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商品説明
美しい鉱物の結晶を思わせる独特の文章と、純粋に幻想的で壮麗なヴィジョンによって描かれる山尾ワールド。「夢の棲む街」「耶路庭国異聞」「ゴーレム」など、みずみずしく、しかも深みのある幻想作品32篇を収録する。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
夢の棲む街 | 9-44 | |
---|---|---|
月蝕 | 45-71 | |
ムーンゲイト | 72-114 |
著者紹介
山尾 悠子
- 略歴
- 〈山尾悠子〉1955年岡山県生まれ。同志社大学卒業。作家。著書に「夢の棲む街」「仮面物語」など。
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紙の本
20年を経て装いもあらたに回帰するみごとな想像=創造の世界。言語の力は未だ衰えてなどいない!
2000/08/21 21:15
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:小沼純一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しく視界から消えていた名が、唐突に、かつてないほどの輝きをもって、かえってきた──そんな印象である。20年以上前になるだろうか、年長の知人に教えてもらって手にした、早川SF文庫『夢の棲む街』の衝撃はなんとも大きかった。あの「名」はどこへ行ってしまったのかと、作品を手にした自らの日々を惜しむことは少なくないが、山尾悠子の名には、そうしたセンチメンタルなおもい以上の欠落感をつねに感じさせられてきた。だからこそ、760ページを超える大冊が、しかも見知らぬ多くの作品をともなってあらわれた驚きは、よろこび以前の酪酊をもたらしてくれることになった。
作品の冒頭だけでも触れてみてほしい。3つばかり引用しよう。
「街の噂の運び屋の一人、〈夢喰い虫〉のバクは、その日も徒労のまま劇場の奈落から這い出し、その途中ひどい立ち眩みを起こした」(『夢の棲む街』)
「地上を襲った終末の大洪水がすでに過去の出来事と化していたその頃、〈宇宙館〉と呼ぶ建物の中に九千九百九十九人の生き残りが住んでいた」(『耶路庭国異聞』)
「ひどい濃霧をかき分けるようにして、その時刻、Gは──人々が〈鴉〉と呼ぶゴムびきの黒い防水外套を嵩張らせながら──店に入っていった」(『ゴーレム』)
読み手はいきなり「物語」の世界にいる。読み手の現実、「ここ」にはないはずのものが、はっきりと立ちあげられる。硬質なものも粘液質のものも、言葉はひとつひとつしっかり構築してゆく。曖昧さは可能なかぎり切り捨てられる。想像力と創造力とを結びつける文字どおりの「力」が、文章を紡いで「もうひとつ」の世界をつくりあげる「力」が、ここにある。もちろん、こうした虚構の世界は苦手だというひとも少なからずいるだろう。好き嫌いは誰にでもある。だが、ひとたびこの山尾悠子の世界の魅力を知ったなら、自らがそれを知っていることを、そこで遊べることの贅沢を思わないではいられない。
収録作は、『夢の棲む街』(7篇)、『耶路庭国異聞』(10篇)、『破壊王』(4篇)、『掌篇集・綴れ織』(10篇)、そして『ゴーレム』。ほかに解題、著作年表、後記を加える。栞には、佐藤亜紀、野阿梓、小谷真里、東雅夫が寄稿。函には、けっして大仰にではなく、横長に、バーン=ジョーンズの絵があしらわれている。
自らの意志によって収録されなかった作品もあるが、ほとんどの作品は単行本未収録。高価な本ではあるが、けっして大枚をはたいても惜しくない。いま現在ほかに手にすることができないからというだけではなく、もしこれらを1冊ずつ単行本にしていたら、すぐにこの程度の値段になってしまうだろう。それに、「山尾悠子世界」を徘徊するものにとって、この大きさは迷宮たる書物を文字どおり体現するに充分なものなのだ。この大冊によって山尾悠子が広く知られ、また読み手が新しい作品を望んで、作家が新しい世界を創造してくれることを──。 (bk1ブックナビゲーター:小沼純一/音楽文化研究・文筆業 2000.08.21)
紙の本
早すぎた幻想小説家。
2004/01/22 09:15
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
年末は阿部和重の『シンセミア』にやられ、年始は山尾悠子の『山尾悠子作品集成』にやられてしまった。
緻密な文体や構成は、完成度が素晴らしく高く、全然古びていない。えらい重たくて、読むのにナンギしたけど。
山尾悠子のことを、てっきり妙齢の作家だと勝手にイメージしていたが、タメ年だった。女性のSF・ファンタジー系作家の草分けとか聞きかじっていたものだから。
なんで、遅い初体験。若い子が、『はっぴいえんど』や『シュガーベイブ』を聞くようなものかな。体験が遅ければ、遅いほど、はまってしまう度合いも強いとかで、ほんと、脊髄までシビれてしまった。
巻末の山尾をリスペクトする人々のレビューというのか、ファンレターの中で、澁澤龍彦や金井美恵子、倉橋由美子やロブ=グリエ、ボルヘスなどなど彼女が感化されたものを取り上げている。
そうそう、ヌーヴォーロマンなんてわけのわからんものを、有り難がって読んでいた。
SFは、舶来ものを少々読んでただけだし、国産ものだと筒井康隆一本勝負だったし。『SFマガジン』も『奇想天外』も見事なまでに読まなかった。
一作選ぶなら、代表作の『夢の棲む街』。これを二十歳そこそこで書き上げるとは。キリコのシュールリアリスティックな絵画の世界へと誘う。凄いとしかいいようがない。今だったら、芥川賞もの。
ファンタジーが、どうも女・子ども(女性のみなさまとお子様方、失礼!)のものであるという昨今の風潮が気に食わない。なら幻想小説ってのは。ファンタジーと幻想小説、こう並列させると、字面からしても、かなり違うよね。けど、中身はおんなじ。
『月蝕』は、数十年前の京都ー彼女は同志社大学出身ーを舞台に書かれていて、ぼくもタイムスリップしてしまった感じ。ジャズ喫茶で、文庫本片手にハイライトくゆらせてえ、みたいな…。別に京都の大学へ通ったわけではないが、なんか当時の空気が行間から伝わってくるのさ。これなんか恩田陸っていっても、通じるかも。
沢渡朔が撮影したモノクロのポートレイトが巻頭に掲載されているが、こりゃまた凛としてお美しい。文学美少女もそうだけど、文学美青年なんていなくなったなあ。流行んないか。
Weblog「うたかたの日々」
http://soneakira.blogtribe.org/
紙の本
結晶化した言葉で構築された異世界のものがたり
2003/01/10 00:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:大坪光男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファンです。
思い出話をひとつ。
その昔、70年代と80年代の境目に黄金時代がありました。
SF雑誌が毎月4誌も発行され、それぞれに新人を募集していた頃。
ある日僕はSFマガジンの女流作家特集で、ゼナ・ヘンダースンに
並んで山尾悠子という名があることを発見しました。
作品の名は「ワンス・アポン・ナ・サマータイム」
架空の街の架空のお話です。
それ以来、毎月発行されるSF雑誌の目次から、異世界の扉をひらく
4文字の呪文を探すようになりました。
絶頂期は破壊王が連載されているころ。
「奇想天外」誌の挿し絵の雰囲気も作品世界にぴったりで、毎月
思う存分作品世界に浸ることができました。
また、初の長編単行本「仮面物語」を手に入れて、装丁の安っぽさに
落胆しつつも奥付の発行日が2月29日であることに感激していました。
願わくは、ここに収録されなかった作品たちが、いつの日か作者の
寵愛を取り戻して、新作の中でキラキラと復活されんことを。