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紙の本
明王朝末期。農民の反乱の気運高まる乱世で、皇帝に父を処刑された主人公の数奇な運命。武侠小説の決定版。
2001/09/03 22:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:橋本光恵 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中華世界に12億人の読者を持つといわれる現代中国の超人気作家金庸の武侠小説シリーズが次々に刊行されているが、これは『書剣恩仇録』に続く文庫本化第2弾。今回の舞台は十七世紀前半、明朝最後の君主崇禎皇帝の時代。皇帝に処刑された悲運の名将、袁崇煥の遺児、袁承志が主人公。父の復讐を遂げるために過酷な修業を積む袁承志が、試練に耐え次々に難技を身に付け、さらに精神も磨きがかかってゆく過程が小気味よくワクワクさせられる。金庸の武侠小説の醍醐味は、第一に主人公のキャラクターの魅力。この袁承志も文武両道に長け、義侠心に富み、弱きを助け強きをくじく典型的なヒーローであるが、数奇な運命の元に生まれ、どこかに悲劇の翳りがつきまとう辺りに、危うい魅力が香り、よりドラマティックだ。
そして、修業の師匠となる老人たちの脱俗的な飄逸感がなんともいえない。華山派の総帥で、“神剣仙猿”と異名をとる武芸の大家、穆人清は元来、偏屈者で弟子をとらず、孤剣単身で江湖(侠客の世界)をわたってきた達人だが、孤児ながら怜悧活発な少年、袁承志にめぐり会ってから心踊らせ、我が子を得たりと奥義を授ける姿が微笑ましい。穆人清の親友の老人で軽功と暗器の達人、木桑動人も加わっての袁少年の修業時代の描写が茶目っ気たっぷりで印象的だ。つまり、百戦錬磨の老人たちをも魅了してしまう主人公なのである。
修業を終え、いよいよ江湖にデビュー(?)する袁承志の前に現れる人々の何と多彩なこと。“金蛇郎君”と異名をとる伝説の剣客、夏雪宜、美貌の下に非情を隠し持つ男装の麗人、温青。そして農民起義軍の首領、李自成や異民族満清族の王ホンタイジ等、実在の人物も数多く登場するが、例のごとく歴史を越えて虚々実々、革命あり、恋愛あり、宝探しありの娯楽味たっぷり。数々の秘技のスピーディーな展開と壮大なスケールを楽しむことができるはずだ。 (bk1ブックナビゲーター:橋本光恵/ASIAN POPS MAG.編集長 2001.09.04)