「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
貞淑な妻の幼い娘への殺意。休職し、ストレス・ケア・センターに通う男性。社会復帰病棟で出会った男女など、日常から少しはみ出てしまった人々を描く、心に傷を持つ男と女の、切なく狂おしいサイコ・ロマン。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
とりあえず、愛 | 5-74 | |
---|---|---|
うつろな恋人 | 75-166 | |
やすらぎの香り | 167-238 |
著者紹介
天童 荒太
- 略歴
- 〈天童荒太〉1960年愛媛県生まれ。「白の家族」で野性時代新人文学賞、「孤独の歌声」で日本推理サスペンス大賞優秀作、「永遠の仔」で推理作家協会賞を受賞。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
あふれるほどの…
2000/12/11 09:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Be - この投稿者のレビュー一覧を見る
「あふれた愛」というタイトルにあるように、純粋すぎる愛をあふれるほどに持った人々が登場する4つのストーリーである。そのストーリーはどれもが哀しい。あふれてしまった愛は、彼ら自身を傷つける刃となり彼らの心を傷つけていく。それでも、人々を愛することをやめることなく生きていこうとする人々の姿に本当の意味で純粋なものを見た気がする。彼らを見つめる著者の暖かな視線も感じられる。この本には、現代人と呼ばれる私達が忘れてしまったものがあると断言できる。
紙の本
何度見直しても「ありふれた愛」って読めちゃうんだよね。どんなに捩れたものでも、愛はやっぱり「ありふれている」、それがとっても自然な気がするね
2003/04/15 21:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
天童荒太の『永遠の仔』は、ぼろぼろの姿にはなったけれど、やっと図書館の書架に落ち着くようになってきた。その天童が書いた、愛に係わる話ばかりを集めた、直木賞の候補作にもなった短編集。愛の話といっても、健全で幸せでというのではなく、翳りの部分が山本文緒の『プラナリア』を思わせる、ちょっとダークな感じが溢れてる。
自分の娘に殺意を抱いてしまった妻を見つめる夫「とりあえず愛」。病んだ男がストレス・ケアセンターで出会った少女に思いをよせる、その行き着く先は「ふつうな恋人」。ごく普通の人間が陥ってしまう心の病、おなじ悩みを抱いた二人が支え合う「やすらぎの香り」。店で客の死に出会ったコンビニで働く少年の心の動き「失われゆく君に」。
屈折し、不透明で、うざったいとしか言いようのない男と女。どれ一つとして、すっきり腑に落ちることはない。それでいて、どの話からも「今」が立ちのぼる。私と彼らの間には、紙切れ一枚ほどの違いしかない。それを感じられない人たちは、今、自分たちのまわりで起きている様々な事件の本当の姿を見ることはない。カウンセリング・ルームで読んでいたら、カウンセラーの友人が「それ、今リクエストしているところ」言っていた。
私はこの本が好きだ。むしろ『永遠の仔』よりも高く評価したいくらいだ。弱点を上げろと言われれば、山本文緒という強敵が似た話を書いているということだけ。そういえば、天童の本領が発揮された『家族狩り』の世界にも、桐野夏生と高村薫という好敵手がいる。誰も世界標準の作家ばかり、本当にこの世代は頼もしい。
紙の本
『永遠の仔』でコップからあふれてしまったものが『あふれた愛』となった
2001/09/07 10:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読ん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『とりあえず、愛』『うつろな恋人』『やすらぎの香り』『喪われゆく君に』の4編から成る短編集。著者のあとがきで「或る長編の執筆過程から新たに浮かんだ素材やテーマを、違う形で表現したいという欲求から生まれました。」とあるように、あの『永遠の仔』の執筆を通して生まれ出た短編集ということらしい。
読んで納得。4編すべて底に流れているものは『永遠の仔』のものと同じだと思った。だから、『永遠の仔』を読んで◎だった人は短編集『あふれた愛』を読んでも◎だと思う。短編集だけれど、『永遠の仔』を読んで感じた重苦しさ、せつなさ、人に対するいとおしさは同じように心にわき上がってきた。
『とりあえず、愛』では、育児ノイローゼになった母親を扱う。『うつろな恋人』では、管理職となりバリバリ働く男性が、働き過ぎからくる不安神経症と診断されて、その入院生活を描いたもの。『やすらぎの香り』は、精神科に入院中に知り合った若い男女が、退院後寄り添うように社会生活を歩んでいくというガラス細工のようなお話。『喪われゆく君に』は、やりたいことが見つからない男の子が、バイト先のコンビニで、突然死の男性を目の前で見てから自分らしくない行動をとりながらも自分らしさを発見していく様子を描く。
ある意味「しみったれた話」ばかりである。しかし、どうして私はここまでグイグイ引き込まれて読むのだろうか? と考えた時、お気楽にノホホンとした性格の自分の中にもほんの一部「ギリギリで立っている」という面も確かにあるからだろうと思った。そして、天童荒太が描く世界は、私の「ギリギリで立っている」部分をやさしく包み込んでくれて安心感をもたらしてくれるものらしい。
次回作はいったいどんなものになるのだろうか? きっぱりと路線変更するのか、あるいはこの路線で突っ走るのか? 興味のつきないところである。