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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:2001/05/01
  • 出版社: 早川書房
  • サイズ:16cm/365p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-15-120003-7

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文庫

紙の本

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

著者 カズオ・イシグロ (著),土屋 政雄 (訳)

【ブッカー賞】【「TRC MARC」の商品解説】

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日の名残り (ハヤカワepi文庫)

税込 1,012 9pt

日の名残り

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日の名残り

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みんなのレビュー658件

みんなの評価4.4

評価内訳

紙の本

土屋政雄氏の歴史的名訳による重厚な一冊。人生について深く考えさせられるブッカー賞受賞作品。

2009/04/27 21:09

22人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

『エデンの東』(ハヤカワepi文庫)や『月と六ペンス』(光文社古典新訳文庫)、『アンジェラの祈り』(新潮クレストブックス)の名訳で著名な土屋政雄訳。
ブッカー賞受賞作品。

さて、カズオ・イシグロ初挑戦しました。
これはもう素晴らしいの一語に尽きますね。
あまり小説に男性向け・女性向けという形容を施したくないが、この作品は男性向けの作品だと思う。
なぜなら作者は“男の人生”を描いているからだ。
でも女性が共感できないということはありません、逆にこんな男に惚れて欲しいと思ったりします(笑)
あとどうなんだろう、特徴としては作者にとっての母国となるイギリスに対して、ある時は誇り、ある時は辛辣に描いているように見受けれる。
物語の始めに読者は主人が今までの英国人からアメリカ人に変わったことに驚きを隠せずに読み進めたのである。
予想通り全体を支配している重要なことでした。
主人公のスティーブンスは老執事。
説明いらないと思いますが、執事と言っても現在日本で取り立たされているイメージの執事とは全然違い、品格を求められるものです(笑)
物語は主人公の短い旅(6日間)に出るところで始まりそして終わる。
男性一読者の私にとって、主人公はいわば理想の英国人に近く写ったのである。
少しイライラする面もあるが許容範囲。
描かれるのはわずか6日間のあいだだが、まるで長い人生を凝縮したような6日間なのである。
前述したがこれはやはり男性読者の方が理解しやすいと思ったりするのだ。

仕事に対するこだわり、父親に対する尊敬の念、そして女中頭との恋愛。
一生懸命に生き信念を通すということが立派な品格を築き上げるのですね。

少し前半凡庸な気もしないではないが心配無用。
中盤からのミス・ケントンとの恋愛感情を含んだ仕事のやりとり。
これは重厚な作品の中にあって軽妙であり楽しめます。

あと付け加えておきたいことは、やはり時代背景と作者の育った環境ですかね。
本作の描かれている時代は1956年。そして旅行中に回想される時代が1930年代です。
ちょうど第二次世界大戦が終わって10年ぐらいたった時期に旅し、第1次と第2次とのあいだの時期を回想してますね。
当時のイギリスのヨーロッパにおける位置づけの認識はかなり重要です。
そして作者はご存知のように日本生まれで5歳の時に両親と渡英。
生粋のイギリス生まれでないところが見事な“少し不器用だけど紳士的な主人公像”を作り上げている要因となっている気がする。

人生すべてうまくいくとは限らない。でも明日のことを考えて生きていこう。
主人公が終盤ミス・ケントンに背中を押されたのと同様、読者も作者に生きる勇気を与えられた。

本作の原題は"THE REMAINS OF THE DAY"、読者は"THE REMAINS OF THE LIFE"を否応なく考えさせられる名作です。
見事な原作に最高の翻訳、未読の方は是非酔いしれて欲しいですね。

男も泣きたい時がある。最後に主人公が流した涙は男の矜持の象徴と信じて本を閉じた。

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紙の本

ゆったり静かに進行するイギリス叙情映画

2014/09/16 12:32

13人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Owl_X - この投稿者のレビュー一覧を見る

極々イギリス的な背景の話だが、日本人の波長に合う。子供の頃からずっとイギリスで育ってきた作者の日系の血ゆえか、あるいはイギリスと日本に共通する感情を描いているからなのか?ドラマティックなストーリーは一切無く、ゆっくり淡々と、回想を入れながら、典型的なイギリス執事の小さな旅が進んでいく。人生を振り返る中に,寂しさと暖かさが醸し出されて、ついつい引き込まれてしまう作品だ。ゆったり静かに進行するイギリス映画を見るようだ。ただし、暗さはない。

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紙の本

人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ

2015/04/04 22:24

11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wayway - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者の作品に共通するものがある。
それは、読んでから暫くは残響のように身体に残っているということだ。
なんとも言えぬ感情であるが、ふつうに持っている(かといって日常に
おいて発芽することがない)筈であるとと思われるものだ。

執事としての仕事における成功?と、もはや取り戻しようのないはずの
元同僚への想い。そのふたつのことが再び成就するのだろうかという
淡い期待。伝統的でありながらも徐々に翳りつつある英国と重ね合わせ
ながらも、独特の展開は我々を著者のみが知る世界へと引き込む。

和訳にも無理がなく、まるで日本語で書かれた小説を読むようだ。
次の台詞なんかは、英語でも日本語でも人の心に浸みいって響き渡る
のではないかと思う。

「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。
脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。
みんなにも尋ねてごらんよ。夕方がいちばんいい時間だって言うよ」

最後に、真面目にジョークの練習に取り組もうとするスティーブンスは、
死ぬまで執事であり続けたことであろう。

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紙の本

"The Remains of the Day"(『日の名残り』):祝ノーベル文学賞受賞

2017/10/07 00:08

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:うりぼう - この投稿者のレビュー一覧を見る

昨夜、PCに向かっていたら日経電子版のヘッドラインに<カズオ・イシグロ ノーベル文学賞受賞>とポップが現れ、一瞬、手が止まりました。『日の名残り』を読んで以来、ひそかに愛読していた作家の受賞だったからです。普遍的な文学性と緻密な文体を評価した今年の選考は、とても納得感があります。英国のオッズではケニアの作家が有力視されていたようですが、英語圏の作者の方が日本人にとって触れる機会が多く、受賞を身近に感じることができます。短編の名手アリス・マンローが受賞したとき以来のお気に入り作家の受賞となりました。

映画化もされた”The Remains od the Day”(邦題『日の名残り』)で、一躍、カズオ・イシグロは世界的名声を獲得しました。三作目となるこの作品は英国で最も権威のあるブッカー賞を受賞しています。この作品を読んだとき静かな衝撃に襲われました。貴族邸に忠実に仕える老執事スティーヴンスの回想を綴ったもので、作者の最高傑作といえるのではないでしょうか。ノスタルジックな風景や人々の無垢な記憶を丹念にたどる作風が作品世界の魅力のひとつです。

結末シーンは夕暮れ時の桟橋です。主人公スティーヴンスが年輩男性に"The evening's the best part of the day"(夕方こそ一日でいちばんいい時間だ)と話しかけられるシーンが強く印象に残っています。父の死、女中頭ミス・ケントンへの想い、過去の同僚との友情、政治情勢に対する私見、それらすべてを押し殺して最後まで執事としての職務を全うしたスティーヴンス、老境を迎えた彼の姿は黄昏時の桟橋風景と重なり合います。抑制(の効いた人生)という言葉は彼のためにあるのかも知れません。静かに終幕を迎えるかに見えたスティーヴンスは、人生の残照を眺めながらも、ユーモアを交えた決意を胸に第二の人生に立ち向かいます。胸中をときおり去来するに違いない落胆や失意を、執事としての矜持が堰き止めるそんな生き様に、読者は深い感銘を覚えるのです。

カズオ・イシグロのノーベル賞受賞を機に、1989年に出版された原作を再読してみようと思います。自分も年を重ねて、『日の名残り』の主人公の思いにより共感できるような気がします。35歳のときにこの傑作を完成させてしまうカズオ・イシグロ(の才能)は只者ではなかった。

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紙の本

でも人生の夕暮れは哀しいばかりではない

2011/06/16 18:56

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:チヒロ - この投稿者のレビュー一覧を見る

同業者の父を尊敬し、自らの職務にもプライドを持ち、
執事としての高みを常に目指すスティーブンス。
敬愛するダーリントン卿なきあとの新しい屋敷の所有者ファラディにも、
英国風の対応を心掛けつつも新しい試行の必要も感じている。

そんな折、数日間の休暇を得て、屋敷の元女中頭ミス・ケントンを訪ねて車でひとり旅にでる。
イギリスの牧歌的風景を楽しみ、行く先々の人々との交流の合間に、
昔の栄華を極めたダーリントン・ホールでの出来事や、
自身の完璧な執事ぶりの記憶を楽しむスティーブンス。

そこに特別な思いを呼び起こす、晩年の父の姿。
重要な会合があった夜、重篤な状態で伏していた父が尋ねる。
「わしがよい父親だったならいいが・・・。そうではなかったようだ」
「父さん、いま、すごく忙しいのです。また、朝になったら話にきます」

何回も父は聞いた。いい父親ではなかったかと。
スティーブンスは、父を偉大な執事だと絶賛するも、果たしていい父だったといっていただろうか。
今わの際の最後まで「いい父だった」の一言を言わない彼に少しいらだった。


そして今にして思えば恋の始まりの予感もあったミス・ケントンとの時間。
今回の訪問も、淡い期待がもしかしたらあったかもしれない。

短い再会ののち、ひとり桟橋から見る夕日に、
初めて自分の最も輝いていた時代の終わりを知らされて涙する。

これまでの道を悔いているのではなく、むしろ誇りに思っているのだと思う。
過ぎて行った過去の眩しさと、
その頃の自分よりも劣ってしまったことを知る口惜しさ。
様々なものが落ちていく日の美しさと一緒に、彼の中に押し寄せてきたのではないかと。

スティーブンスはとても有能な執事だった。
でも彼の人生は?彼はしあわせだった?
本当の幸せって何なのか、ふと考えてみる。

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紙の本

英国らしい洗練

2001/07/29 14:38

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:OK - この投稿者のレビュー一覧を見る

 初老の執事が過ぎた日々を振り返りながら短い旅をする。という、どう考えても盛り上がりそうもない地味な筋書きの話なのだけれど、洗練された書法で出来の良い小説だった。ただ良くも悪くも、身を削って本気で書いた小説ではなさそうだなとは思うけれど。

 結局のところ小説というのは、1.登場人物の視点に感情移入して読む、2.登場人物を突き放して作者の意図や構成を読む、というふたつの段階をある程度並行しながら読んでいくものだろうけれども、本書はこれら両者のバランスがとてもよくとれている。「執事」の一人称語りは、自己を客観視しきれていないいささかうさんくさい叙述になっており、いわゆる「信頼できない語り手」の領域に足を踏み込んでいる。すばらしい執事とは何かについて彼が熱心に語ったり、冗談をうまく返せなくてまじめに思い悩む箇所なんかは、ほとんどパロディ小説のようなおかしさがある。かといって作者の態度は、執事がみずからの職業に抱く誇りをいたずらに嘲笑しているわけでもない。題名を反映した終盤の展開はしみじみと感動的でさえある。このカズオ・イシグロ自身はもちろん日系人なのだけれど、英国の作家というのは伝統的にこのあたりの案配が特に巧いような気がする。それはたとえば一般的には「現代的」「ポップ」などと評されるだろうニック・ホーンビイやアーヴィン・ウェルシュなんかの小説にも感じるところだ。

 「公/私」を対比させる構図も巧い。執事が体現するのは英国の喪われた栄光と「品格」であり(彼の新たな主人は米国人だ)、彼個人はかつて女中頭とのロマンスの機会を逸してしまったのを心残りに思っている。そして彼の敬愛した主人の英国貴族は、ナチス・ドイツに対する英国政府の「宥和政策」に加担したとして糾弾されたらしいことが示唆される。私的な問題から国家の大事に至るまで、誰にでもそんな失敗や喪失の体験はあるだろうと思う。本書はゆったりとそんな追憶に浸ってみせるけれど、しかし結局過去は決して取り戻せず、前を向いて生きるしかない。

 土屋政雄の訳文はすばらしい。「執事の語り」なんて日本語に存在しないものを、たしかにこんな調子だろうなと思わされてしまう見事な翻訳で、おそらく「ですます調翻訳」や「特殊職業の語り手翻訳」のひとつのお手本といえるのではないか。

http://members.jcom.home.ne.jp/kogiso/

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紙の本

主人公

2001/12/26 18:44

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:読ん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ダーリントン・ホールに長年執事として仕えてきたスティーブンスが、休暇をもらって自動車旅行に出る。執事らしい控えめで上品な旅である。旅先では…、これと言って取り立てるほどのことは何も起こらない。「何も起こらないはずはないだろう?」と思って急げ急げと読み進めると…、読み終わってしまった。一人、部屋の中で、天井を見上げ後ろを振り向き、「フ〜ム」と首をかしげて唸ってしまった。「それで、何なのよぅ??」と何度も呟いた。

 どうも私の読む姿勢が間違っていたようだ。本書はストーリーの展開を楽しむたぐいのものではないらしい。これは、ある男、執事という仕事に命を燃やした男の人生を読む小説だ。自動車旅行に出かけ、車の中や宿などあちこちで執事は回想に耽る。ダーリントン・ホールがかつて活気に溢れていた頃のこと、女中頭との出来事、同じ執事として尊敬すべき父のことなど。

 人はだれでも生きている内に「人生」という大長編を綴っている。主人公は著者本人と決まっている。どんなに平々凡々とした人だろうと主人公を他人に譲ることなど出来はしない。この大長編は一般の書物と違うところが一点ある。それは句読点である。「。(マル)」がない。正確には、「。」はページの最後の最後に一つだけである。これは人生の終わりを意味する。「、(テン)」は文中のそこかしこに存在する。人はそれを「人生の節目」と表現する。
 「、」を打つ時に、人はしばしば綴ってきた「人生」を読み直すという行為に至る。本書に出てくる執事は、ダーリントン・ホールが、彼が長年仕えてきたダーリントン卿の手を離れてアメリカ人の富豪の手に渡ってしまうという「、」を迎えた。そこで、執事は「人生」を読み直す。読者も執事と並行して執事の「人生」を読む。

 「人生」は元々人に読ませようという意図は皆無のものである。それをたまたま読んだ時、「人」というものに対していとおしい気持ちでいっぱいになった。だれもが主人公。ある人にとっては常に脇役のあの人も必ず主人公。みんな、みんな。

 本書を読みながら、「退屈や」を連発した私。カズオ・イシグロ氏に申し訳ない。読む姿勢ができていなかったということで勘弁してもらおう。「人生とは退屈なり」である。だから本書が退屈なのは当然のこと。イシグロ氏がこれを小説にしたということが素晴らしい。読者に、他人の「人生」をたまたま読ませられたと感じさせる手法はすごい。

 私の「人生」には、「。」を打つにはしばらく間がありそうである。耳元では常にカリカリと「人生」を綴る音がしている。今は「、」を打って回想する時期でもないようだ。突っ走るよりほかなさそうである。燃料は足りているだろうか? 走れ、読ん太!!

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紙の本

貴族に忠実に仕える非常に優秀な執事の物語。

2018/05/11 14:48

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る

冒頭から感じた染み入ってくるような感動が最後まで続きました。衰退する英国貴族文化、階級社会の変化や戦間期の捉えがたい空気、深い信頼と敬愛に貫かれた主従関係、私情と職業的プロ意識の間で揺れ動く男女の関係など、どの要素も大変読み応えがありました。品格とは。旅の終わりの場面は寂しさがつのるけれど、それよりも今の主のためにできることを考える姿に心打たれた。こんなにも目指すものに忠実に生きられるのか。
本書は映画化されています。アンソニー ホプキンスがストイックに演じるほどに、その心の揺れ動きが見事に表現されます。「品格」がこの映画の重要な主題です。

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紙の本

わび・さびの境地?

2018/11/04 18:25

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る

昨年ノーベル文学賞を受賞したカズオ=イシグロの比較的初期の作品。この作品で、彼がイギリスで権威のある文学賞のブッカー賞を受賞したとき、私はこの日系イギリス人作家を初めて知ったが、ついぞ作品そのものは読んだことがなかった。だから今回のノーベル賞をきっかけに、『日の名残り』と訳されるこの”The Remains of the Day”を、原文で読んでみた。そうして初めて接する彼の文章の簡潔さ、論理性に、感銘を受けずにいられなかった。特に風景描写は実に叙述的で、ありありと目の前に景色が浮かぶようであった。
 ダーリントンホールの執事スティーヴンズは、現在のあるじの勧めで、イギリスの郊外を車で旅行する。目的の一つは、かつての同僚ミス=ケントンに会うことだった。結婚のため退職した彼女から、彼が20年ぶりに受け取った手紙には、彼女が現在不幸であると綴られ、再びダーリントンホールで働きたい様子が伺われた。人手不足の折、スティーヴンズは彼女に戻ってきてもらおうと考えた。そこには当然、単なる仕事以外の要素も当然あった...
 これは、そんな主人公の旅行記と思い出が交互につづられる独白形式の小説である。彼女と会う場所に着くまでの旅のエピソードとともに、ミス=ケントンや、前のあるじであったダーリントン卿、そして邸でのさまざまな出来事が、時系列もバラバラに語られる一方で、執事とはどうあるべきかという職業哲学めいた議論も展開される。
 スティーヴンズが、ミス=ケントンとの再会にロマンスを期待していることは、物語の冒頭から誰の目にも明らかだ。彼女に関する叙述のすべてが、彼女が彼を愛していたことを示唆しているから...それゆえ、物語の結末は、主人公を何ともかっこ悪いものにしているといわざるをえない。最後に出会う老執事との会話と、主人公が見入る夜景の描写によって、苦い失恋の思いは一つの美学へと昇華されるものの、やはりそこには一抹の寂しさが、「日の名残り」として永遠にとどまる。題名のせいか、どことなく日本のわび・さびを感じさせる、そんな結末であった。

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紙の本

映画とあわせて読みたい

2017/11/07 11:49

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:phoebe - この投稿者のレビュー一覧を見る

愛おしい「信頼できない語り手」の記憶

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紙の本

輝かしい日々への哀愁

2017/10/30 20:49

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひまわりまま - この投稿者のレビュー一覧を見る

イギリス貴族の館に身を捧げていた執事スティーブンスは、時代の流れとともにアメリカの金持ちに使えることになる。自我を出すことを自らに厳しく禁じていた執事だったが、自由なアメリカ人の主人に即発されたのか、かつての同志だった元女中頭のミス・ケントンに自ら車を運転して会いに行く…。時代の大きなうねりの中に自らも身を投じていたことと同時に、執事という仕事についてほこりを持っていたスティーブンスが、彼個人の人生を振り返ってみると思いもよらなかった思慕を寄せられていたことに気づく。でもすべては遠い時間のかなたに飛び去ったまま、今はただその事実だけを受け入れている。人生の黄昏時、そこにあるのは充実した思いなのか、あるいははかなさなのか。スティーブンスの一人称で語られる文体はぐいぐいと読むものを引き込み、飽きさせない。執事中の執事を全うした人生なのか、それとも好き好きビームに気付かず鈍感に過ごしたドジなおっさんの話か、読み手にゆだねられる一作。

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紙の本

カズオ

2015/08/25 19:53

3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:romi - この投稿者のレビュー一覧を見る

淡々と物語は進んでいき、事件的なことが起こることもないのに面白い。
一気に読んでしまった。

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紙の本

静か

2016/08/19 19:02

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mugi - この投稿者のレビュー一覧を見る

「執事」のイメージが自分の中に出来上がり、物語が静かに進んで行きました。心の中の微妙な動きと恋愛には不器用な「彼」の姿に「このような世界があったのね」と映画を見ているようでした。

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紙の本

テレビ東京塩田真弓アナのお気に入りの小説

2002/07/26 13:59

3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:白井道也 - この投稿者のレビュー一覧を見る

(中公文庫、表4より)短い旅に出た老執事が、美しい田園風景の道すがら回想する、古き良き時代の英国。長年つかえた先代の主人への敬慕、執事の規範のような亡父、女中頭に寄せた淡い想い、両次大戦間に邸内で催された重要な外交会議の数々——。

というような話が老執事の語りで語られるわけだけど、“旅に出る”ってくだりは何というか物語を進めるための装置で、メインになるのは回想。で、この物語の持つ意味ってのは何なのだろうか。

ひとつ、いやがおうでも目に付くのは、主人公の老執事が「執事の品格とはなにか」ということをしきりに語っているところ。品格はプロ意識というコトバに置き換えても良いかもしれないけど、いずれこの物語は、語り部である老執事が「自分はなんだかんだ言ってもプロなのですよ、いろんな事件があったけど私は仕事をまっとうしましたよ」ということを、ささやかに上品に語っているってことだ。

で、プロの執事たるや、主人の洒落にも洒落で返さねばならぬということで、

 主人が執事に望む任務としても、ジョークは決して不合理なものではないように思えてまいりました。もちろん、私はジョークの技術を開発するために、これまでにも相当な時間を費やしてきておりますが、心のどこかで、もうひとつ熱意が欠けていたのかもしれません。

ってな具合でクソ真面目に洒落の練習もするわけだ。
もうひとつ印象的な場面を抜書きするとですね、

 人生が思いどおりにいかなからと言って、後ろばかり向き、自分を責めてみても、それは詮無いことです。私どものような卑小な人間にとりましても、最終的には運命をご主人様——この世界の中心におられる偉大な紳士淑女の——手に委ねる以外、あまり選択の余地があるとは思われません。それが冷厳なる現実というものではありますまいか。

確かにこの小説は限られた世界のお話なのだけど、これを拡大解釈するならば、その世界がいっけん不合理なりに思われたとしても、その中でベストを尽くすことが幸福なのだよ、ということを謳っているようにも思える。

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紙の本

意識されたこの作品行為は思いのほかしたたかな方法論に支えられていると思われる

2002/06/11 08:09

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:宇羅道彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る

下記の言葉は、巨大な不良債権に苦しむ大銀行の、末端に勤務する定年間近か
の誠実な一行員の感慨を思わせる。

「大問題を理解できない私どもが、それでもこの世に自分の足跡を残そう
としたらすればよいか… 自分の領分に属する事柄に全力を集中すること
です。文明の将来をその双肩に担っておられる偉大な紳士淑女に、全力
でご奉仕することこそ、その答えかと存じます。」

カズオ・イシグロの「日の名残り」をこんな風に読むのは皮肉に過ぎるだろう
か。職業が身分を保証する階級社会の残照を巧みに捉えたイシグロの作品はも
ちろん意図してであろうが、極めて辛らつな英国への文明批評とも読める。

身分制度が価値として信じられた時代の不幸と幸せ、そしてそれらへのノスタ
ルジー。充実した断念の人生を書くイシグロの言葉は決して冷たいものではな
い。現代日本の定年間近かの一行員には、おそらく下記のような感慨は到底訪
れることはないだろう。

 「卿の一生とそのお仕事が、今日、壮大な愚考としかみなされなくなった
としても、それを私の落ち度と呼ぶことは誰にもできますまい。」
 「私どものような人間は、なにか価値あるもののために微力を尽くそうと
願い、それを試みるだけで十分であるような気がいたします。そのよう
な試みに人生の多くを犠牲にする覚悟があり、その覚悟を実践したとす
れば、結果はどうあれ、そのこと自体が自らに誇りと満足を覚えてよい
十分な理由となりましょう。」

失われたのは自制と節度をもたらしていた社会の制度である。
制度の崩壊がもたらした自由が、一方では誇りと満足を奪い去ることになる。
自らの卑小さに安住する幸せは、おそらく今日では誰にも許されていない。
むしろそのような幸せを嘲笑することが、気の利いたことであると思われてい
るだろう。

イシグロのこの作品は英国を斬ってみせる返す刀で、現代の先進社会の進歩と
みなされるありようを密かにより鋭く斬っている。執事の人生のという些細な
現実の細部を描いて見せることが、結果的に世界の真実を表現する。
優れた作品の常とはいえ、イシグロの意識されたこの作品行為は思いのほかし
たたかな方法論に支えられていると思われる。

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