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商品説明
百年近くも前の、いまだ日本の近代文学がさまざまな可能性を秘めていた頃の、あの空前絶後のにぎわいを再現し、その地点から、それ以後の日本の近代文学の歩みを照らし出し、検証する。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
小説の考古学へ | 1-13 | |
---|---|---|
漱石と一人称体 | 14-19 | |
『彼岸過迄』の実験 | 20-37 |
著者紹介
藤井 淑禎
- 略歴
- 〈藤井淑禎〉1950年豊橋市生まれ。立教大学大学院文学研究科博士課程満期退学。立教大学文学部教授。著書に「望郷歌謡曲考」「清張ミステリーと昭和三十年代」など。
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紙の本
小説がどのように読まれたのか
2002/06/24 23:00
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投稿者:メル - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治時代の小説、特に明治30年から40年代のものを中心に研究されている。とりわけ、心理学と映画と文学が交流するところを実証的に論じている。取り上げている資料などは、今後、明治時代の小説を研究する人たちには参考になるだろうと思われるが、やはり氏が提唱するすなわち、小説の書かれた時代の読者がどのように小説を読んだのか復元することを目指す研究の方法には、問題が残されているような気がする。
たとえば氏は、作品の書かれた時代を考慮しないと、《同時代読者に見えていた作品のかたちとは違ったものを受け取ってしまうことになり、もともとあったはずの作品本来の面白さはどこかに行ってしまうのです。》という。違和感を覚えるのは、氏が同時代の読者のみを、作品が書かれた時代に生きていたということで特権化していることと、そしてその特権化された同時代読者の読み、それを作品の読みの規範化としていること。つまり、同時代の読者の読みが正しいとするところに疑問を感じてしまう。果たして、「同時代読者に見えていた作品のかたち」をきちんと受け取らないと、「作品本来の面白さ」を感じることが出来ないのか。
今回この本を読んでみて、やはり同時代の読者という分析概念を徹底的に検討しないと研究には使うことが出来ないのではないか、と思われる。分析に用いる読者の概念が、やはりあいまいで漠然としている。たとえば、読者の分析には階級といったことも視野に入れなければいけないのではないか。そのあたり、どう考えるのか。今後の氏の研究を追って行きたいと思う。