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紙の本
大金持ちと美術品
2001/07/18 06:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀露庵 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者はNHKのテレビ番組取材班で、1984年に出た本が文庫本化されたもの。特番取材ノートの体裁を取りつつ、本書自体が一つのドラマとなっていて、一気に読ませる面白さだ。五つ星のお薦め本。
鎌倉時代を代表する歌仙絵巻とされる「三十六歌仙絵巻」が大正八年に切り分けられて、その後それぞれの絵がどのような運命を辿ることになったか。絵巻とそれを取り巻く人間達の数奇な運命が語られる。番組取材班の真の目的は、美術品としての絵巻物を紹介することではなく、大金を払ってそれを購入した人間達の栄枯盛衰を語ることにある。だから面白い。
平成バブルに勝るとも劣らない、大正バブルの時代に続出した大金持ち達。明治期に財産を作り上げた人々も含めて、彼らは皆人間としてのスケールが大きい。現代ならば、絵巻を切り分ける行為そのものが社会的に非難されるだろう。しかし、彼らの無軌道ぶり、破天荒ぶりを含めて、人間が人間として生き生きとしていて、むしろ魅力を感じるほどだ。
経済規模を当時と比べれば、はるかに日本は豊かな国になったはず。しかし、顔のない法人資本主義になってしまった日本に、こうした破天荒で人間的な魅力に溢れた実業家達は、もはやいない。金の山ができて、人間が消えた。私は本書を読んで、そう感じた。