紙の本
日本の誤りの象徴
2005/11/04 02:23
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
読めば読むほど、苛立ち感が募る。第二次世界大戦中、日本で唯一戦場となった沖縄。そして、戦後の米軍占領統治、日本復帰後も続く圧倒的な質量を持つ米軍基地の圧迫にさらされてきた沖縄。
日本という国は、沖縄をどれだけ犠牲にして、踏み台にしてきたのか。
沖縄には自然にできた巨大な洞窟が多くある。戦時中はそこが日本軍の拠点とされたり、民間人の非難壕とされたりした。この本は数あるそんな壕の中でも比較的大きい二つの壕−アブチラガマと轟の壕−の物語である。壕の中で何が起こったのか。中にこもる人たちは、何を考え何を信じ、何を求めていたのか。入念な聞き込み調査により、その実態が暴かれていく。日本はなんとおろかな戦争を始め、そして続けていたのか。戦火に苦しむ一般民衆の言葉ほど、それを思い知らされるものはない。
日本という国が犯した最大の過ちが、日清・日露より1945年の敗戦まで続く50年間にわたる侵略行動の継承であるなら、日本という国が犯した、いや犯しつつある二番目に大きな過ちは、かつて自国が犯した最大の過ちに対する戦後の無反省性である。
アジアで最大の侵略国家であった我が国の歴史に対する無知・無自覚が、かつて痛めつけられた国々に人々を今でも苦しめ続ける。A級戦犯が総理大臣として復活したのは、敗戦後もそんなに年月は経っていない。あわせて今に続く政界有力者の暴言・妄言・戯言の数々。
そして、戦中・戦後とも、国内で最もこの国の誤りによる被害を被ってきたのが、冒頭でしめした沖縄であったのだ。
「過去に盲目となる者は、現在に対しても盲目となる。」
日本ほど、この言葉が必要とされる国は無いはずであるが、現実は全く逆の方向を向いてしまっている。
引き返すチャンスは残っているのか。
紙の本
真実の目
2022/03/06 05:13
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
旅というのは観光という意味ではない。目をそむけたくなるほどの現実が戦時中に行われていたことをたくさんの証言から浮き彫りになっている。主に壕における出来事が赤裸々に語られ悲惨な日々が綴られている。
紙の本
沖縄戦の本質を描いた本
2002/10/14 18:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:島人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
沖縄には、ガマと呼ばれる鍾乳洞が数多く存在する。そのガマの多くは、太平洋戦争当時、住民や日本軍の避難壕として使用されていた。本書では、聞き取り調査を元に、ガマの惨劇を再現していく。ガマの中で一体何が起こったのか。沖縄戦を知りたい人に読んで欲しい一冊。尚、この本の著者である石原昌家氏は、平和学学者として沖縄でも有名な方である。
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「沖縄の旅」と題名が頭についているので、一瞬、観光案内かと思ったが、そんな生易しいものではなく、沖縄戦のアブチラガマと轟の壕での様子が克明に記されている。
悲惨を通り越して、もはや地獄の阿鼻叫喚の図だ。戦争だからと言って許されるはずのない日本兵の沖縄人に対する蛮行の数々。沖縄の人々を盾にしながら、ゲリラ戦を行っていたのだ。
こんな事態になったのは、終戦工作をすべきだと進言した近衛文麿に対して「モウ一度戦果ヲ挙ゲテカラデナイト中々話ハ難シイト思フ」と述べた天皇の言葉があったからだと書かれている。
25年もかけて取材活動をされた作者に敬意を表したい。
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図解がいい。一級の資料だ。そして中身に関しては、現地のガマに入る前に読むか、入ってから読むか。それが問題だ。
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[ 内容 ]
沖縄県本島南部にはガマとよばれる自然洞窟がいくつもある。
半世紀前の戦争中にこのガマは避難壕として軍・民双方に使用されていた。
本書に登場する「アブチラガマ」も「轟の壕」もそうした避難所のひとつだった。
ガマでなにが起こっていたのか。
人びとの忘却の彼方にあったこれらガマの記憶をたどる石原教授たちの調査行は、取材開始から25年の歳月を要することになる。
半世紀をへて、よみがえる真実とはなんだったのか?
裁かれざる「犯罪」は放置されたまま、闇のなかに眠るのか。
「洞窟の惨劇」はいま姿を現そうとしている。
[ 目次 ]
第1部 アブチラガマ(糸数壕)―陣地・病院・軍民同居の洞窟(洞窟陣地壕―1945年2月~4月30日 南風原陸軍病院糸数分室―1945年5月1日~6月2日 軍民一体化―1945年6月3日~8月22日)
第2部 轟の壕―日本兵が支配した洞窟(沖縄県庁職員 女子防空監視隊員 避難民)
補遺編 沖縄戦の経過
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[ 関連図書 ]
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目次
第1部 アブチラガマ(糸数壕)―陣地・病院・軍民同居の洞窟(洞窟陣地壕―1945年2月~4月30日
南風原陸軍病院糸数分室―1945年5月1日~6月2日
軍民一体化―1945年6月3日~8月22日)
第2部 轟の壕―日本兵が支配した洞窟(沖縄県庁職員
女子防空監視隊員
避難民)
補遺編 沖縄戦の経過
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アブチラガマに入る前に読もうと思って読み始めたけれど、何度も挫折しそうになった。それくらい、生々しい記述が多かった。精神的にきつかったけれど、読んでよかった。
資料としては、時系列ごとの図解があるので分りやすかった。
アブチラガマに実際に入った時も、あの話はここか、とすぐに見当がついた。
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内容:沖縄戦は日本国内で唯一の地上戦というだけでなく、日本軍が住民をも虐殺したということも含めて大学の先生と学生が実地、聞き取り調査した記録
感想:壕の中での筆舌に尽くしがたい惨状・・・それが私が生まれるたった10年前のことだという改めての驚き。生き残った人が後世に伝えていかねば、と証言したことを大学の先生と教授が聞き取り、入念に調べ上げた書を読んで、知った以上は私も次世代に少しでも伝えたいし、70年後であれ「壕を見ること」がまず大切だと思った。
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ガマ。沖縄本島南部に点在する自然洞窟だ。沖縄は太平洋戦争で
日本国内唯一の地上戦が行われた場所となった。その際にガマは
日本軍及び民間人の避難壕として使用された。
本書はアブチラガマと轟の壕、ふたつのガマで何が起きていたのか
を体験者の聞き取りと調査により詳らかにしている。
沖縄戦の凄惨さは他の作品でも読んでいる。ガマで何があったのか
も知っているつもりでいた。だが、本書は日本が犯した大きな過ち
を改めて真正面から突き付けている。
負傷兵は放っておかれ、脳症患者となった兵士は密かに殺された。
ガマのなかでも乾いた居心地のいい場所は日本軍が占領し、避難
して来た住民は湿った場所へ追いやられる。
食糧が乏しくなっていると民間人が所持していた僅かな食べ物を
日本兵が取り上げる。ひもじさに子供が泣くと「殺すぞ」と脅され
る。実際に殺されたとの証言も残っている。
壕から外に出ることは許されず、出て行こうとする者や外から
呼びかける者にはなんの根拠もなく「スパイ」呼ばわりする。
「日本軍は自分たちをアメリカから守ってくれる」。そう思って
協力した沖縄の人々だったのに、壕を支配する日本軍は人々を
虐げ、裏切りを重ねた。
「日本ノ兵隊 生カシマスカ 殺シマスカ?」
轟の壕で住民の救出にあたっていたアメリカ軍将校の片言の問いかけ
に、住民たちはいっせいに答えた。「殺せ!殺せ!」と。
申し訳ないと思う。いや、それだけでは言い足りない。なんてことを
してくれたのかと気持ちでいっぱいなのである。
もし、ガマを支配していた日本軍が早期の住民の脱出を認めていたら
もっと多くの人が命を落とさずに済んだのかもしれない。
沖縄だけはない。「一億玉砕」などというスローガンなんか掲げて
いなければサイパンの「バンザイ・クリフ」もなかっただろうにと
思うのだ。
沖縄戦の前から当時の日本政府は沖縄を捨て石として考えていたこと
を裏付ける資料を見たという人も証言も収録されている。
沖縄に、行かねばなるまい。そこで何が起きていたかを知った上で、
沖縄に行かねばと感じた。
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沖縄の本土復帰から50年、沖縄戦終戦から77年が経過した2022年において、「沖縄戦」ではいったいどのようなことが起こっていたのか、生の証言をしてくれる人はすでにほとんどが鬼籍に入られています。
米軍と日本軍による戦闘、ではなく、第三の集団として「沖縄県民」が巻き込まれ、参加させられていた、アジア太平洋戦争における(日本国内での)唯一の地上戦であった沖縄戦。
そこでは日本軍に協力してきたにもかかわらず、スパイとして扱われ、無残な死をもたらされた沖縄県民の多数の犠牲がありました。
いま、また戦争がおこっており、日本も他人事ではない世の中だからこそ、「戦争」がもたらす被害について、あらためて知っておくことが必要だと思います。
タイトルにもある通り、アブチラガマと轟の壕という二つのガマで起こった日本軍による住民虐待(住民虐殺)について、その体験談から実像を炙り出した作品です。
読んでいて、辛くなることも少なくありませんが、決して忘れてはいけない歴史の一つです。