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鷲 (徳間文庫)
鷲
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紙の本
はみ出してないよ
2004/08/02 22:00
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
おかしな話に見える。テロはある時は無造作に、ある時は目的を持って行われる。登場人物は正義のためとか治安のためとかの目的を持たない、やるべきことをやっていると思っているが、実は血が騒ぐだけだ。事件の収束には興味が無い。自分の居場所があればやってきてそこに居り、無ければ去る。痛快な大団円は来ない。別れの感傷も無い。
かつてヨーロッパから中東にかけてテロリスト狩りを派手に繰り広げて警察を放逐された、コードネーム「鷲」こと中郷、伊能の二人組がいる。公用語は「バカタレ」だ。その二人に心酔する人切り伊造こと、焼津の伊造親分。中郷の隠遁する山野の持ち主で、鋭い身のこなしの謎の老人飛地弥五。警察庁に新設された対テロリスト部隊コードレスセクション(CS)の隊長に任命された一葦など。
そして映画撮影のために幼犬の時から闘犬となるべく育てられたが、シェパードもドーベルマンも平気で噛み殺す殺人犬になってしまい人間にも見放された挙句、伊造に拾われた紀州犬のゴロザ。多摩奥地で群れから離れて哲学するようになった雲水猿。この二匹はウマが合うらしい。
八王子では天総統学幹部47名爆殺、検問中の警官張り倒し、警官連続殺人と、警察に挑戦するがごとくのテロが連続して騒乱状態、CSは米国での訓練途中に帰国させられて投入されるが、犯人の目星はつかない。中郷は警察に解決費用として10億円とふっかける。雲水猿は禁猟期に銃も持たない謎の男たちが山に入り込んでいるのに遭遇し、観察する。
彼らは別に反体制的でもないのだが、社会で生きるのはちょっと窮屈なだけなのだ。なぜかと言われても、自然にそうなる。遺伝子のコピーでさえ一定の確率でミスが生じるのが自然における進化の枠組みの一環にすぎないように、能力の過多も含めて性格というものも社会全体において変化の一助として組み込まれているからだ(非社会的ダーウィニズム)。雲水猿も林檎を海水で洗う猿と違わないし、中郷らもテロに抗する社会形成の過度期の徒花に過ぎない。おそらく接してみれば、身の周りにいる酒好きでちょっと癖のある奴だ。そいつが社会の裏でテロリストと暗闘しているとしても、それがどうした。
「オウムがその宗教崩壊のレールを敷いた」「CSのような組織が必要な世界的なテロルの時代になっている」「かりに祖国統一の悲願にはそれなりの興味があったとしても」そんな時代だろ、おい。「そのかわり必要経費は使い放題です」