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- カテゴリ:高校生 一般
- 発行年月:2000.12
- 出版社: 理論社
- サイズ:19cm/278p
- 利用対象:高校生 一般
- ISBN:4-652-07192-2
紙の本
ぶらんこ乗り
著者 いしい しんじ (作)
ぶらんこが上手で、うまく指を鳴らす男の子。声が出せず、動物とは話のできる偏屈もの。作り話の得意な悪ふざけの天才。もうここにはいない私の弟-。絶望の果てのピュアな世界を描き...
ぶらんこ乗り
紙の本 |
セット商品 |
- 税込価格:18,205円(165pt)
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- 税込価格:13,530円(123pt)
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商品説明
ぶらんこが上手で、うまく指を鳴らす男の子。声が出せず、動物とは話のできる偏屈もの。作り話の得意な悪ふざけの天才。もうここにはいない私の弟-。絶望の果てのピュアな世界を描き出した物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
いしい しんじ
- 略歴
- 〈いしいしんじ〉1966年大阪府生まれ。京都大学文学部仏文科卒業。著書に「アムステルダムの犬」、絵本に「なきむしヒロコちゃんはかもしれない病かもしれない」「グレートピープル。ストレンジ。」など。
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紙の本
胸のなかをぶーらぶら
2004/01/25 22:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:遊子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
数冊のノートが見つかった。あのこ、弟が書いたノートだ。
ページをめくるごとにあの頃の弟がよみがえってくる。
弟が書いた日記、お話。弟は天才だった。
最初から過去形のなんだか物悲しい雰囲気でスタート。
なになに? 弟はどうしちゃったの? 気になる。気になるけど弟の書いた
お話を読んでたら、そっちに夢中になってしまった。
弟が書く物語はとってもシンプルで簡潔だ。でもそこには
いろんな意味が隠されている。そのお話をどう読むのかは読み手しだい。
なんだかセンチメンタルな話が多い。
私も弟がいるが、やっぱり弟のほうが出来がいい。
だから、「ふん、あんなやつ!」って思ってるんだけど、付きつ放れつ、
いつの間にかいっしょにいる。付きつ離れつの間隔が人によっては
大きかったり小さかったりするのかもしれないが、
兄弟ってそんなものなのかな、と思った。
全体を通して胸をキュウッと締め付ける…いや違うな。胸のなかの
ぶらんこがぶーらぶらと揺さぶられる感じ。そして、最後にはその
ぶーらぶらも治まってきてポッと希望の灯がともる。
なんのことやらわからない? しょうがない。それなら実際に
読んでみなくちゃ! きっと私の言うぶーらぶらがわかるはず。
紙の本
自分への甘え
2003/12/08 08:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:えり - この投稿者のレビュー一覧を見る
こころがシン、とする。
読み終えた後、その余韻の中で漂っていた。
この切なさは、自分への決別からくるものではないか、と思いました。
私だけの見解に過ぎないのですがね。
依存心と自立心、生と死、その調和を取るのは難しい。
取っつき難い自立という問題について、少し考えてみたくなりました。
紙の本
砂糖菓子のように脆い
2003/02/24 21:09
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワルマジロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
全体に漂う悲しみのような、油の膜のなかのできごとのようだ。本当のことのようであり、虚言の世界のような境目のない、ベージュのような砂糖菓子のような物語。本文中の挿絵がいしい氏本人だが、物語の世界を引き立たせるような、計算しつくされたアンバランスな荒井良二氏の装丁画が、つい手を伸ばさせる
紙の本
静けさのなかで紡がれたファンタジー
2001/02/05 18:15
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:井上真希 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この世とあの世とのあわいに広がる世界では、すべての生き物の五感が辺りに溶け出し、振動しながらかきまぜられて漂っているのかもしれない。動物が見た光景が聞こえたり、自分が心の中で発する言葉に相手が触れたり。特殊な原始の感知能力を身につけた(失っていない)少年を主人公にしたこの小説は、空と土、朝と夜、夢と現、過去から未来までの時間軸の間で揺れるファンタジーだ。
物語は、高校生になった《私》が3歳下の弟を回想する形で描かれる。
学校から戻った時、「あのこの、あのノートだよ」と祖母に渡された古いノートの束は、大好きだった弟が4歳から文章を書き始めたものだった。近所でも評判の利口な弟に両親が買い与え、いつもおもしろい話をしてくれる弟に、考えた話を書いて読んで聞かせてくれるよう《私》が頼んで、たくさんの《おはなし》が綴られるようになったノートだ。そして、2冊目からは、《おはなし》の周りに、弟と《私》が交わした会話が書きこまれてもいる。弟は6歳の時に見舞われた事故がもとで声を出さなくなったのだ。
サーカスの空中ぶらんこに魅せられた弟は、家の庭の木に父が荒縄と板で作ったぶらんこに熱中し、ついには、2階ほどの高さの枝に自分で大きなぶらんこを取り付け、1日の3分の2を木の上で過ごした。鼻に道化師の赤い付け鼻をつけてぶらんこを揺すり、水平近くにまでこぎ出すと、周囲の世界はぼやけ、ぶらんこと弟の前を「この世がいきおいよく流れて」いって、向こう側から動物たちが現れるのだった。
そんなある日、一家を突然不幸な出来事が襲い、《私》を必死でこちら側に留めた弟だったが——。
「サーカスは、この世のはてにたっている。テントときいろいあかり、ざわざわしたひとごみ。よるのえきみたいだ。サーカスはあっちがわにつれていかれるターミナルえきみたいなものなんだ」。
「この世とあっちがわとのあいだでゆらゆらとゆれている、くうちゅうぶらんこ、それこそがサーカスのしんずい。いろんなものがぶらんこにのせられてぐにゃぐにゃになっていく」。
初めてサーカスを観に行く時、この《弟》は向こう側の世界に引きずり込まれそうになるのを恐れていた。
この世とあの世をつなぐ境界面上の乗り物としてのぶらんこは、大きく足を振り出す度に片方へぐっと近づき、さらに反対側へ揺れ戻る。摩擦がなければ、同じだけ双方の世界に触れ続けられることになる。異空間に触れる孤独な旅を重ねるうちに、静かに彼の内部に蓄積されていった哀しみを言葉に紡ぐ姉の心もまた、透明な静けさに包まれている。
高く大きくぶらんこを揺すると、あたりの景色はマーブル模様となって流れ出す。現在から過去へ、そして未来へと、この物語も風に乗って流れてゆく。 (bk1ブックナビゲーター:井上真希/翻訳・評論 2001.02.06)