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紙の本
ことばのバザール
2001/08/31 15:40
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投稿者:桂英史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
93年刊行の単行本に「講義」を加えた文庫化である。
美術評論はむずかしい。読んでいてむずかしいわけではない。評論をするという行為そのものに触れることが重苦しいのだ。当然である。現代美術の作品の多くが限りなく言説に等しいものになっているからだ。作品の意図を説明するのに、一冊の本に匹敵する言葉を尽くす作家もすくなくないし、芸術の価値そのものを疑っている作家も多い。そうした状況下で美術を素材に評論をつづける著者には頭が下がるが、音楽のトピックスをもちいて曲芸のようなテクストを駆使する本書は、(いささか無意味にまわりくどい)自らの表現をきわめようという意味では、かなり古典的な文芸作品と言ってよい。本書で取り上げられ論じられている作品よりも、はるかに作品的なのだ。涙ぐましい誠実さだ。この涙ぐましさは、何よりも現代美術を論じることの困難さと無意味さを物語っているし、すでに「反-制度」といった気取った美術評論の文脈もはるかに超えている。ことばのバザールのような様相を呈している本書は、「盗め」という誤解されやすいメッセージも含めて、どんどん曲解され誤読されることを望んでいるようでもある。スリリングなテクストそのものも、その実現代美術のパロディにもなっていておもしろい。ちなみに、美大生へ。レポートを書くときに本書のテクストを引用すると論旨が破綻することはまちがいないよ。(桂英史/情報学者 2001.7.3)