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紙の本
念仏が伝えた一遍聖人のやさしさ
2007/03/31 14:53
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
一遍聖人は踊り念仏を広めた人物として知られていると思う、少なくとも僕の認識はその程度だった。聖人の興した時宗も、現在では際立って興隆しているという宗派ではないと思う。ただたぶん比較的新しい認識だと思うのだけど、彼の教団に所属した多くの非定住民の中には芸能の才のある者もいて、彼らは室町時代にかけて武家や幕府に接近し、同朋衆、阿弥衆と呼ばれてさらに芸能に磨きをかけた。その中で、猿能楽、茶道、生け花、俳諧といった現代に通じる芸能が生まれ、発展した。ついでに言うと、踊り念仏も現在の盆踊りの源流だという。
だから僕の聖人に対する関心は、そういった芸能を育てる環境の創始者として、どのような人物であったか、取り巻く人々はどういう感情でどういう生活をし、後の芸能発展に繋がる(制度に縛られない自由な?)小社会を形成していったのか、ということだ。
聖人の生涯を伝える伝記として、死後10年して書かれた本書絵伝がある。聖人の特に親しい従者で、弟とも言われる聖戒が中心となって編され、生涯を旅に過した聖人の足跡を辿って、それぞれの地での出来事を絵にして遺したものだ。本文庫版は詞の部分を中心としていて絵の部分の所収はわずかだが、近年では民俗学の貴重な資料ともなっているというそれらの絵は、建物、人々、背景の道々山々もみな精緻で、見事なもの、そこにいた人々の暮らし振りがよく伝わって来るというのは過剰な表現ではない。
詞の部分この100ページほどからも、聖人の生き方、考え方はよく伝わってくる。おそらく人の心理、生理というものを、よく知り抜いている人なのだと思った。人を惹き付ける力がある。一つ寺院に居していれば、周辺の人々をまとめあげた大教団を作ることも出来たカリスマだと(蓮如などのように)。しかし彼は日本全国を旅して回り、その上で念仏の布教に殉じる道を選んだ。結局人は一人で、孤独なのだという、なにかしらの深い諦念があったのだろうか。それでも彼の周りには多くの人々が集まり、彼に帰依した。
公家や武家も集まった。またある旅路で「異類異形」の男7、8人に囲まれ、連れて行かれた。彼らは猟師漁師などで、あるいは腰には得物を下げ、毛皮を身に纏っていたのかもしれない。聖人は彼らのところにも逗留し、念仏を授ける。そのようにして拡大していく教団のありようは、当時の安定した生活基盤を持たない人々に取っての桃源郷めいた社会だったのではないかと想像するする。
古文なので、内容をよく読み取れたとは言えないのだが、僕にとっては深く実り多き読書になった。
紙の本
興味の核心は細部にもあり
2022/04/07 02:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
描かれている上人の行為も
さることながら、背景の事物も
眺めれば眺めるほど極めて興味深く
感じられる作品です。
この絵を堪能するには、文庫本の紙型では、
やや大きさに難があるのが玉に瑕。