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紙の本
いいのか,こんな計画を小説に書いちまって?
2001/11/28 01:55
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投稿者:Snake Hole - この投稿者のレビュー一覧を見る
うーん,なんというかくたびれました。読んでいると肩とか膝とかに力が入ってしまう小説,一般に「監禁モノ」はそういう傾向があるんだけど,これはダブル監禁の上,レイプまで絡むのでなおさらなんである。
少壮の麻酔科医ウィルジェニングスは,出張先のホテルで謎めいた美女の訪問を受ける。仲間が彼の娘アビーを誘拐した,明日の朝20万ドルを用意しろ,警察に通報しないように一晩中この女シェリルが見張っている,シェリルと実行犯は30分に1度電話で連絡を取り,それが不通だったばあいには即座に娘を殺す,というのだ。
彼女によれば,犯人グループはこれまでこの手口で5回も営利誘拐を成功させており,被害者の誰も事件後警察に通報していない,と胸を張る。が,今回の子供アビーには特別な事情があった。彼女は小児糖尿病を患っており,朝までにインシュリンを投与しないと命があぶないのだ。
ちうわけでお決まりの「息詰まるサスペンス」というのが展開するわけなんだが,どうかしら。ウィルの妻カレンのところに現れる主犯のヒッキーというオトコが癇癪持ちのサディストで,彼がカレンを脅迫と暴力で屈服させてレイプしようとする描写が延々と続くのに私はちとうんざりしてしまった。なんてのかな,確かに緊迫はするんだけど,同時にこんなにおこりっぽいスケベ野郎が,今まで5回もこの犯罪を成功できたわけねぇぢゃねぇかちう気もして来ちゃうんだよね。
あともうひとつ,この犯罪が失敗する (一応ハッピーエンドなんで失敗します,これくらいは書いてもネタバレぢゃないよね) その理由というのがかなり特殊なのが気になった。これぢゃこの主人公が相手でなく犯人側がセックスにこだわらなければ,たいがいこの計画は成功しちゃうんぢゃなかろうか。いいのか,こんな計画を小説に書いちまって?
紙の本
読者の弱みにつけ込んでくる誘拐サスペンス。
2001/10/22 23:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:螺旋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー以来スケールの大きい作風をそのままに、一作毎に安定感を増しつつ、前作「神の狩人」では、ハイテクとサイコとエロという新鮮な取り合わせで大いに読ませてくれたグレッグ・アイルズ久々の新作。
成功率100%を誇る営利誘拐犯人が新たに狙いをつけた5歳の少女とその両親。この誘拐の手口というのがかつてない大胆不敵さ、実際に真似する奴が出そうな程のシンプルさと隙の無さで説得力も抜群。しかも犯人達と被害者達が一対一対応でしのぎ合うシチュエーション設定とタイムリミットに向けて多元展開するプロットとを決定づけるという斬新さもあって、グレッグ・アイルズの頭の良さというか、クールな魅力が横溢している。
となると問題はキャラクターだが、人間を描くアイルズの視点は過去の作品の例に漏れずヒューマニスティックで暖かい。登場人物達は、それぞれ動機もリアクションもリアルで納得のいく掘り下げがされ、魅力的に造型されている。例えば、被害者の父親の次のような述懐。
> 医者としてウィルはときどき最悪の病気はなにかと考えてきた。 --- 中略 ---
> だが最悪の傷も、最悪の病気というものもない、最悪の傷とはあなたが負った傷であり、最悪の病気とはあなたがかかった病気のことだ。 p324
憎しみや暴力や性で彩られた物語も、アイルズの、弱さと強さをないまぜにした人間の切実さに対する押さえがしっかり効いて、サスペンスの高まりや緊張感も一層の効果を上げている。えげつないな場面も節度と品格を保ちながら展開するあたり、アイルズを特徴的づける健全さだが決して嫌味は無い。
見事な構成と緩急自在の展開、痺れる緊迫感で読者の鼻面を引き回し、充分惹き付けたところで思いっきりのカタルシスを炸裂させる絶妙な演出力。読ませる作家の例に漏れず、読者の弱みにつけ込んでくるのが巧いのだ。
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