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紙の本
湯めぐりのふりして歌人の世界を透視する
2000/12/14 15:53
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投稿者:山田登世子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
道後温泉から登別温泉まで、日本各地の温泉場をめぐりながら、それぞれの湯を愛した文人を語ってゆく。子規から牧水、寺山修司まで、二〇人の歌人がとりあげられている。どの温泉から読んでも、どの文人から読んでもいい。その意味では実に読みやすい本だが、気楽な温泉エッセイと思ったら大ちがい。入りやすいのは事実だけれど、温泉という断片から大胆に相手の本質にせまってゆく手腕はすごい。
たとえば「晶子と箱根」。『みだれ髪』の歌人が伊香保温泉の湯船にひろがる黒髪を歌うのはいかにも晶子らしいが、そうした晶子の歌の世界が実は「日記」であり、同時代の証言(ノンフィクション)を意図してしていたというくだりなど、眼をあらわれるように新鮮だ。その斬新さは「かの子と熱海」も同じ。小説家かの子の誕生が生々しく見えてくる。
つまりはこの新書、やさしい白湯のように見えながら、こわいほどよく効く湯なのだ。最後の「修司と恐山」など、ただ慄然とする。おそるべし。