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収録作品一覧
梅の蕾 | 9-32 | |
---|---|---|
青い星 | 33-54 | |
ジングルベル | 55-80 |
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紙の本
短編の面白さを教えてくれる傑作集
2006/09/24 23:18
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
惜しくも最近亡くなった吉村昭の短編小説集である。bk1でも書評の特集が行われている。私もこれまでに『関東大震災』と『高熱隧道』を読んだことがあったが、2編ともドキュメントに近いものであった。しかし、本書は短編小説集である。吉村氏の短編集は個性がある。何気ない生活のひとコマを切り取り、それを淡々と描写しているようだ。こう書くと、退屈な短編と思われるかもしれないが、けっしてそうではない。
切り取ったところを淡々と描写しているということは、切り取った場面が鮮やかであり、読者に何かを感じさせるところである。そうでなければ、起承転結の結が欠けている小説になってしまう。一見するとそう感じることもある。せっかくのクライマックスなのだからもう少しこの後を描いて、読者を落ち着かせて欲しいという要望もなしとはしないのだが。そこで切れているところは、読者の想像や思いに任せるということであろう。余韻が残るといっても良いかもしれない。
12編が収録されているが、それだけに1編当りのボリュームが小さい。どれか印象に残ったものを紹介しようと思ったのだが、どれもこれも印象に残っているのだ。戦後間もなくの作品も多い。あの戦争の暗い影が尾を引いている世相であった。
『青い星』は、主人公が定年を向かえ、これまでの人生で馴染みのあった街を訪ね、思いもかけない光景を目にするストーリーであるし、『梅の蕾』は僻地の村長に語らせる話で、僻地に来てくれた医師と村民の心温まる小編である。これから少し吉村昭の短編小説を読んでみることにしよう。ウィットに富んだ短編を得意とするジェフリー・アーチャーとはまた違った味わいを楽しめそうだ。