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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:2001/05/01
  • 出版社: 早川書房
  • サイズ:16cm/365p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-15-120003-7

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文庫

紙の本

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

著者 カズオ・イシグロ (著),土屋 政雄 (訳)

【ブッカー賞】【「TRC MARC」の商品解説】

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日の名残り (ハヤカワepi文庫)

税込 1,012 9pt

日の名残り

税込 1,012 9pt

日の名残り

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みんなのレビュー656件

みんなの評価4.3

評価内訳

紙の本

英国執事の感情を知る一冊

2022/12/31 10:05

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yy - この投稿者のレビュー一覧を見る

フィクションであっても、本書を読むまで、イギリスの執事の感情を知る機会はありませんでした。
英国で執事をするということなど、知らない世界が知れてよかったです。

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紙の本

読了

2020/06/21 14:58

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ムギ - この投稿者のレビュー一覧を見る

お屋敷で執事として生きてきた男の物語。自分は執事として品を備えた最高の人間だと思っているであろう主人公、自分の中の価値観に従って生きてきたであろう彼は度を通じてさまざまなことに気づく。決して悪い人ではないと思うけど、なんというか読んでいるとイライラしてくるような思考というか幼稚さというか、主人公のことを信じ切れない感じがした。
でも読んでいる中で何度も響く台詞に出会った。それがイシグロのすごさなのかなと思った。

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電子書籍

何か限界を感じる

2022/02/20 10:55

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:allemande - この投稿者のレビュー一覧を見る

「華麗なるギャツビー」の語り手と同じく、この執事は信用できない語り手の類。傾聴すべき点もまああるが、自己満足、見栄っ張りで、後で振り返ると結果的にはまっとうだった(自分の父や解雇されたユダヤ系従業員を守ろうとした同僚、欧州の中で四面楚歌の米国人大使、車の故障で寄った村で声高に発言する意識高い系の男)を見下し、一方で時代遅れの密室の貴族外交を繰り広げて結果的にナチスを利することになったご主人様にはひれ伏し、最後までそれに気づかない。自分を守りたい潜在心理で、恋の誘いもスルーするが、未練はある。全知全能の語り手でも私小説的な語り手でも、後知恵的に全てを悟った告白者でもなく、あくまで弱く愚かな生身の1人の人間として描出する。これは、ちょっと考えてみれば後々うまくいかなくなることが分かるようなポピュリズムの信奉するような人々を、リベラルな知識人がただ軽蔑するだけでは何も動かない、というイシグロの主張と重なる。話の進め方には余談、雑談の類のアネクドート、脱線話(aside)が満載で、このジャンルの傑作、チェコのハシェクの『兵士シュシュヴェイク』シリーズを思わせる部分もある。
 そしてテレビの連続ドラマの脚本のように、話が退屈になってくると、すかさず結末が気になる挿話(suspension)を入れてくる。また小説全体としても(上の内容に関係する)人物に再開するというクライマックスに向けて進めることで、読者が執事やその主人の俗物ぶりに辟易して途中で投げ出さないような仕掛けになっている。
 ただ、このような計算があまりに露骨で作為的で、伏線の張り方も、この世の力学(心理的なものでも運命的なものでも不条理でもなんでもよいが)ではなく、ただストーリーを読み続けさせるためだけに張っているという作為が見えすぎて、次第に鼻についてくる。それでも途中でやめると気持ち悪いから最後まで読むが、ストーリーは何とか回収・収斂させている割に、浅すぎて何も残らない。今まで気づかなかった世界や人生の断面が自分の中に侵入してきたようなショックが何もない。結局、執事を1人の弱い人間として描いてはいても、プロットの駒にしか見えず、あまり「自分も結局は同じかも」とも思えずに、今度は読者が結局全知全能の語り手になっているだけのように思える。
 執事Jeevesもののウドハウスにしても、アネクドート型のハシェクにしても、そこで語られるおバカすぎる話や策略を通じて、人が逃れられない悲しみや一時的な喜び、人の命など何とも思っていない愚かな貴族たちや国家や社会の不条理(カフカ的な)、書き手の叫び、というものが隅々にまでこだましている。一方、この話にはそれがない。イシグロは、不完全な語り手として突き放してこの執事を描いたつもりかもしれないが、実はイシグロ自身がこの執事と同種の自己満足の語り手になってしまっていて、それに気づいていないのではないか、と強く思わずにはいられない。この執事が自分に欠けていると自覚しているウイットがなく傍観者的であるのも共通している。
 確かに最後まで読者に読ませる力はあると思うが、一方で小説を勉強中の作家が一生懸命プロット表や人物相関図を作り、いったん書き終えてから前に戻って伏線を張りにいくなどの生硬な作為性が目立ち、目指しているものの古めかしさを感じる(ジョイス的な小説がよいというのではなく、たとえば鴎外はこ小細工のできない『渋江抽斎』を題材を自らに課しても、次のページを読ませる筆力があった、という差)。

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紙の本

映画をみているような小説

2021/11/14 07:54

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Pana - この投稿者のレビュー一覧を見る

初めてのカズオ・イシグロさん作品。
とても、ワクワクしながら読み始めた。

大きな事件も起こらず、淡々と主人公の語りが続く。
過去を思い出して、後悔することもあるだろうが、それでも自分の仕事への信念は乱さず、でも、新しいものを取り入れていこう!という、主人公の前向きな気持ちで小説が終わるのが良かった。

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紙の本

消化不良

2017/12/21 07:41

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:beijing5 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ノーベル文学賞受賞を受けて読んでみました。翻訳の文章は原作のテイストを生かしているのでしょうが、文化の違いも含め、何だか浮世離れした感があり、イマイチ消化できませんでした。時代背景含め、日本人には共感できる部分が少ないかもしれませんね。ただし、そのような内容にもかかわらず、最後まで読み切ってしまったのは、ストーリーに力があったのかもしれません。淡々と続くストーリーは、日本でいえば藤沢周平っぽいのでしょうか?たどり着いた先の女中頭との関係は、期待外れでした。

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紙の本

英国らしい洗練

2001/07/29 14:38

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:OK - この投稿者のレビュー一覧を見る

 初老の執事が過ぎた日々を振り返りながら短い旅をする。という、どう考えても盛り上がりそうもない地味な筋書きの話なのだけれど、洗練された書法で出来の良い小説だった。ただ良くも悪くも、身を削って本気で書いた小説ではなさそうだなとは思うけれど。

 結局のところ小説というのは、1.登場人物の視点に感情移入して読む、2.登場人物を突き放して作者の意図や構成を読む、というふたつの段階をある程度並行しながら読んでいくものだろうけれども、本書はこれら両者のバランスがとてもよくとれている。「執事」の一人称語りは、自己を客観視しきれていないいささかうさんくさい叙述になっており、いわゆる「信頼できない語り手」の領域に足を踏み込んでいる。すばらしい執事とは何かについて彼が熱心に語ったり、冗談をうまく返せなくてまじめに思い悩む箇所なんかは、ほとんどパロディ小説のようなおかしさがある。かといって作者の態度は、執事がみずからの職業に抱く誇りをいたずらに嘲笑しているわけでもない。題名を反映した終盤の展開はしみじみと感動的でさえある。このカズオ・イシグロ自身はもちろん日系人なのだけれど、英国の作家というのは伝統的にこのあたりの案配が特に巧いような気がする。それはたとえば一般的には「現代的」「ポップ」などと評されるだろうニック・ホーンビイやアーヴィン・ウェルシュなんかの小説にも感じるところだ。

 「公/私」を対比させる構図も巧い。執事が体現するのは英国の喪われた栄光と「品格」であり(彼の新たな主人は米国人だ)、彼個人はかつて女中頭とのロマンスの機会を逸してしまったのを心残りに思っている。そして彼の敬愛した主人の英国貴族は、ナチス・ドイツに対する英国政府の「宥和政策」に加担したとして糾弾されたらしいことが示唆される。私的な問題から国家の大事に至るまで、誰にでもそんな失敗や喪失の体験はあるだろうと思う。本書はゆったりとそんな追憶に浸ってみせるけれど、しかし結局過去は決して取り戻せず、前を向いて生きるしかない。

 土屋政雄の訳文はすばらしい。「執事の語り」なんて日本語に存在しないものを、たしかにこんな調子だろうなと思わされてしまう見事な翻訳で、おそらく「ですます調翻訳」や「特殊職業の語り手翻訳」のひとつのお手本といえるのではないか。

http://members.jcom.home.ne.jp/kogiso/

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紙の本

主人公

2001/12/26 18:44

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:読ん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ダーリントン・ホールに長年執事として仕えてきたスティーブンスが、休暇をもらって自動車旅行に出る。執事らしい控えめで上品な旅である。旅先では…、これと言って取り立てるほどのことは何も起こらない。「何も起こらないはずはないだろう?」と思って急げ急げと読み進めると…、読み終わってしまった。一人、部屋の中で、天井を見上げ後ろを振り向き、「フ〜ム」と首をかしげて唸ってしまった。「それで、何なのよぅ??」と何度も呟いた。

 どうも私の読む姿勢が間違っていたようだ。本書はストーリーの展開を楽しむたぐいのものではないらしい。これは、ある男、執事という仕事に命を燃やした男の人生を読む小説だ。自動車旅行に出かけ、車の中や宿などあちこちで執事は回想に耽る。ダーリントン・ホールがかつて活気に溢れていた頃のこと、女中頭との出来事、同じ執事として尊敬すべき父のことなど。

 人はだれでも生きている内に「人生」という大長編を綴っている。主人公は著者本人と決まっている。どんなに平々凡々とした人だろうと主人公を他人に譲ることなど出来はしない。この大長編は一般の書物と違うところが一点ある。それは句読点である。「。(マル)」がない。正確には、「。」はページの最後の最後に一つだけである。これは人生の終わりを意味する。「、(テン)」は文中のそこかしこに存在する。人はそれを「人生の節目」と表現する。
 「、」を打つ時に、人はしばしば綴ってきた「人生」を読み直すという行為に至る。本書に出てくる執事は、ダーリントン・ホールが、彼が長年仕えてきたダーリントン卿の手を離れてアメリカ人の富豪の手に渡ってしまうという「、」を迎えた。そこで、執事は「人生」を読み直す。読者も執事と並行して執事の「人生」を読む。

 「人生」は元々人に読ませようという意図は皆無のものである。それをたまたま読んだ時、「人」というものに対していとおしい気持ちでいっぱいになった。だれもが主人公。ある人にとっては常に脇役のあの人も必ず主人公。みんな、みんな。

 本書を読みながら、「退屈や」を連発した私。カズオ・イシグロ氏に申し訳ない。読む姿勢ができていなかったということで勘弁してもらおう。「人生とは退屈なり」である。だから本書が退屈なのは当然のこと。イシグロ氏がこれを小説にしたということが素晴らしい。読者に、他人の「人生」をたまたま読ませられたと感じさせる手法はすごい。

 私の「人生」には、「。」を打つにはしばらく間がありそうである。耳元では常にカリカリと「人生」を綴る音がしている。今は「、」を打って回想する時期でもないようだ。突っ走るよりほかなさそうである。燃料は足りているだろうか? 走れ、読ん太!!

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紙の本

静か

2016/08/19 19:02

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mugi - この投稿者のレビュー一覧を見る

「執事」のイメージが自分の中に出来上がり、物語が静かに進んで行きました。心の中の微妙な動きと恋愛には不器用な「彼」の姿に「このような世界があったのね」と映画を見ているようでした。

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紙の本

テレビ東京塩田真弓アナのお気に入りの小説

2002/07/26 13:59

3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:白井道也 - この投稿者のレビュー一覧を見る

(中公文庫、表4より)短い旅に出た老執事が、美しい田園風景の道すがら回想する、古き良き時代の英国。長年つかえた先代の主人への敬慕、執事の規範のような亡父、女中頭に寄せた淡い想い、両次大戦間に邸内で催された重要な外交会議の数々——。

というような話が老執事の語りで語られるわけだけど、“旅に出る”ってくだりは何というか物語を進めるための装置で、メインになるのは回想。で、この物語の持つ意味ってのは何なのだろうか。

ひとつ、いやがおうでも目に付くのは、主人公の老執事が「執事の品格とはなにか」ということをしきりに語っているところ。品格はプロ意識というコトバに置き換えても良いかもしれないけど、いずれこの物語は、語り部である老執事が「自分はなんだかんだ言ってもプロなのですよ、いろんな事件があったけど私は仕事をまっとうしましたよ」ということを、ささやかに上品に語っているってことだ。

で、プロの執事たるや、主人の洒落にも洒落で返さねばならぬということで、

 主人が執事に望む任務としても、ジョークは決して不合理なものではないように思えてまいりました。もちろん、私はジョークの技術を開発するために、これまでにも相当な時間を費やしてきておりますが、心のどこかで、もうひとつ熱意が欠けていたのかもしれません。

ってな具合でクソ真面目に洒落の練習もするわけだ。
もうひとつ印象的な場面を抜書きするとですね、

 人生が思いどおりにいかなからと言って、後ろばかり向き、自分を責めてみても、それは詮無いことです。私どものような卑小な人間にとりましても、最終的には運命をご主人様——この世界の中心におられる偉大な紳士淑女の——手に委ねる以外、あまり選択の余地があるとは思われません。それが冷厳なる現実というものではありますまいか。

確かにこの小説は限られた世界のお話なのだけど、これを拡大解釈するならば、その世界がいっけん不合理なりに思われたとしても、その中でベストを尽くすことが幸福なのだよ、ということを謳っているようにも思える。

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紙の本

意識されたこの作品行為は思いのほかしたたかな方法論に支えられていると思われる

2002/06/11 08:09

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:宇羅道彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る

下記の言葉は、巨大な不良債権に苦しむ大銀行の、末端に勤務する定年間近か
の誠実な一行員の感慨を思わせる。

「大問題を理解できない私どもが、それでもこの世に自分の足跡を残そう
としたらすればよいか… 自分の領分に属する事柄に全力を集中すること
です。文明の将来をその双肩に担っておられる偉大な紳士淑女に、全力
でご奉仕することこそ、その答えかと存じます。」

カズオ・イシグロの「日の名残り」をこんな風に読むのは皮肉に過ぎるだろう
か。職業が身分を保証する階級社会の残照を巧みに捉えたイシグロの作品はも
ちろん意図してであろうが、極めて辛らつな英国への文明批評とも読める。

身分制度が価値として信じられた時代の不幸と幸せ、そしてそれらへのノスタ
ルジー。充実した断念の人生を書くイシグロの言葉は決して冷たいものではな
い。現代日本の定年間近かの一行員には、おそらく下記のような感慨は到底訪
れることはないだろう。

 「卿の一生とそのお仕事が、今日、壮大な愚考としかみなされなくなった
としても、それを私の落ち度と呼ぶことは誰にもできますまい。」
 「私どものような人間は、なにか価値あるもののために微力を尽くそうと
願い、それを試みるだけで十分であるような気がいたします。そのよう
な試みに人生の多くを犠牲にする覚悟があり、その覚悟を実践したとす
れば、結果はどうあれ、そのこと自体が自らに誇りと満足を覚えてよい
十分な理由となりましょう。」

失われたのは自制と節度をもたらしていた社会の制度である。
制度の崩壊がもたらした自由が、一方では誇りと満足を奪い去ることになる。
自らの卑小さに安住する幸せは、おそらく今日では誰にも許されていない。
むしろそのような幸せを嘲笑することが、気の利いたことであると思われてい
るだろう。

イシグロのこの作品は英国を斬ってみせる返す刀で、現代の先進社会の進歩と
みなされるありようを密かにより鋭く斬っている。執事の人生のという些細な
現実の細部を描いて見せることが、結果的に世界の真実を表現する。
優れた作品の常とはいえ、イシグロの意識されたこの作品行為は思いのほかし
たたかな方法論に支えられていると思われる。

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紙の本

ノーベル賞の前

2019/12/05 14:08

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る

ノーベル賞受賞のずっと前に読んでいました。淡々とした描写の中に溢れ出る万感の思いが胸に迫りました。他の作品も読んでみようと思います。

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紙の本

日の名残り

2017/11/14 13:25

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kazu - この投稿者のレビュー一覧を見る

久しぶりに一挙に読み終えました。 
主人公の振る舞い、生き方は、今の時代を生きる私には理解を越えた、全くほど遠いものですが、それでも読みながら主人公を自分に置き換え、それぞれの時間・場面でどんな気持ちで主人公(私)が、その様な会話をして、女中頭との時・関係が過ぎていったのかを、味会う時間が楽しかったです。小説の最後のシーンは感動的です。

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紙の本

日の名残り

2017/10/19 06:37

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者: - この投稿者のレビュー一覧を見る

ノーベル文学賞を受賞したと言うより10年以上前から気になつていた作家
でした。もう一文庫本を買いなおして再読しました。古き良きイギリスの
風景の中に展開されているストーリーは深い人間の心の彩を描き出している。

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紙の本

土屋政雄氏の歴史的名訳による重厚な一冊。人生について深く考えさせられるブッカー賞受賞作品。

2009/04/27 21:09

22人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

『エデンの東』(ハヤカワepi文庫)や『月と六ペンス』(光文社古典新訳文庫)、『アンジェラの祈り』(新潮クレストブックス)の名訳で著名な土屋政雄訳。
ブッカー賞受賞作品。

さて、カズオ・イシグロ初挑戦しました。
これはもう素晴らしいの一語に尽きますね。
あまり小説に男性向け・女性向けという形容を施したくないが、この作品は男性向けの作品だと思う。
なぜなら作者は“男の人生”を描いているからだ。
でも女性が共感できないということはありません、逆にこんな男に惚れて欲しいと思ったりします(笑)
あとどうなんだろう、特徴としては作者にとっての母国となるイギリスに対して、ある時は誇り、ある時は辛辣に描いているように見受けれる。
物語の始めに読者は主人が今までの英国人からアメリカ人に変わったことに驚きを隠せずに読み進めたのである。
予想通り全体を支配している重要なことでした。
主人公のスティーブンスは老執事。
説明いらないと思いますが、執事と言っても現在日本で取り立たされているイメージの執事とは全然違い、品格を求められるものです(笑)
物語は主人公の短い旅(6日間)に出るところで始まりそして終わる。
男性一読者の私にとって、主人公はいわば理想の英国人に近く写ったのである。
少しイライラする面もあるが許容範囲。
描かれるのはわずか6日間のあいだだが、まるで長い人生を凝縮したような6日間なのである。
前述したがこれはやはり男性読者の方が理解しやすいと思ったりするのだ。

仕事に対するこだわり、父親に対する尊敬の念、そして女中頭との恋愛。
一生懸命に生き信念を通すということが立派な品格を築き上げるのですね。

少し前半凡庸な気もしないではないが心配無用。
中盤からのミス・ケントンとの恋愛感情を含んだ仕事のやりとり。
これは重厚な作品の中にあって軽妙であり楽しめます。

あと付け加えておきたいことは、やはり時代背景と作者の育った環境ですかね。
本作の描かれている時代は1956年。そして旅行中に回想される時代が1930年代です。
ちょうど第二次世界大戦が終わって10年ぐらいたった時期に旅し、第1次と第2次とのあいだの時期を回想してますね。
当時のイギリスのヨーロッパにおける位置づけの認識はかなり重要です。
そして作者はご存知のように日本生まれで5歳の時に両親と渡英。
生粋のイギリス生まれでないところが見事な“少し不器用だけど紳士的な主人公像”を作り上げている要因となっている気がする。

人生すべてうまくいくとは限らない。でも明日のことを考えて生きていこう。
主人公が終盤ミス・ケントンに背中を押されたのと同様、読者も作者に生きる勇気を与えられた。

本作の原題は"THE REMAINS OF THE DAY"、読者は"THE REMAINS OF THE LIFE"を否応なく考えさせられる名作です。
見事な原作に最高の翻訳、未読の方は是非酔いしれて欲しいですね。

男も泣きたい時がある。最後に主人公が流した涙は男の矜持の象徴と信じて本を閉じた。

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紙の本

ゆったり静かに進行するイギリス叙情映画

2014/09/16 12:32

13人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Owl_X - この投稿者のレビュー一覧を見る

極々イギリス的な背景の話だが、日本人の波長に合う。子供の頃からずっとイギリスで育ってきた作者の日系の血ゆえか、あるいはイギリスと日本に共通する感情を描いているからなのか?ドラマティックなストーリーは一切無く、ゆっくり淡々と、回想を入れながら、典型的なイギリス執事の小さな旅が進んでいく。人生を振り返る中に,寂しさと暖かさが醸し出されて、ついつい引き込まれてしまう作品だ。ゆったり静かに進行するイギリス映画を見るようだ。ただし、暗さはない。

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