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休日、里川歩きのすすめ (平凡社新書)
著者 井出 彰 (著)
遠くまで出かけるまでもなく、日帰りで行ける川や池、沼、用水を歩いてみれば、そこにはきっと、いろいろな発見があるはず。土地の人と触れ合い、風景を楽しみつつ川の歴史に思いを馳...
休日、里川歩きのすすめ (平凡社新書)
休日、里川歩きのすすめ
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商品説明
遠くまで出かけるまでもなく、日帰りで行ける川や池、沼、用水を歩いてみれば、そこにはきっと、いろいろな発見があるはず。土地の人と触れ合い、風景を楽しみつつ川の歴史に思いを馳せる、楽しい休日の過ごし方指南。【「TRC MARC」の商品解説】
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地域で愛されてきた川などを里川と名付け人々との生活との関わりを浮き彫りにしたユニークなルポルタージュ
2001/09/26 22:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:高橋洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
川は、昔から人々の生活の潤滑油となってきた。米などの穀物をはじめ、さまざまな生活の必需品を町から町へと運び、商人や旅人たちの移動の手助けをした。火事の時には、消防用水ともなった。川は、常に人間たちと共に在ったといえるであろう。
田中康夫長野県知事が脱ダム宣言をし、千葉県知事も三番瀬埋め立て工事の撤回を表明するなど、川に連なる自然の生態系を見直そうとする動きがようやく表面に現れてきているようである。
井出彰著『休日、里川歩きのすすめ』は、地域で愛されてきた川、それもどこにでもあるような変哲のない川から、長い歴史のある川、用水などに至るさまざまな川を、里山に対応する形で「里川」と名付け、それらの里川と人々の生活との関わりを、歩き取材し、考えるという手法によって浮き彫りにした、ユニークなルポルタージュである。
江戸舟運の歴史を持つ、東武・伊勢崎線の新田駅から自転車で行ける綾瀬川は、今でこそ全国の汚染度ナンバー1だが、明治時代には、岩槻、越谷、春日部地方から陸路で運ばれた特産品が、ここから舟に積み替えられ、格段のにぎわいを見せたという。
北に十分ほども貸し自転車で行くと古綾瀬川に出会う。幅もわずか2メートル前後の狭く、曲がりくねった堀だが、水もある。老人たちが柵の網の中で釣りをしている。鮒が釣れると自慢気だ。井出氏は、こうした癒しの側面にも、「里川」の原点を見ているようである。
だが、古綾瀬川も、葛西用水もだいぶ護岸工事が進んでいるものの、玉川用水などと並ぶ歴史上有数の水路である。現在でも、老人や、学校帰りの子供たちが鞄を投げ出して、おやつを食べ、走り、遊べるのは地元ではここぐらいだ。
山梨県の小海線・甲斐小泉駅周辺は、日本名水百選の一つで、一日の湧出量は8500トンという。車で約1時間狭い道を行くと、棚田や段々畑に囲まれ、左右は山、谷底は幅5メートルほどの深沢川が流れる、壊れかかった橋を渡ると山小屋のような一軒家がある。つげ義春の世界を連想させるたたずまいだ。
宿から顎髭をたくわえた老人が姿を現した。宿の主人である。国蝶オオムラサキ群生の地で、ゴマダラ、オオミスジ、イチモンチョウなどの珍しい蝶が沢山棲息している。信玄の隠れ湯の一つだったという温泉もある。
このようにして、井出氏が、一人で、あるいは友人たちと出かけた里川は、利根川随一の支流、渡瀬川、小江戸・川越を支えた、隅田川へと続く新河岸川、韓国のソウルを通って黄海に流れ込む大河・漢江、箱根のJR御殿場線・岩瀬駅近くを流れ芦ノ湖に注ぐ深良(箱根)用水などさまざまだが、いずれもそこに“里川”としての特徴を確認する。 (bk1ブックナビゲーター:高橋洋一/評論家 2001.09.26)