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商品説明
われわれの身体とアイデンティティに深く関わるメディアであるファッション。服飾、化粧、身体装飾、雑誌や広告のイメージなど、様々なファッションの中に潜む問題を明らかにする。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
問題としてのファッション | 成実弘至 著 | 5-20 |
---|---|---|
ファッションとポストモダニズム | エリザベス・ウィルソン 著 | 21-50 |
女性をつくり出す仕組み | ジェニファー・クレイク 著 | 51-84 |
著者紹介
成実 弘至
- 略歴
- 〈成実弘至〉1964年生まれ。雑誌・書籍編集者を経て、京都造形芸術大学助教授。
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紙の本
ファッションについて、まだ「肝心なこと」は語られていない。「問題としてのファッション」を語る。
2001/07/18 22:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファッションというと、どうしても、洋服の形がどのように変化してきたか、流行がどのように変化してきたかということだけに議論が集中される。主に服飾史や消費をめぐる現代思想といった分野で取り扱われてきた。けれど、著者や訳者たちは、それには不満なのである。ほとんど明確な定義がなされることがないほど、暗黙のうちにファッションはその現象も言葉も社会に受け入れられているが、成実弘至氏は「われわれの身体とアイデンティティに深くかかわるメディアであること」は間違いないという。こうしたファッションが、本書では3つの観点から論究されている。1)服飾、身体、表象といったファッションにかかわる文化事象を、階級、ジェンダー、セクシュアリティ、人種、国家などのアイデンティティについての問いとして捉える。3)ファッションをめぐる言説が、身体、雑誌、写真、消費空間など、メディアも含めた多様な身体文化として再構築する。4)ファッションにおける表象の問題を、文化研究だけにとどめず、社会学や歴史学など学際的にアプローチする。
ドリンヌ・コンドーが「オリエンタライジング——日本のファッション」というタイトルで論じた考察が面白かった。1980年代、川久保玲や山本耀司などが中心となって、日本のファッションは一躍世界のファッション界に躍り出ることになった。「ボロ切れのよう」といった突拍子もないデザインに様々な酷評は浴びせられたけれど、それから10年ほどは、日本のファッションデザイナーも海外で評価されていたことは間違いない。しかし、90年代に入ると、日本のファッション業界は資本力でものを言わせて、次々に海外ブランドとの提携を行い、「えっ! この海外ブランドも日本企業の傘下に入ったの」という事態がすいぶんと発生した。しかしその一方で、東京コレクションではこれといったデザインが登場することはなく、どれもこれも特徴のないものばかりになってしまった。つまり、日本のファッションは、海外ブランドと提携して、一見コスモポリタン化した時もあったのだが、結局はそれも長続きせず、海外から「あれはオリエンタルなデザイン」と決められることで、その立場を主張するしかなくなってしまった。日本のファッションが生き残っていく道は、ひたすらオリエンタライジングを突き進めていくしかない。
それにしても、不思議なことがひとつある。ファッションを文化として捉えるにしろ、何にしろ、かしこまって論者が語れば語るほど、読み手はだんだんつまらなくなっていってしまうということがある。たった1着の服をああでもない、こうでもないと悩んだ挙げ句、買う時の嬉しさ。年々変化する流行に置いていかれまいとして、いくつものファッション雑誌を読みあさり、「今年はこの服」と決めた時の快感。デパートやブティックをはしごする時の何とも言えないウキウキ感…。そんな形にならない人間の意識のフワフワした部分が、ファッションについての言説の中で語られないのはなぜなのだろう。冷徹に徹しようとするあまり、著者らがファッションそれ自体を楽しんでいないのではないか、とすら感じられる。もしかしたら、楽しいとか嬉しいとかといったフワフワした部分は、語れば語るほど、ウソになってしまうからなのかもしれない。ファッションは面白く理論化することができない、そもそも虚構で固められた現象なのだろうか。それなら、いっそうのこと、虚構であれ何であれ、楽しむことに徹したらどうだろうか。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2001.07.19)