紙の本
話の中にすっと引き込まれ、江戸の空気が立ち上ってくる味わいに魅了されます。
2004/11/29 20:22
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投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代のシャーロック・ホームズこと神田三河町の岡っ引、半七。彼が関わった江戸幕末の事件を、新聞記者をしていた「わたし」が半七老人から直に聞くとというスタイルの捕物帳シリーズ。この第2巻には、第15話「鷹のゆくえ」から第27話「化け銀杏」まで、13の話が収められています。
メインの事件を半七老人が語り出す前に、話の枕として置かれている前段の部分。ここの“話のつかみ”の部分が巧いですね。その時の季節や天候、近況報告などから、実にさりげなく、話をすっと江戸の事件に持っていくところ。綺堂の押さえた筆致の旨味は、すでにこの出だしの場面から滲み出ているかのよう。実に自然な話の持って行き方、話術の巧さというのを感じます。
そして、事件の成り行きを淡々とした口調で語っていく半七の話に耳を傾けているうちに、江戸時代の空気が立ち上がってきて、まるでタイムスリップしたかのような感覚にとらわれてしまう。江戸時代の人たちが、身近に立ち現れて通り過ぎて行くかのような気配をふっと感じることがある。何げない文章の描写に、ぞくりとさせられたり、しみじみとさせられたり。例えば「津の国屋」の話の中、大屋根に大きな鴉が一匹じっとして止まっていたという描写などは、鳥肌が立つような怖さがありました。
13編の中、とびっきり面白かったのは、その「津の国屋」という話。一種怪談めいた話が進んでいくのですが、推理小説としての妙味も抜群なんですね。登場人物の常磐津の女師匠・文字春が、自分が見聞きしていることをなかなか人に語ることができず、恐怖を募らせていくところなどは、本当に怖くてぞくぞくさせられました。
「津の国屋」以外では、「三河万歳(まんざい)」「槍突き」「化け銀杏」の話が面白く、印象に残るものでした。
紙の本
半七の活躍。
2002/07/30 21:59
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投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
半七捕物帳第二巻。堂昌一氏のカバーイラストも魅力的。
岡本綺堂は、失われた江戸時代の面影を蘇らせようとこのシリーズを執筆した。それだけあってこの作品は江戸風俗がほぼ忠実に描写されている。勿論それだけではなく、海外の推理小説の影響もあって極めて現代的で良質な推理小説となっている。二巻でもそれは健在だ。
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江戸時代を舞台とした、岡っ引半七の手柄話、第二段。
江戸時代の風俗が生き生きと描かれ、江戸時代末の東京が精彩を放ちつつ脳裏に浮かぶ。
江戸時代らしい怪談(だが推理モノ)や、怪しげな宗教にまつわる話など、盛りだくさんな13編。
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【一】を読んでから間が空いてしまったけど、そんなの全然関係なし。物語の面白さプラスこの時代の言い回しとか風俗にへえって思えるのがいい。「彼女」じゃなく「かれ」って言うんだなあ、とか。「一匹」っていうのがわかんなくて辞書ひいてみたりして。楽しかった。
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さて、宮部江戸物読みつくしてしまい、目が行ったのが、半七捕り物帳。読み出したら面白い。これ、大正時代の作品が多い。岡本綺堂作。全6巻。読めるが、書けない漢字って多いのですが、これは、読めない字が結構あります。辞典要りますよ。
江戸捕り物ですが、リアルタイムな話でなく、隠居してからの若い記者への昔語り風。
日本のよさを感じます。
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収録されているのは、「鷹のゆくえ」「津の国屋」「三河万歳」「槍突き」「お照の父」「向島の寮」「蝶合戦」「筆屋の娘」「鬼娘」「小女郎狐」「狐と僧」「女行者」「化け銀杏」。
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明治の代に、つい最近まで岡っ引きをやっていた半七老人の昔話を聞くというスタイルが2重に時間旅行をしているよな、いっそうリアルな感じをかもしだして大好きなシリーズ。討幕の動きで不安定な世情の描き方など、あっさり描かれていますが、まだ、江戸の面影を色濃く残す明治生まれの作者だからこその描写がすばらしいです。髷と着物だけの設定の現代時代劇(?)にはないリアリティー!
今回は暗闇が多かった江戸の夜を中心に怪談話をテーマにした捕物が多いです。子供のころの祖父の茅葺の家が思い出されます。囲炉裏もあるから基本的に煤や漆の黒など、必ず部屋の隅は暗さが残るのです。何か潜んでいるような感じ・・・迷信深いということで片付けられないあの感じが思い出されます。
あの当時、子供は遠くに奉公にだされ、刑罰を受ければ追放。400年前の日本はまさに異世界。
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100年以上前に誕生した推理作家であり、江戸時代末期の雰囲気を知る上で面白かったですが、現代と異なり、刑事訴訟法がなく、こんないい加減な捜査、刑罰でいいのかな?と思ったり。また当時の世相として幽霊、河童、その他妖怪の類を恐れることからの犯罪が多く、今では考えられないなあ、と思いました。しかし、きっと江戸~明治の頃はそのような存在が未だ信じられていた時代なのだと思います。流石に本物ではなく、あくまでもそのような迷信を逆用した犯罪だということですが。その外では意外に現在と違わないのかな、という気がします。
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半七老人の昔がたり捕物帳。淡々とつづられる物語の中で、半七の推理やひらめきが冴えるのが見せ場なのだが、江戸の常識に通じていないとなるほど、とは思いづらかったりすることもある。納得いかないというよりは、へぇ、そうだったのか、という感じではあるが。
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「鷹のゆくえ」から「化け銀杏」まで13編収録。鰻食べたい。何気に顔のない死体トリックが使われていてほほうってなった。辻斬りといえば刀だと思い込んでい た。刀で斬りかかられるだけでも怖いけど、夜道歩いてたらいきなり槍が突き刺さってくる場合もあるのか。自由すぎるだろ。侍道かよ。
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半七捕物帳の二巻目。一巻目に比べ、幽霊話や動物が関わる事件などが多く、中には落語の滑稽話のようなオチが用意されている作品も入っています。こうした「人外のものによると思われる事件」については、読む側の推理の余地が極端に狭くなってしまう(と個人的には思う)のが少し残念で、その分だけ☆を引いてますが、それでも半七の推理の冴えを楽しめることについては一巻目と遜色ありません。
相変わらず日本語は流麗で繊細、かつ彩り豊かです。今の人が憧れるほど江戸の暮らしは好くはなかった、という史実もたくさん出てますが、それでも半七捕物帳に描かれているような、四季の風景や一日の中の天気の移り変わりの鮮やかさには憧れます。恐らく、その色彩を今の日本で感じるのはかなり難しくなっているでしょうから。
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半七シリーズでは江戸末期から幕末、現代までに渡っての時間軸が据えられており、私は知らなかったけれど、私の祖父母くらいならば普通に使っていたかもしれないと思える言葉がよく出てくる。
「因果者師」
「とんだ保名の物狂い」
「売僧」
そんな言葉が出てくるたびにスマホで検索になる。
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2019年9月8日、読み始め。
144頁まで読んで、返却。
・「鷹のゆくえ」
御鷹所(おたかじょ)という単語が出てきたので、調査しておいた。千駄木と雑司ヶ谷にあったようだ。
御鷹部屋は二箇所あった。戸田家が管理する千駄木御鷹部屋と、内山家が管理する雑司ヶ谷御鷹部屋。
・「三河万歳」
三河万歳は、みかわまんざい、と読む。
この三河万歳は何か、それを知らないで読むと、よくわからない話になってしまう。
---以下、引用---
万歳(まんざい)とは、烏帽子に素袍を着た太夫が、才蔵の打つ鼓に合わせて、 かけあいで、めでたい文句をとなえ歌い舞えば、歌のとおりになる、と信じる予祝の芸(祝福芸の一つ)をいいます。古くは800年前、大和国(現在の奈良県)の祈祷師が、京の宮中へ出かける千秋万歳が知られています。
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古書ではなく、新刊文庫として本書が入手できる驚きと喜び。半七が活躍した幕末の江戸に、季節や風景の描写と、江戸言葉がいざなってくれる。本書では、半七が直接に関わった捕り物以外の伝聞を語る話も入っているが、読者は違和感なく物語世界へ入っていける。1917年(大正6年)から連載が始まった本シリーズは、解説の森村誠一氏が指摘するとおり、捕物帖のプロトタイプであり、時代考証の参考となることを、つくづく実感できる。