紙の本
成熟した大人の態度とは、毒の効用を理解すること
2000/11/28 18:41
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投稿者:ナリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日々、目先の事柄に追われるなか、著者はいつも大きな視点を与えてくれる。
国際情報誌「フォーサイト」(年間購読制なので書店では立ち読みできない)に記載されたコラムを集めたもので、どこからでも気軽に読めるが、単なる読み物ではない。過去を知ることで、自分の置かれている状況を客観的に認識することができ、自分が創り出した「困難」の大半を占める精神的なダメージを和らげてくれる。
この著者については、あれこれ説明するよりも実際に読んでもらうしかない。特に、困難に押し潰されそうになった時、精神安定剤として読まれることをお勧めする。そして、時間を経て読み直す度に、新たな発見をすることを保証する。
紙の本
あの塩野七生が、中田英寿について書いている、もうそれだけで私はメロメロ。ヒデさまヒデさま、七生が通る
2003/03/17 20:25
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
月曜日の朝は、何よりセリエA、なかでも中田英寿の試合結果のニュースを見るのが私の楽しみ。今日も、久しぶりに技ありフェイント・シュートでゴールを決めてくれた。そんな私にはあの塩野七生が、サッカーの中田英寿のことについて書いている、それだけで七生さま、と嬉しくてはしゃぎたくなる。『ローマ人の物語』を書き続ける塩野と中田の取り合わせ、一体何が書かれているのだろう、軽い気持ちで読み始めたが、これが予想以上に面白い。その筆はイタリアの政治から日本のそれへ。マキャベリからダイアナ妃までと縦横無人、融通無碍。中田のスルーパスみたいに、剛直に世界を切り裂く。
小渕元総理がイタリアを訪れた時のこと。中田英寿が出る予定の試合会場に足を運ばず、お付きの人間とポンペイ見物をしていたことについて、「もし、会場に足を運んでいたら、イタリア人はもっと小渕さんに注目したはず」と、その選択の愚に言及する。イタリア共産党への賛歌は以前からのものだけれど、それらを越える政治の渦みたいな部分にも触れている。
塩野のカエサル好きの理由が、よくわかる一文もある。「どれほど悪い事例とされていることでも、そもそも動機は善意によるものである」というカエサルの言葉を引き、動機がなぜ悪い結果を生んだかの探求こそが重要という意見に、再び眼から鱗。動機ばかりを考えていることの限界を指摘された感じがする。
フジモリ大統領とペルーの人質事件、王室の現代に於ける存在理由。残り少ない人生の中で、ローマ人の物語を書き上げるために帰国をすら中止する部分にも頭が下がる。そしてサッカー。中田の活躍に思わず新聞を買ってしまうことから、サッカーの代表監督への評価。そして様々な日本の政界への提言。塩野の作品は大半は読んだつもりだけれど、作家だがこれほどに自分を見せたのは、『ルネサンス著作集』巻末の対談を除けば初めてだろう。それには彼女の年齢が関係しているのかもしれない。もう一度ローマ人の物語を全巻読み直し、特にカエサルの巻は落ち着いて読みたいと思う。短い文の切れ味に感心。
紙の本
ローマの街角から
2001/11/10 11:38
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投稿者:333 - この投稿者のレビュー一覧を見る
国際情報誌「フォーサイト」に連載されたエッセイをまとめたもの。塩野七生さん独特の視点で物事が解釈されている。それを、どうとるかは読者しだいだが、そこにまた楽しみがある。
塩野さんはイタリアに住んでいて、この本を読んでいるとずいぶんイタリアの価値観に出会う。特にローマの皇帝なんかによく出会う。これも塩野さんの本を読むときの一つの楽しみなのかもしれない。
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塩野七海のエッセー集。とでもいうのか。ローマの歴史学者なだけあって、その視点から現代の問題に切り込んでいる。政治問題から、宗教、外交、スポーツ、精神論とかもあるかな。とにかく塩野七海の見識の深さに恐れ入った。
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(2004.05.03読了)(2004.04.10購入)
国際情報誌「フォーサイト」に、1994年5月から1999年12月まで掲載したコラムを集めたもの。「ローマ人の物語」を執筆中の頭に浮かんできた想いを書き連ねたもの。
●「有事」的頭脳 1995年2月
神戸の地震についての感想
第一に優先さるべきは、死者の埋葬と負傷者の治療と被災者への対処だろう。
第二は、リスクの分散を真剣に考えるべき、ということ。
第三は、指揮系統には平時用と緊急時用の二種がある。いち早く機能したのが、山口組とダイエーであったと聴いた。
第四は、情報というものは、その重要さに気づく人に入ってこなければ豚に真珠なのではないか。
●一神教の「影」 1995年6月
古代ローマを勉強していると、人類にとっての諸悪の根源は一神教ではなかったか、と思うようになってくる。(イラクのイスラム教徒、イスラエルのユダヤ教徒、アメリカのキリスト教徒、皆一神教)
イエスは、人は皆平等だ、といった。より正確には、人は皆、社会に占める立場の如何に関わらず信ずる神の前には平等である、といったのである。信ずる神が違えば、又は信ずる神さえ持たない人とは、平等ではないということだ。(新大陸征服の時には、キリスト教徒でなければ人間では無いとさえ言った。)
啓蒙思想によって始めて、社会に占める地位にも関係なく、人は皆平等である、となったのである。キリスト教の下でも生き続けていた奴隷制度が、完全に廃止になったのもこの時代からであった。
自由、平等、博愛と日本では訳した。博愛は誤訳で、同志愛か、友愛と訳すべきである。一神教の伝統からすると志を共にする人々の間での愛であって、ともにしない人々は対象外なのである。
●動機、について 1995年9月
「どれほど悪い事例とされていることでも、そもそもの動機は善意によるものであった」ユリウス・カエサルの言葉。
人類は何故性懲りも無く同じ誤りを繰り返すのか、動機を重視するからである。問題は、善意の動機が何故悪い結果に繋がってしまうか、である。善意の動機が悪い結果に繋がる過程への注意を怠ってしまうからである。
●外交と外政 1996年10月
ディプロマシーは、「外交」ではなく、「外政」と訳すべきだった。外国と交わることよりも、外国との間で政治することのほうをより強く認識させるために。
●8月15日に寄せて 1997年8月
古代ローマの軍隊と日本の軍隊を比較してみるために山本七平の本を読みつつあるという。「私の中の日本軍」「ある異常体験者の偏見」「一下級将校の見た帝国陸軍」の三作。
日本軍と古代ローマ軍はまったく反対のことをしている。
フィリピンに50万以上もの兵士を送り込んで、補給は保障できないから必要品は現地調達せよ。ローマ軍の基本方針は本国からの補給。
古代のローマ軍は玉砕戦法に無縁だった。最少の犠牲で最大の戦果を得る。
カエサルは、冷静に敵と見方の現状を述べた最後に、兵士一人一人の精神力ならばわれわれのほうが優れていた、と「ガリア戦記」に書いた。精神力という不確定要素は、他の諸々の確定要素の後に来る。日本軍では「精神力」は最初に来る。
●その他
日本の政治に対する提言、イタリアの政治状況、サッカーのこと、イタリアの隣国アルバニアのこと、等いろいろ述べている。
☆塩野七生さんの本(既読)
「ロードス島攻防記」塩野七生著、新潮文庫、1991.05.25
「レパントの海戦」塩野七生著、新潮文庫、1991.06.25
「男の肖像」塩野七生著、文春文庫、1992.06.10
「男たちへ」塩野七生著、文春文庫、1993.02.10
「緋色のヴェネツィア」塩野七生著、朝日文芸文庫、1993.07.01
「銀色のフィレンツェ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1993.11.01
「黄金のローマ」塩野七生著、朝日文芸文庫、1995.01.01
「ローマ人への20の質問」塩野七生著、文春新書、2000.01.20
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大学生以上で歴史の好きな人は是非。
欧州についての予備知識があった方が良いと思います。
正直言って、?な部分もかなりありました(^^;
けれど、歯に衣着せず、ズバッと一刀両断、読んでいてスッキリと胸のすく思いをなんどもしました。
詳しくは、引用部分などをご覧ください。
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歴史は教えている。優れた人物とは、不測の事態への対処ができた人であったということを。
不景気とは好景気を経験できたものしか襲わない。失ったものを数え上げるよりも、残ったものを思い起こすこと。
山本七平 ある異常体験者の偏見、一下級将校のみた帝国陸軍、私の中の日本軍
冷徹で性格な調査こそが、同じ誤りを繰り返すことから救う唯一の方法
亡国の悲劇というのは人材がいないがゆえの悲劇ではなく、人材を活用するメカニズムが機能しなくなるがゆえの悲劇であるということだ。
外国語を道具を手にする前に習得すべきこと 一般教養、自らの言に責任をもつ習慣、完璧な母国語の習得 これができないと外国語を話すサルになる
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どうして、どうしてこう、塩野さんってスーパー上から目線なんだろう!もういかんともしがたいレベルで上から目線!絶対友達になりたくない!同じクラスでもすげぇイヤ!でもそこが好き!たっまんねぇ!
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書かれている時事問題が、時代遅れであることは否めないが、
そっくりそのまま、現在の日本にも当てはまることが多いところが、
いやはやなんとも、、、、。
時折出現する、塩野さん的なきらりと光る一言が楽しい。
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ローマの中心街に住む著者が遠くから見た日本の動きについて、客観的に記述。カエサルへの思い入れ、マキャベリへの心酔、100%病の完全主義であるがゆえに危機感を募らせ、暗い気持ちになる日本への皮肉(イタリアや諸外国では日本もやっと我々並になったという印象だそうですが・・・)。しかし、著者が日本を好きなことはよく伝わってきます。小淵首相が訪問した際に中田の出るサッカー・ゲームの観戦にいかず、ポンペイ観光に行ったために、現地のマスコミが報道しなかった、なるほど、と楽しめました。
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図書館の本
内容(「BOOK」データベースより)
これは、日本の友人へ送る手紙です。『ローマ人の物語』の著者が贈る、発想を転換するための65章。日本の政治家への提言からサッカーの話題まで、知的刺激満載のエッセイ集。
初塩野七生。
10年前以上のエッセイ。なので時代を思い出しながらも読んでみた。
憂うことは今もこの本が描かれた時代も同じ。
そして改善の兆しは見えている場所が変わってきたのかもと思う。
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これは、1994年~1999年にかけて『フォーサイト』に連載されていたエッセイを集めたもの。この時期は、まさしく筆者が大作『ローマ人の物語』のシリーズを執筆していた当時だ。内容的には、史実を踏まえた上で、それを綿密に考証し、さらに想像力を働かせて書く、そういう歴史小説家として、身はローマの地にありながら、遠く日本の現状を、時には憂えたり、また時には、ローマの施政に鑑みてかくあるべしと激励したりといったもの。時事性が強いので、ややインパクトは弱くなったものの、ローマ時代も今も変わらない普遍性もあるようだ。
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1994年から1999年にフォーサイトに掲載されたコラム集。今から15年以上も前の内容なのではあるが、現代にも十分通じる問題のようにも感じる一冊。
通常のエッセイよりはかなり「政治」に寄っているため、タイトル買いすると若干とっつきは悪いかも。。。(2010.8)