- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.7
- 出版社: 岩波書店
- サイズ:19cm/270p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-00-001552-4
紙の本
南極に暮らす 日本女性初の越冬体験
日本の南極観測史上初めて、越冬隊に参加した二人の女性は、「白い大陸」の男社会の中で何を見、何を体験したのか。極寒と吹雪の中の危険、オーロラの神秘、娯楽にも事欠かない毎日等...
南極に暮らす 日本女性初の越冬体験
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商品説明
日本の南極観測史上初めて、越冬隊に参加した二人の女性は、「白い大陸」の男社会の中で何を見、何を体験したのか。極寒と吹雪の中の危険、オーロラの神秘、娯楽にも事欠かない毎日等、知られざる実情を報告。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
坂野井 和代
- 略歴
- 〈坂野井〉1971年静岡県生まれ。東北大学大学院理学研究科博士課程在籍中。専門ははオーロラ研究。
〈東野〉1970年広島県生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程在籍中。専門は地震学。
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紙の本
遠い南極が手元で姿を現す楽しさ
2000/11/12 00:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読ん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本女性で初めて南極観測隊員として加わった2人、坂野井和代さんと東野陽子さんの手記。
内容としては、女性として越冬をする大変さを扱ったものというより、昭和基地での様子などを間近に知ることができる好著といった方がよいと思う。
年に1回(11月14日)、晴海から南極の昭和基地に向けて、砕氷船「しらせ」が出航することはニュースで知ってはいたのだが、遠い地での出来事という感じがして興味も薄かった。だが、今年の「しらせ」出航のニュースを見る目は、本書を読んだおかげで全く違っていた。「お元気でいってらっしゃいませ!」と言いながらブラウン管に向かって手を振り続けてしまった。
南極観測隊のことについてほとんど知識がなかったのと、タイプが異なる2人の著者が交互に南極体験を綴っていく形式とで、ページをめくる度に驚きと楽しさが満載だった。
坂野井さんはオーロラ観測の為に南極を目指し、東野さんは地震観測のために南極を目指す。
坂野井さんは小学生の頃から南極に憧れて、すべての進路を南極に行くために決定してきた。一方、東野さんは「南米を旅行したい」と思い、「南極に行ったら、南米は帰りに寄って帰ることができる距離」という冗談のような話がきっかけで南極行きを決定した。
坂野井さんは日本にいる頃から登山をしたり、オフロードバイクに乗ったりとかなり活動派だったようだ。一方、東野さんは登山の経験もなく雪のない土地の出身でアウトドア派ではなかったようだ。
また、坂野井さんは夫が前回の越冬隊員であったので、南極での装備の点でも知識がかなりあったようだ。一方、東野さんは何を用意してよいやらわからず、暖かい服とお菓子を大量に用意したそうだ。赤道に近づく「しらせ」の中では暑くて着るものに困ったとか。とても親近感を持った。
南極では、きれいな道路が通っているわけでもないので、結局人力を頼りにする場面がたびたびあるようだ。その点で言えば、女性は男性に比べると非力であり、劣ってしまうのは致し方ない。
だが、違いといえばそれぐらいのことなんだな、と再確認もできた。
「日本女性初」という文字が本の表紙を飾ってはいるが、本書はただただ南極での様子が手元に現れるワクワク感たっぷりの読み物だった。
紙の本
何もかもが「はじめて」の驚き
2000/10/16 21:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東野陽子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家でもない私たちが本を出版するなど分不相応ではないかと何度も悩みました。
しかし、女性が暮らしても不自由をほとんど感じないという現在の昭和基地での生活を伝えることは、「女性初の越冬」というお題目があろうとなかろうと、必要なことだろうと思います。私たちにできることは、少しでも南極や昭和基地での生活の様子が伝わるようにと、自分の見てきたもの、感じたことを正直に書くことだけです。それだけを念頭にいれて、この越冬期を書かせていただきました。
計12章で構成されたこの本は、「南極へ」「昭和基地の夏」「越冬の日々」「オーロラ観測と地震野外観測」、「2度目の夏」「帰国の後に」という6つのテーマを持って、2人がそれぞれ1章づつ書いています。話題の1つ1つは重ならないように調整したものの、似通った内容になるのではないかという不安が最初はありました。しかし、最初に出来上がった原稿の一部を坂野井さんとメール交換し、それは杞憂だったことがすぐにわかりました。同じ場所で同じ時を過ごしてきたのに、二人の生活や感じ方はここまで違うのだろうかと正直に驚くほどです。
二人の違いはまず、第1、2章で浮き彫りにされます。坂野井さんにとっては、「南極での越冬」は高校生からの夢であり、実現できるように努力してきたのに対し、私にとっては、大学院でたまたま興味をもった地震観測点の中の1つでしかなかったということ。そのことによって南極や越冬生活に対する知識への大きな差が生じています。第3、4章から知識量の差は歴然となります。
個人的には、第5、6章との間に最も差を感じました。坂野井さんは「話には聞いていたが、実際に閉鎖社会を体験するということの難しさや楽しさ」を書いています。それに対し、何もかもが「はじめての生活」という驚き、その生活の中で印象に残ったエピソードを私は書いています。また、二人の観測の様子も大きく異なります。坂野井さんが夜勤生活、一人で室内作業をすることが多いのに対し、私は野外で他の隊員たちと一緒に観測。この二人の観測の様子は、同じ昭和基地でも個人の仕事によってこれだけ違う生活になるのだという事実がよく表されています。
全編を通して、私は南極での生活に順応するのが精一杯だったのに対し、坂野井さんは余裕をもって南極を楽しんでいることがわかります。特に、自然の描写などは、時間をかけて観察されている上、彼女の感性の中で美しさがより際立っています。私自身も彼女の目を通して「南極」追体験をし、新たな感動を覚えました。全く意図していなかったこの2人の対称性は読者にとっても、非常に面白いのではないかと思っています。
紙の本
初めての女性越冬隊員二人による南極ルポ
2000/07/10 01:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:三中信宏 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルにまず惹かれる。「南極に暮らす」−−一般人には生涯そういう経験をもつ機会がない。
それだけに、南極越冬隊の日常生活の詳細をレポートした本書は私にとって楽しい本読みのときを与えてくれた。初めての女性越冬隊員として1997年から99年にかけての約1年4ヶ月を昭和基地で過ごした著者らは、昭和基地内外での豊富な体験談、閉ざされた集団の中での個人的感情の起伏、故国にのこされた家族との交流などをたくみに織り交ぜることにより、雪と氷の世界という南極のやせ細ったイメージを鮮やかに肉づけしてくれる。
なによりも、越冬中の基地の中で、隊員どうしのコミュニティーが次第に生成・変化・成熟していくさまは私には印象的だった。
もちろん、著者たちが専門とするオーロラ観測や自身観測といった専門的話題も盛り込まれている。「生活の場所としての南極」−トイレのこと・ゴミ処理・娯楽・食事などなど−を擬似体験させてくれる本書はルポルタージュとして貴重だ。