の重要性を説いてる内容であると個人的には思う。そして、それを裏付けるように
本書の大部分は、多くの研究者との会話で成り立っている。
そして、そのような会話の重要性は個人的にも非常に重要である事は、強く認識している。
1人で考えていても、良い事はない。多くとは言わないが、信頼できる確かな人に
相談し、意見を仰ぐ事は決してマイナスな要因にはならない。
肯定的な意見は、発展はなかなか望めないが、疑問を付く意見、否定的意見は、それを
飲み込むこみ、咀嚼し、骨にする事で発展は望めるので、本当は否定的意見の方が、
新たなアイデアを生むという事に関しては、有益であると言える。
ただ、受け止める側がそのように思わないと、なかなか難しい。
そして言う方も、より良いものにして欲しいから、言い方にも気をつけなければならない。
と、話が脱線してしまったが、話をもとに戻すと
高校生や大学1年生にぜひ読んで欲しい本であると思う。
ぜひ一読をお勧めしたい。
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長い歴史の中で証明され、積み重ねられてきた科学体系(この場合はアインシュタインまで含めた古典力学)に対し、やはり堅実な積み重ねと発想とで、全く新しい学問体系(この場合は量子力学)を生み出す過程を、内部からの視点で描いた貴重な記録。既成の価値観から離れることの難しさ、革命的な「発見」がいかに地道な努力と常識的な判断の積み重ねで生み出されるのかなど、生き生きと感じられる良書です。
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いちおうは学生時代に物理をやったものとしては、ずっと読みたかった本です。ノーベル物理学賞を受賞したハイゼンベルクの自伝的な本ですが、物理の知識は必要ありません。もちろん、すこし知ってるとより楽しめると思います。
「部分」と「全体」って言葉がいいですね。このことに直接触れているわけではありませんが、結局はすべてが「部分と全体」なんだと思います。
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量子力学の確立に大きく寄与した物理学者ハイゼンベルグの自伝的エッセイ。アインシュタインとのやりとりなど科学史に興味のある方なら楽しめる一冊。
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・「それでは君は、その時代の文化的発展に寄与したいと思う個人は、歴史的な発展がちょうどその時代に彼のために準備してくれた可能性に従うべきだと言うのだね?もしも、モーツァルトがわれわれの時代に生まれていたとしたら、彼も今日の作曲家と同じように無調の実験的な音楽しか書くことができないのだろうか?」
「そうだよ。僕はそうだったと思うよ。もしもアインシュタインが十二世紀に生きていたとしたら、彼はきっと何も特に有意義な自然科学的な発見をすることができなかっただろうとね。」
・私にとっての出発点は、今日までの物理学の立場からは全くの驚異としか言いようのない物質の安定性ということでした。私が安定性という言葉で言おうとしているのは、いつでも繰り返して、同じ性質を持った同じ元素が現れるということ、同じ構造の結晶がつくられること、同じ化学結合が生ずるということ、等々です。このことは外からの作用によって引き起こされた多くの変化ののちでも、鉄の原子は結局、ふたたび正確に同じ性質を持った鉄の原子であるということを意味しています。このことは古典力学では説明のできないことですし、とくに原子が惑星系と相似性をもったものとするとなおさらです。
―ニールス・ボーア
・原理的な観点からは、観測可能な量だけをもとにしてある理論を作ろうというのは、完全に間違っています。なぜなら実際は正にその逆だからです。理論があってはじめて、何を人が観測できるかということが決まります。観測というのは、一般に非常に複雑な過程であることがおわかりでしょう。観測されるべき現象が、われわれの測定装置に何事かを引き起こします。その結果として装置の中でさらに別の現象が発生し、それがまわりまわって、遂に感覚的な印象をつくりだし、われわれの意識の中へその成果を定着させます。現象からわれわれの意識の中への定着までのこの長い道中にわたって、自然はどのように作動しているかということを知らねばなりません。われわれがなにかを観測したということを主張したいなら、自然法則を、少なくとも実際の面で知っていなければなりません。ですから理論だけが、すなわち自然法則の知識だけが、感覚的な印象からその基礎にある現象について結論することをわれわれに許すのです。
―アインシュタイン
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著者は高名な物理学者。学者仲間や学生たちとの対話を再現することで,十代のころから半世紀間にわたる,彼の思想遍歴をたどるという趣の本。
ちょっと前にファインマンの本を読んだけど,ものすごく対照的。ファインマンは陽気であっけらかんとしていてユーモアもたっぷりなんだけど,ハイゼンベルクはなんか…真面目。対話のシチュエーションは,けっこうハードな山歩きだったりとストイック。まあ時代と環境の違いによるものかもしれないが。
なんせ,ハイゼンベルクが高校生のときに一次大戦でドイツは敗れ,三十代ではナチスが政権をとって,その後彼を含めた物理学者たちは原爆の開発に協力させられたという時代だから,無理もないかもしれない。
ともあれ,対話に登場する人々は錚々たるメンバー。師のゾンマーフェルト,ボーア,同世代ではパウリ,ディラック,ほかにアインシュタインやフェルミなど。対話の内容は,量子論,哲学,生物学,政治,戦争と多岐にわたる。
アメリカの実用主義,実証主義には一貫して批判的で,「人間存在とは」みたいな問いを常に持ちながら思索を深めていた様子。過去の対話を完全に再現できるわけはなく,執筆時からの再解釈が多く入り込んでいるとは思うけど,つじつまはあっている感じ。
彼は若くしてノーベル賞をもらっているが,全然その話は出てこなかった。行列力学をひらめいたときのことや,不確定性原理についてはいろいろと書いているけど。とにかく哲学哲学していてかなり読みにくかった。
ユーモアはまったくないけれど,ワイルの『空間、時間、物質』を読んで物理を志し,ゾンマーフェルトに見込まれ,パウリともその話で意気投合するといった冒頭の記述など,なかなか引き込まれる部分も。ただナチス政権下,戦時下,戦後も原爆の衝撃下,の思索が大半なのでやっぱりちょっと気が滅入る。
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栗林のおすすめ本である。物理の理論的なことはほんのわずかで、友人との対話、ドイツでの戦争中のこと、戦後すぐのこと、しらばくたってからの話など、自分の生活を中心としたことである。
これを手本として物理学者も自分のエッセイを書くようになったと思われる。
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量子力学を確立した3人の物理学
■ヴェルナー・ハイゼンベルク
■ニールス・ボーア
■ヴォルフガング・パウリ
の3人を中心とした回顧録。量子論と哲学が話題の中心。
以下、メモ
表現方法とは、概念を把握し、理解するための枠組み。つまり、新しい表現方法を確立するのは、新しい概念を把握できたということの証。そして、こういった新しい表現方法が生まれることで、人々はそれを応用して、それの土台に立って、更に新しいものを見れるようになる。アインシュタインの相対性理論もベートーヴェンの音楽的手法も、どちらも新しい概念を形にできたために革新性があった。
この視点からは、2つの考えが導き出される。
1つ目は、革新性は「新しい表現方法を考えること」にあるということ。
2つ目は、「新しい表現方法」はあくまで理解できる形にする枠組みを、それまで上手く掴めなかった「内容」に与えるだけなので、何か新しい「内容」を自ら創造しているわけではないということ。その形では表せなかった新しい「内容」は、社会や大衆といった一般が生み出した精神性や空気感であって、それを上手く形にして提示してくれるからこそ、多くの人の心を動かすことになる。
結局、コンテンツではなくてフィールド(形式)を作り出せる人を天才と言うのかもしれない。
「理解する」とは、相互作用の仕組みを理解して、今起きている現象を把握したり、未来に起こる現象をある程度予測したりできることを指す。外見的には無秩序でこんがらがっていても、それを何か既知の定理に集約できるとき、つまり、多様性を一般的な簡単なものに帰せしめることができるとき、人の思考は安心感を得る(思考の経済性)。
政治や宗教的な意見の対立の際、暴力や汚職といった不正を働くことがあるが、わざわざ不正に頼るということは、そうでもしないと自分の考えが多くに浸透しないと、正当な方法では浸透できないような考えであることを告白しているようなもの。
自然科学は「正しいか・誤っているか」を巡る問題なのに対し、宗教は「価値が有るか(善)・価値がないか(悪)」を巡る問題である。しかし、一部には、宗教がその価値観を説く際に用いた比喩を、さも真実かのように理解しているために、自然科学との間で意味のない「正しさ」争いを繰り広げることになる。
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dialog Platon ティマイオス
Sommerfeld Pauli Bohr Dirack
Einstein Plank Ratherfourd
schurodinger
量子
参画
行き着くのは市場に膾炙した理。
ただ、論理を通したものであるか、あてずっぽなのかという違い。
重い
この違いには気づきにくい
中にいればなおのこと。
ひとつのことしか見ないようにして
もしくは項目を絞ってなさんとするのは
人間を引き受けたものの企て。
それゆえ、死角が生まれ、盲者になりもする。
己の占める領域意外に関しては全くの門外漢である
この者たちは、べつの視座若しくは視点を必要とする。
人間360度常々見ているわけにもいかなければ
見ることなどそもそもが不可能なのだ。
他者の存在を必要とすることは、
人間を引き受けることから始まる。
己の死角を穴埋めすること。
変わりに後ろや足元を見てくれる人を
何なら前だっていい。
欠落した存在、絶えざる未完成な存在。
受難だけでは足りない。
諦念を有するだけでも、重さを獲得するだけでも。
今日我々は、妥協しなければならない。
前の世代までには、完全へ完全で完全に達さねばならないと思い己自身に重さを与えて生きてきた。
足取りは重く、厳かに、己自身に
神を与えて、神聖化することで
説明のつかなさをごまかそうとした。
一切が均一化され均された現在は
いくべきあてが定まらない。
それでも
「この次は」というなくなる事のない
この問いを我々は一つの世紀が変わるたびに
掲げ続けねばならない。
そのたびに生じる死角に
補填をすること。
量子力学の登場は。
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ドイツ物理学会の英雄、ハイゼンベルグが、時代の最先端の科学者仲間と語り合った内容が生き生きと記録された一冊。ボア、シュレディンガー、アインシュタイン、マックスプランクなどとの、科学、哲学、宗教、自由、戦争と政治を巡る対話。「理解するとは何か」「科学の成果が必ずしも人類を幸せにしないことについて」「宗教と科学は一致するのか」など。現代でも論争となるこれらの論点について、科学を極めた博士等の議論が面白い。