「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
20世紀が生んだ不世出のスーパーヒーロー・力道山が40年ぶりに甦る! プライベートでの素顔や、各試合での名場面、ルー・テーズ、ザ・デストロイヤーといった懐かしいライバルなど、数々の写真を解説付きで掲載。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
田中 和章
- 略歴
- 〈田中〉1934〜1996年。兵庫県生まれ。プロレス草創期の54年からカメラマンとして活躍し、『月刊ファイト』誌チーフを務めた。また『スポーツ毎夕』における写真でも定評があった。
関連キーワード
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
強くて淋しかった20世紀最大のヒーロー、力道山に肉迫
2001/03/21 12:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中山康樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ぼくが生まれてはじめて体験した「ライヴ」は、1963年、大阪府立体育館における力道山VSデストロイヤー戦だった。これはすごかった。最後はデストロイヤーがかけた4の字固めがはずれず、両者そのままリング下に転がり落ちて引き分け、若手に担がれて引きあげる力道山の姿はいまもくっきり残っている。
ぼくは11歳、プロレスに打ち合わせがあるなんて知るわけがなく(バカか)、素性不明の覆面レスラーもちゃんとパスポートをもって出入国しているなんてことにも頭が回るわけもなく(やっぱりバカだ)、「おとうちゃん、力道山、死ぬんちゃうか」といいながら会場をあとにした。
その数週間後、力道山は本当に死んだ。ぼくはあのときの怪我が原因だと思ったが、誰かに刺されたということだった。
たしかにプロレスはショーである。だがあれだけ殴られれば痛いということ、額が割れて流れ落ちる血をみれば、それが本当の血であることは「11歳のバカ」にもわかった。ショーであることと肉体が痛いということは、まったく別だった。
ぼくはそういうプロレスをみて、自分が体験しなくても「痛い」ということがどういうことか理解できた。そして力道山が死んだことによって、人間の一生がいかにあっけないものか、「死」というものがどれだけ悲しいことかを実感した。
いまのプロレスについては多くを知らない。だが当時、少なくともぼくが知っているプロレスは、そういったぼくたちが知らないことを身体を張って教えてくれていたような気がする。
それは「痛い」とか「わあ、あんなに血が」といった肉体的なことだけではない。力道山はやられてもやられても立ち向かう「勇気」を、デストロイヤーは磨きぬかれた肉体美を維持することによって「努力」ということを、巨漢ヘイスタック・カルホーンは鈍い動きで、いかに太った人間がダメかという「教訓」を残した。
本書は力道山の写真集、リングにプライヴェートに、まさに時代をつくり、時代を生き、あっさりと殺されたヒーローのさまざまな顔が収められている。
強いイメージをさらに強調すべく常に太い腕をみせてカメラマンの前に立つ姿は晴れやかではあるが、どこか淋しげで痛々しい。だが力道山の魅力は強さと淋しさを共存させていたところにあり、なにも知らないぼくやぼくたちを捉えたのは、必ずしもその強さだけでなく、背中に張りついていた淋しさだったと思う。
この写真集をみていると、ついそんなセンチな気分になる。 (bk1ブックナビゲーター:中山康樹/音楽評論家 2001.03.21)