紙の本
言葉遊戯
2002/05/29 11:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もくもく - この投稿者のレビュー一覧を見る
ルナールと言えば、「にんじん」の作者ですね!
新潮文庫で読むのがおすすめ。表紙もキュートだし、なんと言っても挿絵はボナール!
ところでこれは小説なのかな? ジャンルはよくわからないけどちょっと詩っぽいです。ショーとショートという感じでもあります。蜘蛛とか白鳥とか蟋蟀(コオロギ)とか葡萄畑(ぶどうばたけ)とか蚤(のみ)とかいろいろなタイトルがあって、そこに、1,2ページでコメントがくわえられています。ひねくれているって言うか、独創的って言うか、読んで本当に興味深い。
例えば、『決して立派ではない、私の馬は、むやみに節くれ立って、目の上がいやに落ち窪み、胸は平べったく…(「馬」より。以下略)』という感じ。
自然に対する暖かな視線なんてものはないし、生物学的な見解もないです。あるのは、この毒舌というか辛辣な批評。でも妙に的を得ていて面白い。この言葉遊戯がいいんです。
紙の本
あらゆる側面から読むことを可能にさせてくれる楽しい博物誌。
2006/05/24 13:48
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これぞフランス!
というエスプリのつまった一冊。
その一例をお目にかけようか。
「白鳥」
前半の記述は、いかに彼が水の上を美しく滑り、
雲をつついては空しき影を追うては疲れ…、
死すべきことを暗示する。
ところが一転、「おいおい何を言っているんだ」
彼が泥の中から蚯蚓をほじくり出し、
肥え太ることが暴露される。
何という落ち。
あるいは「孔雀」
来るべき結婚式に羽根を広げる彼。
そのもったいぶった様の描出は、まさにフランスユーモア。
おいおい、何を知ったようなことを言っているんだ。
ーはい、その通り。
でも、この本を読んで(或いはぱらぱらめくって、でもいい)いると、
何だかいっぱしのフランス気取りになってしまうんです。
ふふん、フランスってやっぱりいいわね…コジャレているわね…
紙の本
好みがわかる
2019/05/01 17:03
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投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の好みなのでしょうか。
ものすごく解説が短かったりするものもあって、なんだかクスリとしてしまいます。
こんな風に世界が見えている人もいるのですね。
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好きと言うか、賢治作品と並ぶ程愛してやまない本。なんてハイセンスな言葉の群れなのでしょう! 「鹿」のお話を一番読み返しているかな…。
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えーと、山田正紀の「超・博物誌」が大好きなので何となく買って読んでみました(笑)
著者は「にんじん」が代表作として知られる、19世紀フランスの詩人・作家です。ハイ、あの赤毛の少年が主人公の、赤毛のアンと同じような話なのかな?と思って手に取った夢見る少女の心にトラウマを残すあの「にんじん」です(大爆笑)
この博物誌は、作者の周辺にある自然、主に動物について書き記した散文のようなモノです。一つの項目は長くても文庫で3ページ、短い項目の場合は数行です。ワタシの持ってる文庫版では、全ての項目に扉ページと挿絵のページがついているので、活字の割合が物凄く少ないです(笑)
【例】「蛇」の項目
1ページ目:タイトル扉「蛇」
2ページ目:本文タイトル「蛇」(改行)「長過ぎる」←本文コレだけ
3ページ目:蛇の挿絵
4ページ目:次のタイトル項目を扉ページ(左側)にするためのページ合わせの余白。ページの真ん中に変なマークが一つ。
ぉぉぉぉぉ…!4文字の為に4ページ…!
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「博物誌」ルナール著・岸田国士訳、新潮文庫、1954.04.15
262p ¥240 C0145 (2021.06.18読了)(2021.06.14借入)(1981.07.15/35刷)
原著の初版は、1896年に刊行されています。45項目です。その後、1904年に70項目で刊行されています。この訳書は、1904年の版をもとに翻訳されています。
挿絵は、ボナールです。
小遣いで文庫本を購入して読み始めたのが、高校一年生の時です。そのころから何時かルナールの「博物誌」をいつの日にか読んでみたいと思っていたような気がします。
50年以上たってやっと読めました。
家畜や野鳥、身近な生き物などにまつわるエッセイです。ボナールの挿絵も楽しく見せてもらいました。ページ数の割には、活字の少ない本なので、すぐ読めます。
【目次】
影像の猟人
雌鷄
雄鷄
家鴨
鵞鳥
七面鳥
小紋鳥
鳩
孔雀
白鳥
犬
猫
牝牛
ブリュネットの死
牛
水の虻
牡牛
馬
驢馬
豚
豚と真珠
羊
山羊
兎
鼠
蜥蜴
鼬
蚯蚓
やまかがし
蛇
蝸牛
蛙
蟇
蜘蛛
毛虫
蝶
小蜂
蜻蛉
蟋蟀
ばった
螢
蟻
蟻と鷓鴣の子
あぶら虫
蚤
栗鼠
猿
鹿
かわ沙魚
鯨
庭のなか
ひなげし
葡萄畑
鶸の巣
鳥のいない鳥籠
カナリヤ
燕
蝙蝠
鵲
鶺鴒
くろ鶫!
雲雀
こま鶯
かわせみ
隼
鴉
鷓鴣
鴫
猟期終る
樹々の一家
あとがき 昭和26年1月 訳者
(アマゾンより)
影像(すがた)は、素直に、思い出のまにまに蘇って来る――。
名作『にんじん』の著者が自然を愛で、草木禽獣のいのちを鋭く捉えた名著。
朝早くとび起きて、頭はすがすがしく、気持は澄み、からだも夏の衣装のように軽やかな時だけ、彼は出かける――。
彼は最も鋭い観察者である。愛情のこもった眼を、彼を取巻く自然に注ぎこみ、最も簡明な文体にその愛を凝縮させる。本書はわが国の俳文を思わせる軽妙な短文に、作者の純粋な生活の讃美、高邁で孤高な魂の哀しい表情を写し出した特異な作品である。(挿絵はボナール)
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自然、禽獣を詩的な観察眼で描き起こすルナールの優しいまなざし。水底の泥から溜息のように上ってくる蛙、水面にのぞく淀んだ沼の腫物。孔雀の花婿、もう予行演習も何度もした。花嫁はまだ来ない。中庭の階段を美しい裾をたくし上げながら、結婚式は明日に延期されるだろう、と思っている。
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なぜか購入。
一目惚れに近い感じです。
当初の目的は、西洋人が虫についてのエッセイが、どのように表現されているのかと言うことだったのだけど。
文章で表現される、不意に訪れる静寂。
様々な生き物に対する、柔らかい目線。
素晴らしいとしか言いようがないです。
一番のお気に入りは 『蝙蝠』
夜の娘たちと表現された、哀しげな習性が、ヒットしました。
それと『兎』
死が訪れる瞬間を飾らずに表現。
他にもイロイロ。
目的の昆虫に対しての目線はやはり西洋的な感じがするのだけど、俳句のような短い文の表現が面白い。
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表紙に惹かれて。イメージが水面の波紋みたいに連なってゆく。そこにアイロニーとユーモアが加わって、自分は全てとらえきれているのか不安になってくる。
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ルナールの『にんじん』を読んで、簡潔で詩的な表現に惹かれていた。動物たちを図鑑のように並べつつ、しかし彼独自の詩的な表現で紹介しているのが面白い。『蝙蝠』が一番表現が独特で一貫性があって美しくて好きだ。一方で私自身があまり自然に囲まれて生きて来なかったから、入り込みづらい部分もあった。
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19.10.20
詩的。丁寧に切り取った一瞬と、緻密な擬人化で、こんなに細部を見つめられらのかと恐れ入る。
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詩のような、短歌のようなやさしくリズミカルな短文。
アイロニーに満ちた生物たちの日常を描いている。
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レビューが良いので読んでみたけど私には ちょっと…と、油断してたら「栗鼠」で吹出してしまいました。久々に笑った。やっぱり面白いです。
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ブック・オフでジュール・ルナールの『博物誌』(新潮文庫)を買ってきました。
ひょっとしたら持っているのではという疑問がわかないわけではありませんでしたが、
えいっ100円だということ購入してしまいました。こんなことしょっちゅうあることです(⌒-⌒;)
で、家に帰り本棚を調べあげるとやはりありました、でも、岩波文庫版でした。
まず翻訳者が岸田国士(1974年出版)と辻昶(1998年出版)と違い、
また原本の出版社の違いで、話の項目数も岩波文庫がだいぶ多いようです。
さて、ジュール・ルナールといえば『にんじん』という作品でお馴染みの方も多いでしょう。
その彼が田舎住まいをしていて、身の回りにいるアヒル、猫、うさぎ、ロバなどを
簡潔な文章の中に的確にその動物たちの様子をうつしとっているのです。
新潮文庫版の岸田国士の訳はさすが明治生まれの人だけあって、
少し言葉が硬いですが大変わかりやすい良い文章だと思いました。
あっ、そうそう彼の次女が女優の岸田今日子なのです。
所で、この2冊の本のもう一つの違いが、挿絵にあるんです。
岩波文庫はあの大画家ロートレック、そして新潮社版はなんとボナールなんです。
しかしながら、新潮社版はボナールの他に明石哲三という画家の絵も含まれており、
注書きが無いため、ボナール作品と明石氏の絵の区別がつかないのです。
これは困ったことです。
実は、昨日3冊の古本を買ったのですが、パソコンで調べると、
すべて持っていることになっています。でも、うち1冊は本棚のどこにあるかわかりません。
そして、いつもながら思うのですが、古本屋さんにはあれだけ沢山の本があるのに、
どうして、よりにもよってダブって買ってしまうのだろ~、不思議で不思議でたりません。
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何となく手にとってパラパラめくって「へび - ながすぎる。」の一文が目に入った時、これは読むべき本だと思いました。
ジュール・ルナールが独自の観察眼で身近にいる動物や昆虫について綴った随筆集です。ファーブル昆虫記のような学術的な要素はありません。例えば先述の通り「へび」の項目は「ながすぎる。」この一文で終わりなのです。
「めんどり」の次にくる「おんどり」の正体、「くじゃく」が待っているもの、「毛虫」と薔薇の関係、「ちょう」や「りす」を表した見事な修辞、「こうもり」が生まれるわけ。
哀しかったり可笑しかったり厳しかったり優しかったり、こんな文章を私も書いてみたいです。
訳者あとがきに「訳してはおもしろくないことばのしゃれ」とありました。フランス語が分かって原書を読めればもっともっと楽しめるのだろうと思います。