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おもかげ | 1-38 | |
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女中のはなし | 39-78 | |
葛飾情話 | 79-112 |
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紙の本
書くことはお墓に入れること。お墓に入った街や風俗や人々を、ひもとく。旧式な恋愛にはまりこんでしまう
2001/12/03 22:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:片岡直子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和13年発行の復刻版。
大きな文字で、全てルビが振ってあるので、無理無く読める。
復刻版を読むのは楽しい。
当時の本好き、あるいは、荷風好きな人が、これを一冊買って、寝ころんで、ほくほくしながら、大切に読んでいる姿を思い浮かべながら、読むことができるから。
私自身も、比較的大きな本だけれど、ページを転がすように楽しんだ。小説、随筆、歌劇、俳句。随分と盛り沢山。こういう本を出してくれる作家は、そうはいない。
昨年、機会があって、福井県は三国町の、高見順の荒磯忌に参加したけれど、その時に、集中して読んだ高見順の作品は、正筋の従兄弟である荷風に対して反感を持っていたはずなのに、全く同じ場所を彷徨っていて、お互いの、その近さが新鮮だった。
文藝春秋の「現代日本文学館 39」の「高見順伝」に、開高健は、
「荷風はモダン日本の鼻持ちならぬホンコン・フラワーぶりに手袋をたたきつけてボク(さんずいに墨という字)東へ去ったが、高見順は軍国日本の風に吹きまくられて枯葉のようにキリキリ舞いつつ“モタモタ”を抱いて六区へ飛んでいった」とある。
浅草とはいっても、すでに失われてしまったものが、小説の中に溢れている。
時々、書くことはお墓に入れることだと思うことがある。
そうやって、お墓に入ってしまった街や風俗や人々を、時々ひもといて、おかしな気分になってみる。
「この女とおれとの間に、戀が迅速に成り立った……手放しで済まないよ」などと言うのを読むと、かちかちっと旧式な恋愛にはまりこんでゆきそうな気持ちになる。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人 2001.12.04)