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文庫

紙の本

1974ジョーカー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

著者 デイヴィッド・ピース (著),酒井 武志 (訳)

1974ジョーカー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

税込 990 9pt

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みんなのレビュー8件

みんなの評価3.6

評価内訳

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紙の本

ひでぇ話なのに読むのがキモチイイ

2001/11/22 09:45

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Snake Hole - この投稿者のレビュー一覧を見る

 日本在住の英国人作家,デイヴィッド・ピースの暗黒小説。オビによれば「馳星周氏絶賛〜数年来,これほど夢中になった小説はない」ってんで大期待して読んだ。……うーん,確かに面白いこたぁ面白いけど,そこまで言ったら「宣伝」ぢゃないか? あ,まぁ「宣伝」なんだけどさ。
 ヨークシャーのローカル新聞「イブニング・ポスト」の新聞記者エディ・ダンフォードは,惨たらしい少女連続殺人を追ううち,地方警察,政界,実業界の暗黒に足を踏み入れてしまう。登場人物は (主人公のエディを含め) どいつもこいつもロクデナシか人非人。まったく英国の上流社会というのは男色と近親相姦,人種差別を取ったら何も残らないんぢゃないか,という感じである。
 キャッチ・フレーズが「ジェイムズ・エルロイへのイギリスからの返答」というだけあって,内容だけでなくリズムを刻む文体や詩のようなリフレインなど,表現手法もかなりプログレッシブである。エルロイの「ホワイト・ジャズ」もそうだったが,翻訳はたいへんだったろう。
 エルロイが「ジャズ」ならこのヒトのリズムはロックである。1974年なのでベイ・シティ・ローラーズがくり返し出てくる (が,あんまり好きではなさそうだ,オレも好きぢゃなかった) 。そう言えばクリスマス・ソングの「Little Drummer Boy」も何度も出てくる。一応その季節の話だからヘンではないんだろうが,他のクリスマス・ソングについては言及がないのは,やっぱりこの曲が好きなのかしら。
 こう言ってはナンダが,内容は「どっかで読んだ話」なんである,が,音楽の使い方がめっぽう上手いので読まされてしまう。殺人犯として捕まった男の家の浴槽に,猫の死骸を沈めて遊ぶ子供らに逢うシーン,ビートルズの「You Never Give Me Your Money」の引用なんざ,真似したくなるくらい「完璧」だ。こんなひでぇ話なのに読むのがキモチイイのはすごい。続編「1977 リッパー」が既に出版されている,買わなくちゃ。

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紙の本

21世紀の代表的ノワールとは…

2001/07/27 10:46

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:キムチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 あまりに独り善がり過ぎてエルロイ風習作の域を出ていない。早川書房が大々的に売り出そうとするにはちとタマ不足なんじゃないの、これ。エルロイかぶれも結構だけれど、過度に散文的な文体を採用するデメリットしか感じられない描写省略が、物語の流れを著しく遮断する。要するに何言ってるかよく分からない箇所が多すぎるってこと。ノワール・ブームに乗っかって人の心の暗黒面に立ち入るには、冷静な周辺描写の足固めと作者本人の秘められた狂気の部分を増幅して、触れば弾け飛ぶテンションがあって初めてエルロイになれるのだが、ピースのそれは単なる言葉遊びである。狂気の欠片が読者の琴線に刺さらない。傷口から流れ出す血糊が透明なまま。

 英国人の殺伐とした気風は興味深い部分があるけど、何故この猟奇的犯行に結びつくのか、連続する殺人事件のミステリ的要素をそうも簡単に剥ぎ取って無理矢理ノワール世界を構築するというのは、エルロイ亜流作家の陥り易い弱点であろう。自分に酔う前にミステリ作家であれ。

 改行を多用してブツ切りにして刻み込むリズムは捨てがたい物があるのは事実。作家としてやっとこ戸口に立った程度の作者に多くを望むのは無理でも、続編『1977 リッパー』でどこまで成長しているか。年代記として四部作にまで暗黒度数が深化しているのかどうか。デイヴィッド・ピースが刻むリズムに心惹かれる方は確かめてみるのもよかろう。この作品のモティべーションとなったピースの見た夢『背中に白鳥の羽が縫いつけられ、性器にバラが突き刺さされた少女の死体』って、とんでもなくアブノーマルなんだけれど、夢に現実を追いつけようとそこから構築された物語ってやっぱり無理があるし、夢見心地のままこういう作品で終わっちゃうのは必然だったかも。んで、ジョーカーってエディーのことだったんでしょうか。なんだかんだで最後はオールマイティだもんね(^_^;)。

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紙の本

2001/08/26朝刊

2001/09/04 22:16

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 暴力と性のうずまく闇(やみ)社会を描く「ノワール」小説の新星と評価の高い英国人のデビュー作。舞台は英国北部ヨークシャー地方。地元紙の記者エディーは、背中に白鳥の羽根が縫い付けられた少女の死体のなぞを追ううちに、上流階級の組織的犯罪や汚職のしっぽをつかむ。追いつめられ堕落していく男の存在感が印象的。四部作の第一部という。酒井武志訳。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001

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2007/11/06 13:55

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2008/03/27 21:27

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2015/05/05 15:40

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2021/05/31 01:13

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2023/03/20 08:01

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