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- カテゴリ:一般
- 発売日:2001/04/01
- 出版社: 新曜社
- サイズ:20cm/380,34p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-7885-0759-5
- 国内送料無料
紙の本
病気はなぜ、あるのか 進化医学による新しい理解
著者 ランドルフ・M.ネシー (著),ジョージ・C.ウィリアムズ (著),長谷川 真理子 (訳),長谷川 寿一 (訳),青木 千里 (訳)
人間のからだはうまくできた構造をしているにもかかわらず、なぜ病気にかかりやすい欠陥やもろさを無数に抱えているのか−。ダーウィン医学の進化的アプローチから病気の神秘を解き明...
病気はなぜ、あるのか 進化医学による新しい理解
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商品説明
人間のからだはうまくできた構造をしているにもかかわらず、なぜ病気にかかりやすい欠陥やもろさを無数に抱えているのか−。ダーウィン医学の進化的アプローチから病気の神秘を解き明かす。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ランドルフ・M.ネシー
- 略歴
- 〈ランドルフ・M.ネシー〉医学博士。ミシガン大学医学部精神医学部教授、同学部教育研究部副部長などを兼任。
〈ジョージ・C.ウィリアムズ〉ストーニーブルックのニューヨーク州立大学名誉教授。
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紙の本
斬新かつ有効なパラダイム、だが各紙の書評で高い評価を得ている理由は判らない
2003/06/01 14:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一般向けに書かれた、進化医学の概説書である。 最近は 進化医学という言葉が、新聞紙上にも見られる様になったが、非常に新しい学問分野であるようだ。人間と病原体とが、互いに相手を環境の一部として捉え、その環境に適応しようとして互いに機能が変化する自然淘汰による過程で、現在の病気があるという考えで、ダーウィンの進化論を医学に応用したものである。朝日新聞と日経新聞の書評で好評だったので読んでみた。私達が病原体と戦う適応、私達の適応を出し抜こうとする病原体の適応、非適応ではあるが、私達の適応に伴う必然の損失であるもの、私達の体の設計と現代の環境との間のミスマッチなど、自然淘汰による適応ということを中心に議論が進められている。斬新かつ有効なパラダイムであり、興味深い分野であることは分ったが、各紙の書評で高い評価を得ている理由は判らなかった。
紙の本
答:それは進化の産物であるから
2002/03/06 12:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:三中信宏 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間の行動・心理・文化・社会に関わる進化学的なルーツの研究や言及はとかく社会的な論議の的となってきた。しかし、本書は、人間の「文字どおり生物的現象としての肉体」が経験するさまざまな病気に対してさえ、進化学的な医学研究がこれまで皆無であったと警告する。確かに、医学者(医者はもちろんのこと)は苦しむ患者を前にして、さまざまな治療を施したり投薬することにより、その苦痛を軽減しようとしてきた。彼らは病気が「どのようにして生じるのか」という至近要因(メカニズムの解明)をこれまで問題としてきたのだ。これに対して、本書の著者らは、究極要因すなわち病気が「なぜ生じるのか」(進化的起因の解明)にも目を向けるべきだと主張する。この視点に立つ医学研究は「進化医学」(あるいは「ダーウィン医学」)と呼ばれる、まだ新しい研究プログラムである。
本書ではこんな例が挙げられている。血中の尿酸値が高いと通風にかかりやすい(第8章)。通風患者に対して医者は尿酸合成阻害剤を処方し、尿酸濃度を下げることで、通風発作を未然に防ごうとする。これに対して、進化医学は、なぜ人間は、他の動物ならばその体内で合成できる尿酸分解酵素をつくる能力を失ってしまったのだろうかという、通風の進化的起源に目を向ける。そして、悪者にされている尿酸が人間の体内では有害物質の効果的な除去に寄与していることから、個体の寿命を伸ばすという適応的意義があるのではないかと推論する。老化という現代の高齢化社会に直結する大問題も、進化的な観点から新たな見解が提出されている。
すべての病気には、それが「生じる」ための進化的理由があるのだろう;その理由を知ることによって、治療の方針や方法も改善できるのではないか−本書は具体的な症例をたくさん挙げながら、進化医学の可能性を論じる。進化に基づく医学という本書のスタンスを見て、現代医学に対抗するアンチ権威主義的カルトとか、優生学あるいは社会ダーウィニズムと安易に関連づけることはまったくの誤読だろう。全体を通して抑制の効いた表現を読み取ることで、読者は進化医学が何を目指しているのかがきっと正しく理解できるだろう。「病気は、。。。最終的には、過去に働いた自然淘汰のせいである」(p.376)−人間の肉体が過去の進化過程における妥協の産物であるという指摘は、病気を理屈として理解できることを読者に語りかける。もちろん、心情として病気を受け容れられるかどうかは別問題であるとしても。
ランドルフ・ネシーは人間行動進化学会の会長であり、ジョージ・ウィリアムズは現代進化生物学の理論的基盤を確立した。進化学と医学の接点に生まれた新しい研究領域の息吹が本書からは伝わってくる。決して安い本ではないが、多くの読者に恵まれることを期待したい。
(三中信宏/農業環境技術研究所主任研究官)
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紙の本
原因や症状や予防法ではなく、病気そのものの存在に迫る
2001/06/29 22:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケルレン - この投稿者のレビュー一覧を見る
病気はあまりにありふれていて、どんな病気があって、それはどんな症状なのか、何が原因なのかについての本は医学書を中心に数多あり、最近では増える一方の健康についてのテレビ番組でも、いろいろな病気とその予防法が紹介されている。しかし、そもそも病気自体がなぜあるのか、についてはほとんど語られてこなかった。病気は忌むべきもので、それを避ける手段ばかりが取り上げられている。
ところが、この本はまったく別の視点から病気にアプローチする。
病気と言うと、細菌などの悪い力によって生じたもの、と考えてしまいがちだが、発熱や咳など多くの症状は、からだの防御反応で、細菌などが直接引き起こしているものではない。また、遺伝的な要因によって引き起こされる病気もある。著者たちは、さまざまなケースを取り上げながら、病気は遺伝子の伝達を最大化するように、自然淘汰がわたしたちのからだを作ってきたあげくの妥協の産物であると説く。つまり、ある病気にかかりやすくさせている要因が、同時に何らかの恩恵をもたらしていると言うのだ。
鎌状赤血球貧血症の原因となる遺伝子が、マラリアにかかりにくくさせる性質を備えていることは良く知られている例だが、一見不都合に見える要因や機能にも、淘汰に生き残った以上、何らかの利益があると考えられる。また一方では、かつて利益があったが、現代の急激な新しい環境には淘汰が追いつかず、苦痛しかもたらさなくなったものもあると考えられる。どちらの場合も、進化的視点からその利益や仕組みを追及すれば、不必要な治療を減らし、病気をよりよく制御するための知識が得られるに違いないと主張する。
しかし、このような考え方は、医学の現場ではほとんど受け入れられていない。著者たちが望んでいるように、医者が病気の進化的説明をしてくれ、なぜその病気にかかったのか、という患者が最も知りたい質問に答えてくれるまでの道のりは長そうだ。
紙の本
詳細目次
2001/05/18 16:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:三中信宏 - この投稿者のレビュー一覧を見る
【詳細目次】
まえがき i
謝辞 xv
第1章:病気の神秘 1
二種類の原因
病気の原因
本書で述べていないこと
第2章:自然淘汰による進化 17
自然淘汰は集団ではなく遺伝子に有利に働く
血縁淘汰
自然淘汰はどのように働くか
進化的仮説の検証
適応論的アプローチ
第3章:感染症の徴候と症状 39
感染に対する防御としての発熱
鉄分の抑制
戦略と対抗戦略
衛生
皮膚
疼痛と倦怠感
強制排出にもとづく防御
侵入者を攻撃するメカニズム
損傷と修復
病原体による宿主の防御のくぐり抜け
宿主の防御への攻撃
病原体がもっているその他の適応
病気への機能的なアプローチ
第4章:終わりなき軍拡競争 75
過去の進化 対 現在の進化
抗生物質への細菌の抵抗性
毒性の短期的な進化
免疫反応の利益と損失
ますます複雑になる偽装
新しい環境要因
第5章:ケガ 99
ケガの回避
一般化された学習と理解
ケガの修復
やけどと凍傷
放射線
からだの部分の再生
第6章:毒素−新,旧,いたるところ 117
自然の毒素と自然でない毒素
自然の毒素に対する防御
新種の毒素
突然変異と催奇物質
第7章:遺伝子と病気−欠陥,変わり者,妥協 139
遺伝子がすること
病気の原因となるまれな遺伝子
病気の原因となる一般的な遺伝子
無法者遺伝子
遺伝的気まぐれ−近視その他たくさん
遺伝子を怖がるな
第8章:若さの泉としての老化 165
加齢の神秘
老化とは何か
一頭立ての馬車
なぜ年をとるのか
老化のメカニズム
老化の速度における性差
医学的な意味合い
第9章:進化史の遺産 189
他の機能的な設計の不備
最後の仕上げ
石器時代における死
石器時代の生活
第10章:文明化がもたらした病気 217
現代の食生活の不適切さ
現代の栄養の取り過ぎ
中毒
現代の環境に由来する発達上の問題
現代の環境に由来するその他の病気
結論といくつか奨励したいこと
第11章:アレルギー 239
IgEシステムの不思議
アトピー
もっともやっかいな疑問
第12章:癌 259
問題
解決
癌の予防と治療
女性の生殖器系の癌
第13章:性と繁殖 275
なぜ性があるのか?
男性性と女性性の本質
雄と雌のあいだの葛藤と協力
配偶者の好み
欺瞞的な配偶戦略
繁殖の解剖学と生理学
嫉妬
性的障害
妊娠
出産
幼児期
泣きと疝痛
乳幼児突然死症候群(SIDS)
離乳とその後
第14章:精神障害は病気か? 313
感情
不安
新しい危険
悲しみとうつ病
愛情の欠如
子どもの虐待
精神分裂病
睡眠障害
夢を見ること
精神医学の将来
第15章:医学の進化 353
病気の原因に対する総論
研究
なぜこんなに長くかかったのか?
医学教育
診療においてもつ意味
政策上の意味合い
個人的および哲学的な意味合い
訳者あとがき 377
注 [9-34]
索引 [1-7]