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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.6
- 出版社: 法政大学出版局
- サイズ:20cm/579,23p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-588-00673-8
- 国内送料無料
紙の本
言葉への情熱 (叢書・ウニベルシタス)
古典古代から現代までの文学・哲学・芸術・科学の該博な知識を基盤に、独自の世界像を提出する「脱領域の知性」の評論集。危機に瀕したヨーロッパ文化をユダヤ人の眼で異化しつつ、現...
言葉への情熱 (叢書・ウニベルシタス)
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商品説明
古典古代から現代までの文学・哲学・芸術・科学の該博な知識を基盤に、独自の世界像を提出する「脱領域の知性」の評論集。危機に瀕したヨーロッパ文化をユダヤ人の眼で異化しつつ、現代の病理を「言葉」の根源から抉る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジョージ・スタイナー
- 略歴
- 〈スタイナー〉1929年パリ生まれ。オーストリア系ユダヤ人。40年アメリカに移住。『エコノミスト』誌編集員、ジュネーヴ大学教授等を務める。著書に「青ひげの城にて」ほか。
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紙の本
目映いほどの「博識」に裏打ちされた重厚な最新評論集
2000/07/30 06:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:服部滋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の内容とその意義、といった点については専門家の方がお書きになるようだから、ここではちょっと別のことについて触れてみたい。
スタイナーは、いかにも彼らしい「正誤表」というタイトルの自伝(邦訳『G・スタイナー自伝』みすず書房)で、「『博識』——この言葉は英語ではとりわけ軽蔑的な意味で使われる——は今日では信用されない」と嘆息している。「誰であれ、一人の人間が古代ギリシア文学、チェス、哲学、ロシアの小説、言語学、美学など、広範な分野について考えを発表する、ということはもはや当り前のことではなくなったのかもしれない」。むろんこの博識家とはスタイナー自身のことであり、「信用されない」というよりも「尊敬されない」といいたかったところだろう。
たしかに目も眩むような博識は、現代においてはいささか時代遅れなのかもしれない。文芸批評のジャンルでいえば、大著『ヨーロッパ文学とラテン中世』のE.R.クルチウス、『ミメーシス』のE.アウエルバッハ等ロマニスト、『人間的時間の研究』のG.プーレ、『フランス・バロック期の文学』のJ.ルーセ、『ロマン的魂と夢』のA.ベガン、『ボードレールからシュールレアリスムまで』のM.レイモンといったヌーヴェル・クリティック/ジュネーヴ学派の学匠たちがすぐに思い浮かぶ(スタイナーも一時期、ジュネーヴ大学で教鞭を執っていた)。ここに『批評の解剖』のN.フライ、『動機の文法』のK.バークあたりを加えても差し支えあるまい。
彼らにとって文学研究と文芸批評は——さらにいえば哲学であれ美学であれ——なんら区別すべきものではなく、それを可能にしたのは膨大な、嘔吐を催すほどの教養・博識であった。むろんスタイナーもまた、英独仏3か国語を均等に用い、わが国明治の教養人が幼時に漢文の素読をさせられたように、ギリシャ語で『イーリアス』を音読させられた(5歳の時だ!)という幼年時代を経てきているから、なまなかの教養ではない。だから——最初に引いた博識云々とは「近頃は教養のない奴がデカい顔してのさばりやがって」と翻訳して読まなければならない。最新の文学理論でテキストを「料理」して論文一丁上りという昨今の風潮にスタイナー氏は我慢ならないのだ(それは上記『自伝』中の「脱構築やポスト構造主義のサーカス芸人ども」といった「悪意」に充ちた表現からも窺える)。
「古典」と「不滅の名作」(つまりヨーロッパ的教養と同義だ)以外は「目もくれなかった」自分が、いつのまにか骨董のような存在になり果てていた!「ウッソー。アメリカに文化なんてないじゃん。哲学も文学も音楽も、みんなみーんなヨーロッパのもんだぜい」と、N.Y.で開かれた「アメリカ文化をめぐる討論会」で苛立ちまじりに口走ったもんだから、総スカンを食っちゃった。それが本書に収録されている「エデンの園の古文書館」(1981年)。スタイナーは本書の序論で「私の全著作の中で、『エデンの園の古文書館』が最も痛烈な非難と拒絶を誘発した」と15年後に振り返っている。
本書には1978年の講演から96年の「ヘブライ聖書への序文」まで、20本余のエッセイが収録されている。すべて目映いほどの「博識」に裏打ちされた重厚なエッセイだ。だがその博識には——ここで三度『自伝』を引用すれば——「なんとなく悲哀、ラテン語でいうトリスティティアがつきまとっている」。 (bk1ブックナビゲーター:服部滋/編集者 2000.07.29)