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商品説明
「小説を書きたい」人たちの原稿を読んで10年。伸び悩んでいる人たちの前には、共通の壁が立ち塞がる。「読んでもらえる小説」を書くために、実例から躓きの原因を探る。『そして』連載の「小説・私の方法」に加筆。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
宮原 昭夫
- 略歴
- 〈宮原昭夫〉1932年生まれ。早稲田大学卒業。横浜文学学校・朝日カルチャーセンター「小説講座」講師。著書に「海のロシナンテ」「土と火の巫女」「女たちのまつり」「かげろうの巫女たち」など。
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紙の本
文章力も感性もいいが、もう一息で伸び悩んでいる小説家志願者たちへの小説作りの基本的助言が本書の狙いだ
2001/07/16 18:15
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投稿者:高橋洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人はだれでも一冊は本を書けるという。自分自身についてである。しかしコンスタントに書き続けることは難しい。そこが作家と素人の違いであろう。
いま各地では、文学教室や文章講座の類が流行っている。教室に集まるのは主婦層や定年間近の会社員などが多いという。戦後の高度成長からバブル期を一目散に駆け抜け、突然「聖域なき構造改革」の変動期に入り、自己、自分の人生を問い直したいという気持ちの表れでもあるのだろう。しかし文章に表現するのはなかなか至難の業である。そこでこの種の教室がにぎわうことになる。
ハンセン病熊本地裁判決を受け、補償法が成立した。ようやく国の隔離政策に終止符が打たれ、患者らの名誉回復と社会復帰が図られることになった。著者は、ハンセン病患者への無理解や差別、それを乗り超えようとする人たちを描き、七二年度上半期の第六七回芥川賞を受賞した。最近の著者は、カルチャーセンターの小説講座の講師や通信添削批評なども務めている。
本書は、こうした実践的な経験を踏まえた「小説の書き方」である。「文章力はある、感性もいい、いい素材も持っている…それなのに小説というものについての基本的な勘違いがあるためにもう一息のところで伸び悩んでいる」。そういう人たちへの小説作りの基本的な助言が本書の狙いとなっている。実例を豊富に紹介し、躓(つまづ)きの原因を分かりやすく解明する。
「いま、ここに一人の売春婦がいる。彼女は世をはかなみ、セーヌ川に身を投じて自殺しようとしている。君はなんといって彼女の自殺を思いとどまらせるか」。井上ひさしによると、これは哲学者アランがアンドレ・モロアたちに提出した高校の課題作文という。修辞学を重要視するフランスと日本の高校教育の程度の違いは歴然としている。わが国では、子どものころから文書の書き方、まして創作について学ぶ機会などはほとんどない。
著者は、創作を「発見のための方法」との認識を示す。「小説とは一種の時間芸術で『設定』から『新局面』までの時間的『展開』の中で、主人公その他の人間像と、人間関係を描き出しつつ、それが変質して行く軌跡をとらえるものだ」と弁証法的な小説構造を説く。
先代の三遊亭金馬の言葉を借り、「作家がこすっからいと、登場人物すべてがこすっからくなる。だからまず作者の人間をつくれ、小説を書くのはそれからだ」と言う。「人生のなにかしらの曲がり角を捉えて描くもの」が小説と指摘する著者らしい直言である。 (bk1ブックナビゲーター:高橋洋一/評論家 2001.07.17)