おやつ泥棒 モンタルバーノ警部 （ハルキ文庫）

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投稿者：キイスミアキ　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　イタリアの国民的作家カミッレーリの人気シリーズ、モンタルバーノ警部もの。日本ではオリジナルと異なる順序での上梓となっているため、前作『モンタルバーノ警部　悲しきバイオリン』は、今回から後の物語となる。
　
　登場人物の役職が違っていたり、主人公の恋人との関係が違うなど、前作と比べて「そうかこうなってたからそうなったのか」と納得しながら読むことができる。シリーズものではあるが、別個の作品としても面白いからこその感想だろう。
　
　この作品は、一貫して神の視点で書かれてるはずだが、微妙に、神が全て知っていうわけではなくなる部分があるところも面白い。イタリア語と日本語の違いなのか、作者の力量が成せる技なのか、どちらなのかはわからないが、少しふわふわとした不思議な浮游感が味わえたようが気がした。ミステリとしての評価は別として、いい小説だということだろう。
　
　主人公モンタルバーノ警部の勤務する警察署の署員で、酷い訛りを持っているのに持ってないと言い張っている、電話交換手カタレの強烈なキャラクターが可笑しい。訛っているから電話交換手としての適性はない──理解できないから──はずなのに、しっかりと自分の仕事を続けている姿が、やっぱり可笑しい。