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著者/著名人のレビュー
1986年1月28日...
ジュンク堂
1986年1月28日、NASAのスペースシャトル・チャレンジャー号の打ち上げを
世界中が見守っていました。そして・・・
事故調査委員として爆発・炎上の原因解明に活躍したのが、
天才物理学者リチャード・ファインマンさんです。
Oリングといわれるパーツの欠陥、その報告が上がっていたにも関わらず
上層部の様々な判断により打ち上げが決行されたこと。
そして、打ち上げ当日にレーガン大統領の演説というタイミング。
様々な指摘をストレートに投げかけたため、ファインマンさんが
心血を注いだ報告はなんと握りつぶされそうになります。
結局は「付録」扱いとして公表されました。
権威が大嫌いでユーモアにあふれたファインマンさんがその顛末をつづる
エッセイは、この本の中に。
【折々のHON 2011年1月28日の1冊】
紙の本
勇気が持てて自信がつく本
2001/02/24 01:23
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:田口善弘 - この投稿者のレビュー一覧を見る
僕がまだ院生だったか、助手になりたてだったかの頃に僕はこの本を読んだはずだ。内容は勿論、覚えているが、いつ読んだかは記憶に無い。文庫に降りてもう一度読んでみると、ずいぶんと感想が違う。もはや、駆け出しの研究者とは言えず、中堅の年代になり、ファインマンと自分自身を等身大に比べられるようになったからだろう。そうなってみるとかなわんなあ、というのが正直な感想だ。理論物理学でノーベル賞をとるだけでもすごいのに、「それ以外」のことしか書かれていないこの本でもとにかく、足元にも及ばないことばかりだ。
たとえば、本書の真骨頂ともいうべきスペースシャトルチャレンジャーの爆発事故の原因を究明する委員会での八面六臂の活躍。とにかく、徹底している。何事もおろそかにせず、きっちりやるという点で他に抜きんでているのだ。目的は「事故原因究明」なのだからそれ以外のことはわき目もふらず徹底的に現場主義に徹して自分の目で確認して考える。おそらくは彼自身の物理学への態度そのものだったと思われる態度で原因を究明し、ついにはNASA自体の運営体制の問題にまで至ってしまう。まさに、すごい、というしかない。比べるのもおこがましいが、自分を振り返ると忙しい(ということをいいわけにして)が故にこれほどまでに何かを徹底してやったことは一度もないだろう。でも、一方で、結構、なんとか学会とか何とか協会の委員のたぐいをいっぱいやったりもしている自分を省みると本当に情けなくなってしまう。ファインマンだったら僕がやっているような委員ひとつひとつにきっと本当に貢献するような活躍が出来るんだろうな。単に優秀さが違うだけだといえばそれっきりかもしれないが、彼と自分の違いはなんだろう、とふと考え込ませられる。
このファインマンの性格を作り上げたのは父親と最愛の最初の妻(若くして死別)だったという。「名前なんかどうでもいいんだ、大切なのは中身だ」と語り、またそのためには科学的に考えなくてはならないことをしっかりと教えたのが父。最初の妻は死に際してもそれを怖れること無く、正面から気丈にユーモアを失わずに耐えてみせた。この様な環境すべてがファインマンの人の意見に左右されず、自分で考えるという性格を作り上げたのだ。
この何もかも不確かで生きていくのがつらい時代に、こんな本を読むと勇気が持てて自信がつくかもしれない。
(田口善弘/中央大学 理工学部 物理学科 助教授 http://www.granular.com/tag/index-j.html)
紙の本
ファインマンの人物像を的確に映し出す秀逸なる「逸話集」
2019/06/06 12:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
読む前は、変人だ、天才だとの噂に、表題に自分の名前を入れた本を書く人物は誇大妄想狂に違いあるまいと思っていた。立花 隆が「解説」で触れる本書の成り立ち(出版社の創作したシリーズ名、日本語版が先行出版された)から、著者自らが本書の題名を決めたのでも、執筆者ですらなかったことが判り、疑いが綺麗に晴れて納得がいった。
「エッセイ(随筆)集」というよりも、著者自身が述べたとおり友人に語った「逸話集」だから、関連性の無い話題が展開する。一つ一つの逸話が頗る面白く、ファインマンという人物像を的確に映し出すので、恰も「自伝」のように見えてくる。
病死した最初の奥さん(アーリーン)との想い出話(1部「ひとがどう思おうとかまわない!」)は、後にハリウッドで映画化されたそうだが、死んだら最愛の人も夢の中に出て来られない筈と自分の気持ちを誤魔化した著者の没後に実現された点は、不幸中の幸いであった。
乗員7名の犠牲者を出したチャレンジャー号大爆発事故の調査委員会入りを逡巡する著者。三人目の奥さん(グウェネス)は、夫ファインマンをよく理解した人のようだ。3部「ファインマン氏、ワシントンに行く ~チャレンジャー号爆発事故調査のいきさつ~ 」を読むと、次のような予言めいた励ましで夫の背中を押したという。
「あなたはひとりで飛びまわって、ひとの考えないようないろんなことを調べることになるんでしょ。まあ何が見つかるかはわからないけど、もし何かあったとしたら、それを見つけだすのはきっとあなたよ。あなたみたいなやり方のできる人は、ほかにはいないんだから。」(163頁~164頁)
信頼と愛情に溢れたこんな素敵な言葉をもらって発奮しない男はいない。天才ファインマンなら猶更だ(著者は夫人の夫操縦術にうまく乗せられたと照れているけど…)。
「士は己を知る者の為に死し、女は己を悦ぶ者のために容づくる」とは古代中国の<国士>の言だが、己の信ずるところに従い、己に課せられた使命を果たし終えた著者その人こそ、現代米国の「国士」(身命を擲って国に尽力する人)だったと言えると思う。