- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.10
- 出版社: 白泉社
- サイズ:20cm/397p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-592-75004-7
紙の本
皆川博子作品精華 迷宮ミステリー編
ミステリー・幻想小説・時代小説の各分野にわたって活躍する著者の、入手困難な作品を含むジャンル別傑作選集第一弾。迷宮ミステリー編には、書き下ろし作品ほか17編を収録。【「T...
皆川博子作品精華 迷宮ミステリー編
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商品説明
ミステリー・幻想小説・時代小説の各分野にわたって活躍する著者の、入手困難な作品を含むジャンル別傑作選集第一弾。迷宮ミステリー編には、書き下ろし作品ほか17編を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
漕げよマイケル | 5-39 | |
---|---|---|
蜜の犬 | 40-64 | |
紅い弔旗 | 65-88 |
著者紹介
皆川 博子
- 略歴
- 〈皆川〉1929年京城生まれ。東京女子大学外国語科中退。「恋紅」で直木賞、「薔薇忌」で柴田錬三郎賞、「死の泉」で吉川英治文学賞を受賞。
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紙の本
ファン必携。珠玉の17編を収録した濃度の高い1冊
2001/12/13 22:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:橋根未彩 - この投稿者のレビュー一覧を見る
皆川博子の傑作短編群を、ミステリー、幻想小説、時代小説と3つの選集にまとめるというファン待望企画の第1弾。本作「迷宮ミステリー編」の選者は千街晶之氏だ。入手困難な作品及び書き下ろし作品を含む、17編が収録された濃度の高い1冊である。
まず最初に。皆川博子の熱烈なファンを自認する方。無駄な抵抗はやめて即座に「買い物カゴへ」ボタンを押すことをお薦めしよう。普段ハードカバーの新刊なんて買わない、今持ち合わせがあまりない、なんていいわけは不要だ。この本が届けば、しばらくの間、いっそ狂いたくなるほど幸せな日々を送ることができるのだから。短編とは思えない、大長編並に濃厚な17編をじっくりご堪能いただきたい。
読者によっては、皆川博子は幻想小説・時代小説のイメージが強いかもしれない。だがミステリーファンにとっても驚嘆の作家であることは、1997年『死の泉』が年間ミステリーランキングで絶賛されたことにも現れている。この「迷宮ミステリー編」は、皆川作品のミステリ的魅力を味わうのに格好の選集だ。
選者千街氏は、デビュー当時からの作風の変遷がわかるように、時系列に選出作品を並べていて、たとえば冒頭『漕げよマイケル』に始まる初期の作品は、皆川特有の「幻想」色よりむしろ、ミステリとしての面白さが際だつ。初期にはストイックだった幻想性は時代を追うにつれ、本来の牙を剥き始める。それでいて、ミステリ的構成にも磨きがかかった結果『ラプラスの悪魔』などの傑作を生む、といった具合だ。
驚かされるのは、現実を描写するときの徹底ぶり、すなわちリアリティである。特に若者の描写は洗練されていて、1974年に書かれたなどとは信じられない。細かな時代背景は違っても、舞台を現代に置き換えても遜色ないだろう。いくら美しい幻想が描けたとしても、いかにも絵空事のような設定では本を閉じると夢も終わる。だが、現実として描かれるシーンがリアルに感じられることで、まず、読者の現実と作中の現実の境界が曖昧になり、時代をも越えて、われわれの世界と地続きになる。そこに、耽美的な幻想が入り込み惑わされるからこんなにも圧倒されるのだ。そして読み終わったとき、どこか不安が残る。これは、描かれる人々が精神に傷を負った弱者でありながら、その困難と絶望は、一見健全な精神にも確実に宿っているということだろうか。
皆川の経歴や時代背景に関しては、千街氏の丁寧な解説を読むことができるので初心者も安心してほしい。皆川本人の言葉を織り交ぜながら、皆川作品を系統だてて追うとき重要となるポイントが示されている。
本書で皆川作品に魅入られたなら、後続の幻想小説編『幻妖』(東雅夫選)、時代小説編『伝奇』(日下三蔵選)も是非味わってほしい。複数の軸で傑作群を追うことによって、『現代最高の幻視者』皆川博子の世界をより立体的に体感することができるだろう。 (bk1ブックナビゲーター:橋根未彩/ライター)