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収録作品一覧
歌枕 | 7−156 | |
---|---|---|
きりぎりす | 157−190 | |
此の世 | 191−218 |
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紙の本
執拗に恋の究極の理想を求めて行った作家
2000/11/08 18:26
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投稿者:水原紫苑 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中里恒子という作家のことを語る人は今はほとんどいないようだ。先年『時雨の記』が吉永小百合主演で映画化された時も、大人のプラトニック・ラブという小説のストーリーは話題になったが作者については特に何事もなかった。
だが、私は、今回文庫化された『歌枕』も含めて、のちの『綾の鼓−いすぱにあの土』まで、執拗に恋の究極の理想を求めて行った作家の人間像に興味がある。
『歌枕』の、落魄の男鳥羽の心をあたためる若い女やすの素朴で健やかな美しさ。それは、やすが鳥羽の死後形見として大切にし、鳥羽の妹から返すように求められてついに割ってしまう常滑の壺を思わせるような、存在そのもののあるがままのひたむきな輝きである。けれど、そんなものを創ろうとして心を砕いた作家自身は、どれほど存在の自然から遠い人間であったことか。作品は、作家よりつねに幸福なのかも知れない。