魔弾 (新潮文庫)
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紙の本
処女作にして魅力抜群
2002/06/25 18:34
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投稿者:奥原 朝之 - この投稿者のレビュー一覧を見る
極大射程で一躍有名になった著者の処女作である。
極大射程では著者の持てるだけの銃知識を余すところなく披露した感があったが、それは本作品でも同様である。
ナチスドイツの隠された陰謀を実行するためにコードネーム『ヴァンピーア』と呼ばれる装置が開発される。それは日本語で吸血鬼を意味する。すなわち暗視装置である。世界に先駆けて開発された暗視装置を背負いレップは隠密行動に出る。連合国軍将校はそれを阻止しようとする。ナチスドイツ将校レップと連合国軍将校との頭脳戦プラス肉弾戦という感じである。
主人公にナチスドイツ将校を据えているために最後まで展開が読めない。レップの作戦が上手くいくことはナチスドイツの勝利を意味するからである。ではどのように結末を迎えるのか。
著者独特の映画のような場面の切換えによるストーリー進行は流石である。まるで映画化を意識したような作りになっている。これは他の作品でも同様で、著者の作風である。
レップを追いかける連合国軍将校。隠密作戦を成功させるべく山中行軍を敢行するレップ。レップの目的はなんなのか。何のために暗視装置が必要なのか。誰を狙撃するつもりなのか。最後の最後まで目が離せない展開である。
紙の本
『極大射程』の筆者の原点!!
2000/11/11 23:59
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投稿者:野ウサギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『極大射程』の著者による作品の最新訳。ただし、「訳者あとがき」によると、処女作で、1980年に出版されたものだそうだ。
『極大射程』で感じた思い、すなわち
1 銃に対する驚嘆すべき知識
2 ストーリー展開のうまさ
3 アッという結末
は本書でも、まったくそのままあてはまる。
主人公は、7時間で340人のロシア兵を射殺した戦歴をもつナチの伝説的スナイパー。敗戦必死の状況で、親衛隊は帝国崩壊後に備えた極秘任務を彼に託す。偶然、陰謀の存在に気づいた戦略事務局に勤めるアメリカ人大尉は、はたしてその陰謀を究明・阻止できるか——が、ストーリーの大略。
主人公がダーティー・ヒーローであり、また、そのような陰謀が成功したはずがないという思い(もし成功していたら、その後の歴史が変わっていたはず)もあり、話としてはよくできているが、全面的には感情移入できない。したがって『極大射程』ほどは楽しめないが、それでも読み始めたらやめられず、一気に読ませられる。当時のユダヤ人の苦しみについての具体的描写も興味深い。
ただ『極大射程』を読んでいたとき、後半のストーリー展開の鍵となった女性に色気がまったく感じられず、なんともしらけた感じがしたが、その思いは本書のほうがいっそう強い。著者(スティーブン・ハンター)は登場人物に存在感を与えることが苦手らしく、特に女性の描写がへたである。狂言回し的な役割を与えられているイギリス人少佐やアメリカ人副官の奥のなさにはじれったくなるが、それにも増して、主人公的な二人に用意されている美人女性のどちらからも、ゾクゾクした感じがまったく伝わってこないのにはあきれてしまう。処女作には作家の持つ資質がすべて現れるというが、この作家には上記1〜3の特徴に加えて、
4 人物造型、特に女性の造型がへたである
という項目を付け加える必要がありそうだ。
もっとも、デビュー13年後の『極大射程』で不満だったのは女性の扱いだけで、狂言回しをしたFBI捜査官にはそれなりの存在感があった。作家も確実に進歩しているということか。
紙の本
ミステリーコーナーより
2001/01/18 20:09
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投稿者:香山二三郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハンターといえば、名狙撃手ボブ・リー・スワガー・シリーズ。「極大射程」(新潮文庫)以後、軍事国家、銃器社会としての現代アメリカの側面をえぐり出したこのシリーズは日本でも絶賛を受けたが、本書はその原点ともいうべき戦争もの暗殺活劇である。
第2次大戦末期、ひとりのユダヤ人がドイツのアウシュヴィッツ収容所から脱走した。その頃、米陸軍戦略事務局のリーツ大尉はナチスの出荷記録から銃器の不審な動きを突き止め、何らかの暗殺計画が進行していることを察知する。やがて脱走したユダヤ人から、親衛隊の伝説的「狙撃の名手」レップ中佐が「吸血鬼」という恐るべき新兵器の実験をしていたという情報がもたらされるが……。
一見「ジャッカルの日」的な正統的暗殺サスペンスだが、ボブ・リーを髣髴させるレップの超人的キャラと銃器へのこだわりぶりはやはりこの著者ならでは。ファンならずとも読み逃せないハンターのデビュー長編だ。