紙の本
懷疑主義のすゝめ−暗闇を照す一本の蝋燭
2004/02/22 23:59
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投稿者:吉田松陰 - この投稿者のレビュー一覧を見る
うちの會社で曾て或る製品の開發責任者が全體會議の壇上「百匹目のサル」の話を持ち出し「職場を良い【氣】で滿たさう」などと云ふ訓示を垂れてをつた。出來上がつた製品は缺陷品で數百億と云ふ莫大な赤字を出し、遂に部門ごと賣却されてしまつた。
然し本書を讀むと亞米利加に比べたら日本はまだマシと云ふ氣がする。有りもしない兒童虐待で父親が二十年間も牢獄に入れられたなどと云ふ話は日本では聞いた事がない。此の違ひは宗教觀の違ひから來るのではないかと云ふ氣がする。本書を讀めば判るやうに亞米利加人の妄想・幻視はキリスト教的世界觀から來る物が實に多い。其の點日本人、少なくとも今の日本人は信心が薄いので助かつてゐる部分があると思ふ。勿論新興宗教に騙される人は後を絶たないが、故長岡鉄男が言つてゐたやうに「すべての宗教はインチキ」だと割切つてしまふだけの智慧が日本人にはあると思ふ。
本書は「智慧」ではなく「科學的思考」で似而非科學に騙されないための教へを著したカール・セーガンの此の分野に於る集大成であり遺作でもある。必讀!
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「科学者の良心」の遺言
2002/12/16 00:28
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投稿者:ドラゴン - この投稿者のレビュー一覧を見る
「科学者の良心」とよばれた故カール・セーガンの残した最後のエッセイ集です。
最近のテレビ番組では超常現象などを扱ったものが目立ち、「理科離れ」などの現象が指摘されていますが、そんなときだからこそ読んでほしい本です。
友人から「じゃあどうしてUFOじゃないと言えるの?」とか、「これが超能力じゃないとしたらどうやって科学で説明するの?」といった質問を受けたとき、超常現象をあつかったテレビ番組にちょっとでも疑問をもったとき、ぜひこの本を開いて彼が自らの死を前にしてつづったエッセイを読んでみてください。
ユーモアあり、教養あり、皮肉あり…そして何よりも強く感じるのは彼の科学者としてのあふれる使命感、正義感です。研究に没頭するだけではなく、その外に目を向け、真剣に考え続けた律儀で心優しい彼の姿が見えかくれします。
そしてこの本を読み終えたら今度は、この本で彼が必死に伝えようとした、科学的に考えるという姿勢をフルに使って、身の回りの現象について考えてみてください。
それこそが「科学する喜び」であり、科学者カール・セーガンが生涯をささげたものなのです。
紙の本
「科学では割り切れない」ことは本当にあるのか?
2001/12/20 12:08
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投稿者:須崎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宇宙人による誘拐、超能力、テレパシー…。世にはびこる数々の似非科学を一つ一つ論破し、科学する心があれば惑わされることはないし、科学こそ人類の未来を担うものだと説く、渾身のメッセージ。
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“The Demon-Haunted World (Science as a Candle in the Dark”が原題。どうしてこんな酷い邦題になっちゃうのか。上巻ではUFO、宇宙人、魔女狩り、宗教などが、如何に不条理であるかを例証して行く。
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「科学界の良心」こと、カール・セーガン博士の著作。彼の死は本当に早すぎました。
学校での勉強が嫌いだった人、科学と聞くと脳にアレルギーが出る、という人にこそ読んでもらいたい一冊。擬似科学批判の本、というよりは、むしろ勉強=教育が、どれほど大切かということを説いた本です。
「科学とはなんなのか」
「科学で何ができるのか」
「そして、科学には何ができないのか」。
こうした事共が明確に書かれて、説明されています。また同時に「人はなぜ信じてしまうのか」「正しい知識、冷静な判断、批判的思考を欠いてしまうのか」ということも。
第1章「いちばん貴重なもの」だけでも、とりあえず、立ち読みでもいいから読んでおくべき。
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「宇宙人による誘拐」や「セラピー」や「UFO」といった話を素朴な論理的・科学的な視点で読み解いていくエッセー。「懐疑の精神」と「人間の弱さ・愚かさの自覚」が大切だと教えてくれる。
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科学的考え方が良くわかります。
「世の中に不思議なことなどないんだよ」という京極堂のお言葉を思い出しました。
人が勝手に「不思議」と思うから不思議なだけなんですね。
不思議のせいにして人をだます人は許せません。
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なぜ、ということの回答を求める本ではなかった点で想像していたものとは違っていた。
だが科学に向き合う態度や科学をどう捉えればよいかといった問題を考えるのに有用な言葉が多くある。
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著者の主張はまったくごもっともであり、我々が普段そう思いたいと感じている多くの事実は現実とは厳密には異なるものであり、さらなる科学的思考のもとに精査されるべきものなのだということを教えてくれる。
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図書館で借りたのだけど、
ぜひ購入して枕元に常備し気が向いたときに2度・3度と繰り返し読みたい。
1回読んだだけではわしの低性能な頭に入りきらない高度な内容だし、
科学・懐疑主義の重要性を日夜じっくりと考えたい。
しかし、残念ながらこの本は絶版になっているそうだ。
ゆとり教育の弊害なのかどうかわからないが、
日本の子供たちの理数系離れが酷いときく。
最近流行りのあやしいスピリチュアル系、占い本、宗教本などよりも、
こちらのほうがはるかに教育上好ましく価値があると断言できる。
『オー○の○』とか細○数○が出る番組がいかに嘘っぱちかよくわかった。
「トンデモ話検出キット」はとても役に立つ。
相関関係と因果関係を混同したトンデモ話に気をつけなければとハっとさせられた。
自分の学生時代を思い出してみた。
カール・セーガン博士のテレビ番組『コスモス』や彼の著作によって、
科学や天文学に興味をもつようになった。
天文物理学の道に進みたいとさえ思った。
しかし、高校1年のときすでに数学についていけなくなってしまった。
あとは文系街道まっしぐら。
教師は公式や法則を次々と教える(詰め込む)のだが、
それらが、今後の人生や世の中にどう役に立っていくのかを教えてくれた人は皆無だった。
生徒が興味をもつような授業を教師に期待するのは酷なのだろうか?
もし、高校時代の数学や物理の先生がカール・セーガン博士だったら、
目を輝かせてかじりつくように授業を受けることができただろうな。
ないものねだりは充分承知だけれども。
「学校教育は生徒に数学と英語のコンプレックスを植えつけるためにある」
とどこかで読んだことがある。
幸い英語に関しては大丈夫だったけれど、
数学に関してはたっぷりとコンプレックスを植えつけられたなぁ(遠い目)。
こうやって子供たちから理数系に興味を失わせる教育システムは、
日本の将来にとって非常にヤバいのではないかと心配になってくるのである。
こういう世の中だからこそ、
カール・セーガン博士の著作はもっとたくさん読まれて欲しいし、
科学に興味を持つ人がひとりでも増えてくれればと願わずにはいられない。
以上は上下巻とも読んだ感想です。
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ダン・ブラウンにヤバいニセ科学(水からの伝言とか)が出てきてショックを受けた家人が,「カール・セーガンを読まなきゃ」とのことで初セーガン。
翻訳は青木薫さんだったのか…!まず下巻のあとがきを読むがとても読ませる文章でしばし感じ入る。
カール・セーガンもかつてマーチン・ガードナー『奇妙な論理』を読んで「目を開かれた」という。
いささか古すぎる『奇妙な論理』に比べてこちらは地下鉄サリンの直後と比較的最近なこともあって読みやすい。訳者の青木薫さんのおかげも大きいのだろう。
“レーガン大統領は、第二次大戦中ずっとハリウッドで過ごしたにもかかわらず、ナチの強制収容所から人々を解放したときの手柄話をいきいきと語ったものだった。映画の世界に生きたレーガン氏は、自分が見た映画と自分の現実とを混同していたのだろう”260頁
“政治、軍事、科学、宗教の分野で指導的立場にある人が、事実と作り話の区別をつけられないとしたら、大変なことになるのは想像に難くない”261頁
ほんとに危ういなあ,と思う。というか,こんな状態だったのによく人類は全面核戦争で滅びなかったものだ…。
亡くなった両親に語りかける夢の話で始まる第十二章。本書冒頭も両親の話で始まるけど,じんときた。
亡くなった身近な人を懐かしみ個人的に語りかけることと,その気持ちに寄り添うと称して死後の世界等のまやかしを広め,人々から金を搾り取ることとは全然別だよね。
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まさに啓蒙の書。
ただ、凡人の私には言える。人はなぜエセ科学を信じるのか?それは信じたいからだ。
理論や事実ではなく自分の信じたいものを信じたいから、蝋燭の火に照らされた自分の影を怖がっていたいから、
考えない快楽に身を委ねていたいからだ。
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長編小説を読む息抜きに、一章ずつ読もうと考えていたが、面白さにつられて、元々読んでいた本の方が脇に回った。十代のうちに出会っていたら進路の指標になり得たかも知れない。
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科学は絶対ではないが、最善を導く手段である。科学的思考の根幹は批判的精神。示唆に富んでいて、とても勉強になる一冊。