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紙の本
競争社会の現実
2000/07/21 03:28
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投稿者:kazukauz - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の一人、銀二の台詞、「結局、誰も悪党を倒せない。少なくともそれと相対する善なんて代物が悪を倒したりしない。もし悪を葬るものがあるとすればそれはつまりそれ以上の悪…だからおまえが誰かを助けるというか…贔屓(ひいき)したかったら、いっそ駆け上がれ巨悪に!」
単純な勧善懲悪の話に飽きた人に絶対、おすすめの作品。もう一人の主人公の森田鉄雄と銀二が裏社会で活躍する物語。作者が銀二の台詞にこめるメッセージとは、「世の中、平等ではない。「勝つ」人間と「負ける」人間がいるだけだ。結局、「勝つ」人間が金や権力を持つ。人 間の善意や道徳は「負ける」人間の最後のよりどころ」。常に「競争」が要求される現代社会の真実を鋭く突く銀二の台詞は私達に重くよしかかる。そして作品の中には「勝つ」人間になるためのヒントがあり、勝敗を分ける精神状況を見事に描く「勝負」の物語があります。
しかし、常に「競争」が要求される現代社会において生まれながらハンディを持った人もいることも真実である。この作品はその真実にも立ち向かいます。主人公の森田を裏社会から引退させた事件の犯人の最期の台詞、「…差別されたんだ(その後、絶句)」。森田は生まれながらハンディを持った人は競争社会において生まれながら「敗者」になってしまう差別を知り引退を決意します。彼らを救うためには国家が支えていくべきか、一人一人個人が支えていくべき か、はたまた結局、誰かの贔屓(ひいき)によるしかないのでしょうか。
常に「競争」が要求される現代社会において「生きる」とはどういうことなのか?この作品のような「勝負」の精神状況を常に要求されたら人間の精神は参ってしまうだろう。だが常に「競争」は要求され終わりがない。そう割り切らなければなりません。森田の引退により自分も引退を考えていた銀二も最後に割り切ります、「今更、勝ち逃げなどできぬ。それだけはしちゃいけない。俺に残された道は壊滅的敗北を喫し去るか…あるいは勝ち続ける、灰になるまで…」。銀二の決意は固いですが、物語はこの台詞で未完になっていることは現実は本当にツライということなのでしょうか。