あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
「こころの哲学」ともいうべき良書!
2016/07/22 12:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、こころの働きについて脳との関係を解き明かした画期的な書です。いわば、「こころの哲学書」とでも言える書だと思います。現代の脳科学の進化を踏まえて、心の働きと脳との関係を見事に解説してくれています。当然と思い込んでいたことが実は、特殊な脳と心の働きに関係していたり、全く新しい視点からの洞察などもあり、読み応えのある一冊です。
紙の本
脳だけでは、演繹的思考は生まれないという驚くべき指摘
2001/07/09 14:12
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
『考える脳・考えない脳』という本書の題名を見た際には、「『話を聞かない男、地図が読めない女』の類似本?」といった印象をもった。つまり、脳の個別部位の機能論のような中身の本かと思ったのである。しかし、良し悪しはともかく、本書はそのような内容ではなく、もっと高踏的・哲学的な内容である。
本書のキーワードは、「コネクショニズム」である。つまり、「脳は、構文論的構造を欠くニューロン群の興奮パターンの変形装置」だというのである。本書では、構文論的思考=演繹的思考とされており、人間は表面的には、演繹的に思考しているように見えるが、実は、人間の思考=心の動きは、そういうものではなく、コネクショニズム、個々の神経細胞への入力と出力が、試行錯誤によって修正される仕組みによって、身体を動かしているとの論が展開されている。
さらに、大事な指摘は、最終章の「脳はそれだけではなく、そのような変形をつうじて、外部の環境のなかに外的表象を作り出し、それを操作することもできます。とくに、発話のような構文論的構造をもつ外的表象を作り出し、それをその構造にもとづいて操作することもできます。脳はこのようにして構文論的構造にもとづく思考を生み出す」という所だ。つまり、脳とは、脳自体が演繹的に思考しているのではなく、外部環境との相互作用をすることによって、構文論的構造を「も」外的表象として創り出すことができるということなのである。
本書では、コネクショニズムについて多く紙幅が割かれており、外部環境と脳の関係についての論述が必ずしも十全になされているとは言い難い。しかし、この「脳と外部環境の相互作用」によってこそ、構文論的構造が創り出されるという指摘は、人間の思考、そして人間の人格の価値がどこに存するのかという極めて深刻な問題へ、新しいアプローチをもたらすものであり、極めて興味深い。著者には、このテーマを軸に、再度本格的な著作を上梓されることを期待したい。
紙の本
良書
2018/05/04 22:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代哲学での一大勢力になったこころの哲学の導入としては格好の内容で、わかりやすく要領もいいと思うのでぜひ存続してほしいが、この作者のほかの書は読んだことがない。新書としては分量も適当で良心的なので何らかの形で復活してくれれば手に入りやるくなると思う。
紙の本
心の哲学の最先端の思索を体験させる啓蒙書
2001/02/03 20:39
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまで分析哲学系の書物にはあまり親しめなかった。たとえばクリプキの『ウィトゲンシュタインのパラドックス』。面白くて巨大な刺激を受け、私がこれまでに読みえた哲学書のベストテンに入ることは間違いないのだが、一頁進むごとにパソコンのOSを入れ替えなければならないといった感じで、読み進めるのにとても難渋した記憶がある。だから、名著と評判の高い『心の現代哲学』(勁草書房)はいつか読まねばと思いつつ、なかなか手が着けられなかった。その点、本書は「啓蒙書」としての構成が素晴らしく、初学者への配慮も行き届いている。心の哲学の最先端の思索を堪能した。
まず、心の働きと脳の働きは同じだとする心身一元論の妥当性を短い文章でもって明らかにし(はじめに)、それでは「心の働きがいかにして脳の働きと同じでありうるか」という「心のモデル」をめぐる二つの学説、古典的計算主義(第1章)とコネクショニズム(第2章)のそれぞれの主張と相互の異同をきわめて要領よく紹介し、次いで直観・無意識のメカニズム(第3章)とフレーム問題(第4章)を題材として、知覚や直観、スキーマの形成といった心の働きを説明する学説としてはコネクショニズムの方がふさわしいことを説得力ある叙述でもって示唆し、しかし最終章で、心は「脳と身体と環境からなるひとつの大きなシステム」なのであって、「そのサブシステムである脳はコネクショニストシステムであり、また古典的計算主義システムのほうは主として環境に足場をおくシステムだという見方」を提示する。
思考をめぐる緻密かつスリリングな議論を経て、脳は「構文論的構造を欠くニューロン群の興奮パターンの変形装置」なのだが、それだけではなく、脳は「そのような変形をつうじて、外部の環境のなかに外的表象を作り出し、それを操作することもできる」、つまり「構文論的構造をもつ表象の操作としての思考は、この[脳と身体と環境からなる]大きなシステム全体によって産み出される」と結論づける最終章が本書のハイライトで、実は私は本章をまず最初に読んで興奮した。