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文庫

紙の本

白のファルーカ(集英社文庫) 4巻セット

著者 槇村 さとる (著)

白のファルーカ(集英社文庫) 4巻セット

税込 2,851 25pt

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紙の本

ドラマティックな、そして深いスケートドラマ

2001/03/18 23:45

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:小萩 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 私が槙村作品にはまるきっかけとなった「白のファルーカ」。高校時代に熱中しました。これを読みたくて別冊マーガレットを毎月買ってました。ついでにフィギュアスケートにもはまりました。ちょうど、伊藤みどり選手が世界選手権で優勝したりしていたころで、今よりはフィギュアスケート自体が盛り上がっていた感じがします。

 スケートが好きな普通の少女樹里が大会中の事故で再起不能といわれた天才スケーター松木恵のパートナーに選ばれたことから、世界の舞台を目指していく、というストーリー。才能はあるが人間性に問題ありの恵と、技術はないが感受性豊かな樹里の二人が障害を乗り越えながら世界を目指す…。文句無しに面白い。

 脇のキャラクターがまたみんないい味だしてます。恵のライバルで実は恵の異母兄だった海棠、恵と樹里のコーチの筒井夫妻(この二人は「愛のアランフェス」にも登場)、樹里のおばあちゃん、恵の両親。いろいろな問題を抱えた人達が、お互いにエゴをぶつけ合う。それにしても驚くほど、主要キャラは家庭に恵まれていません。恵は松木家の長男(妾腹だったんだけど、本妻さんに子供がいなかったため幼い頃松木家へ入っています)として父親から「スケートなどやめて早く実業の世界へ入れ!」とつつかれる。しかも母は恵が子供の頃、海棠の母親の存在と恵の父親の心ない言葉に傷ついて現実世界から逃避してしまっている。樹里は一見のびのびすくすく育っているように見えるけど、フラメンコダンサーだった両親はスペインで交通事故死してしまって料亭を経営する祖母に育てられている(祖父はいない)。樹里の両親と一緒の事故で死んでしまったのが海棠の母親で…。

 ひとつだけ、気にかかっていること。第1巻の初めに恵が試合中に転倒して大怪我をします。その直前に樹里は(そのころ樹里は恵のおっかけでした)恵の控え室から海棠が出てくるのを目撃し「お兄さんかな」などと思ってます。この時点で、恵と海棠はまったく接点がないのですが後に海棠が恵に悪意を持つ人物として登場したとき私は「この人が恵のスケート靴に細工をしたに違いない!」と確信を得ました。が、最後までなぜこの時、海棠が恵の控え室から出てきたのか、という謎は明かされないままでした。後に樹里はこの時のことを思い出し二人は兄弟に違いない、という確信を得るのですが…。これは一度槙村さんに尋ねてみたいものです。

 二人が踊る「カルメン」「ロミオとジュリエット」「ファルーカ」、それぞれのダンスシーンが素晴らしい。特に「カルメン」は何パターンも描かれています。衣装もかわいい。実際のフィギュアスケートの試合でも派手なリフトがないためかアイスダンスはペアより地味で、日本人選手も活躍しないためテレビ放映もあまりないんですが、すごくいいです。スケートというよりダンス。これはバレエの国ロシアの独壇場という感じ(今、どうなのかはわかりません。1990年頃の記憶です)。

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