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紙の本
江戸時代の宿の実情と変遷を概観する入門書
2001/01/24 16:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sfこと古谷俊一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代の宿についての入門書籍です。江戸時代の宿場の成立・ありかた・建築、旅行者の種類と泊まり方、宿の経営のあり方など、宿に関るいろいろな話題がまとめられています。
題名には江戸のとありますが、これは江戸時代のということでして。良くあるような江戸や東海道だけの話ではなく、上方はむろん、九州や北陸、琉球や蝦夷地などの情報もあり、たいへん興味深いものとなっています。とくに大型の都市内の宿については江戸の宿自体はほとんど出てこないで、上方の史料が中心のようですね。
江戸時代の日本に限らず、宿のあり方、意義というものについて考える上で、たいへん役に立つ内容だと思います。
市場と宿は密接な関係がある、商人宿の庭から発展して市場を生んだ事例もあるあたりを見ますと。宿が商人の荷物も引き受ける場であったというのは、私の意識から抜け落ちていたようで。そういやそうだようなと再認識。宿は都市にも必須であり、商売だけでなく、役所に用のある人間が宿泊するという需要もあるものだ。というあたりも、街道の宿場町の宿についてしか書かれていない本だけを読んでいては、思い当たらないことだと思います。
また、信仰の旅のためにとの村々の対応の産んだ、善根宿(余裕のある人、奉仕の心のある人が家を宿として提供する)から合力宿(村の成因から集めた金で運営される無料宿)、そして旅人立ち入り禁止への推移というのは。無償持ち出しで運営されていたものが、悪意の利用者、コストの負担を理解しない利用者の増大により。負担で倒れたりするインターネットとの類似性を感じてしまいました。
紙の本
旅につきものの旅館にもいろいろある。この本で宿の歴史を読むと一層楽しい旅ができる。
2000/09/09 00:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:井出彰 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今やほとんどといってよいほどの日本人の趣味や余暇の楽しみ方に、旅行が上げられている。しかも、その七割が、江戸時代まではなかなか旅に出られなかった女性であるという。温泉に入り、おいしいものを食べ、美しい風景を楽しむということが、明日へのエネルギーを与えてくれるということなのか。だから、どこどこの地へ行き、どんな旅館に泊るのか、などの観光に関する本が次々と出版され、買われている。
しかし、リゾートホテルからビジネスホテル、隠れ里的旅館から、何百年も続いている旅館まで様々である旅館の、わずか二百年前、三百年前の姿はほとんど知られていない。本書はそんな空白を埋めるために書かれた数少ない本、というより一般向けに書かれたものとしては、はじめての本である。この本を読むことによって、今泊っている宿で示されている、木目細やかな心遣いや独特な作法が、一体時代の積み重ねや、どんな工夫や苦労の上で成り立っているのかが分かり、より一層深みのある旅にもなるだろう。また、横になって読んでいた時代小説やテレビドラマが、ちょっと違った角度から楽しめるようになるかもしれない。
まず、あなたは旅先で必ずといっていいほど本陣跡、脇本陣跡というのを見学したことがあるに違いない。その横の案内板かチラシには、江戸時代の参勤交代のときに何々藩の大名何々氏、およびその一行が宿泊に使っていた処と説明されている。そう、江戸へ通じる御道筋には必ずといっていいほど残されている。明治になって廃藩置県となり一般客を対象としながら、いまだ続いている旅館が沢山ある。創立何百年、とある老舗高級旅館の多くが、これに属する。
もっとも一般庶民の旅館の原型はもっと前に溯れる。木賃宿と呼ばれるもので、六部や巡礼、無宿者などの急場に対応するために設けられた、お助小屋ともいうべき善根宿、合力宿、ぐれ宿などがそれに当る。なお木賃宿の木賃は自炊用に供される薪などの代金で、このころには二食付風呂付などとんでもない話だった。
江戸時代に入るとあちこちに市が盛んとなり、その商人たちの荷物を預かったり売買の場所を提供している内に商人たちの宿泊を面倒みるようになっていった商人宿。幕府に用事のある人たちの逗留をさせた公事(くうじ)宿があった。公事宿は馬喰町や小伝馬町に集中していた。宿駅には飛脚宿や人足宿があったし、川の渡し付近には船宿があった。まだまだ一般町民や農民が自由に旅してよい時代とはほど遠かった。
やがて江戸も中期になると、はじめは抜け参りだった旅が公となり多くの人が伊勢参りや金毘羅参りに繰り出し遊山の旅がそれこそブームとなった。これと共に女性を置く飯盛旅篭が各地に現れたり、末期になると巨大旅館ができ講とよばれる団体客を引き抜いたりするために過剰なほどのサービスや宣伝が行われたり、まるで現代と同じで思わず溜息が出たりする。何ともあさましくも楽しい人間絵図が読み取れる。 (bk1ブックナビゲーター:井出彰/『図書新聞』代表 2000.09.09)