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収録作品一覧
フランスという「国」 | 福井憲彦 著 | 3−20 |
---|---|---|
先史時代からローマ支配下のガリアまで | 本村凌二 著 | 21−54 |
ポスト・ローマ期から中世へ | 佐藤彰一 著 | 55−80 |
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紙の本
待望の『フランス史』がついに刊行された。フランスのすべての基礎となる知識をスマートに凝縮した好著だ。
2001/10/12 18:15
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中条省平 - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史書出版の名門、山川出版社の顔ともいえる「世界各国史」シリーズの新版が着々刊行されている。今回は『フランス史』である。
私はフランス文学を専門にしているが、その講義をするのに、フランス史に触れないわけにはいかない。もちろん、個々の歴史的事件については、専門書や大部の歴史辞典を調べれば大抵の用は足りるが、いちばん難しいのは、大所高所から歴史の流れをつかみ、それを一定の時間的・空間的パースペクティヴとして、立体的な実感をもって把握することである。そうした基礎がなければ、時代や事件は個々に寸断された事象にしかならないからだ。
そんな最も重要な歴史的欲求にコンパクトに応えてくれる書物が、旧世界各国史の『フランス史』だった。井上幸治が当時のフランス史研究の精鋭を結集して編纂したこの本は、奇しくもフランスの五月革命が全世界を揺さぶった1968年に刊行された。今でも私はボロボロになったこの書物を開いて、歴史的知識の整理と確認を行うことがある。それほどよくできたフランス通史なのだった。
この旧版からようやく33年経って、装いを完全に一新した新版が刊行された。まさに待望垂涎の一冊である。
編者は福井憲彦。アナール派やミシェル・フーコー以後の歴史学の方法論の広がりと深まりを視野に入れ、なおかつ歴史の本分である実証的な客観性をも具備する最適の編者といえるだろう。執筆者全員に、いかにも「史書」といった感じの文体を避けて、できるかぎり平易かつ明晰に語ろうという意志が共通しているのも非常に好ましい。
そして、本書の最大の特徴は、本当に「読める」フランス史だということである。年号や事件や歴史用語の羅列を極力避け、歴史の内側を流れる人間的エネルギーの集中と拡散に目をこらし、時代時代の本質を具体的に記述してゆくこと。言うは易く行うは難いそんな作業が、じつにスマートに遂行されていて、必要な事項を「調べる」ために索引から該当ページを開いても、いつのまにかその前後の記述を「読んでいる」自分に気づくのである。
もっと若いときにこんな本で楽しみながらフランス史を勉強していたら、もっとフランスの本質的な理解が血と肉になっていたのに……とちょっと悔しくなるような本でもある。
学生、読書人からフランスに何らかの関心をもつ人まで、必携・必読の好著として万人にお勧めしたい。 (bk1ブックナビゲーター:中条省平/フランス文学者・学習院大学教授 2001.10.13)