あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
村上春樹が好きな人にオススメ
2004/05/22 16:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sammy - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは文句なしに面白いですね。
この5作品、書かれているのが約1年ごとになっているのですがどんどん面白さが増してるような気がします。ただ「彼の棲む場所」はかなり村上春樹氏に影響受けてそうですが…。
さて、この中でどれが1番好きかと言われるとかなり悩みますね、正直どれも良かったので…。
老人が死ぬ間際に切望する願い、女子高生が本当に見ていたもの、輝きを失った瞳、何だかどれも心の中に強く残ってくるんですよね。
文章が美しい人っていますが、本多氏はまさしくその人。
実は文章が美しいからあまり思いませんがこの短編集は残酷な話が多いんですよね。
どれも途中までは美しい従姉妹であったり、生徒と先生の恋愛であったり、孫に騙されてあげた老人であったりと切なさ、優しさがあるのにラストで蹴落とされ現実を見せられます。
そういう部分が私好みだったりしますけど…。
そしてこの方の風景描写も上手いです。
「瑠璃」では夏のプールの匂いや眩しさ感じ、「蝉の証」では夏の蝉の大群の鳴き声を聞きいたような気になりました。
関係ないのですがこれってミステリなんですかね?
このミス10位だったみたいですが、どちらかと言えばこの喪失感は村上春樹だったり吉本ばななに
近い気がしました…。
紙の本
空に似ている。
2003/08/14 08:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書と出会えたことは、私にとって一つの幸福である。
私は今まで、ミステリーと聞くとテレビドラマを思い浮かべて、なんとなく敬遠していた。映像と活字。この二つの相違は、凄まじい。映像には映像なりの長所があるし、活字には活字なりの長所が存在する。本書には、活字の長所・魅力が満ち溢れている。山奥の、涌き水のように尽きることを知らないみたいだ。
最も感慨深いのは「祈灯」だった。色で例えるなら、無色透明に白が塗られ、青が混ざって水色になり、赤が加わって紫も出現する。そして最後には、また無色透明に戻る。この色彩豊かな、透明感溢れた文章、それは空に似ていると思う。あくまで私個人の感動だが、心が空になったようだった。不思議な言い回し、巧みな設定。本書は完璧な筆の役割を果たしてくれた。
幽霊ちゃんの性格、これは笑える。ここまで無関心決められる人というのはある意味すごい。観察しているだけでも退屈しないだろう。しかしこの幽霊ちゃんが、とんでもない思いを抱えていたとはつゆ知らず。両親への執着、と言うべきか恨み、と言うべきだろうか…。亡き妹のふりをする事で二人の心から一生妹の存在を消すまいとしたり、罪の意識を植え付けようとしたり。痛々しいと思った。真由子の最後の言葉(元は幽霊ちゃんの言葉だが)がぐっと感動を突き動かした。
「あの小さな灯りの一つ一つに、知らない人のささやかなそれでもかけがえのない暮らしがある。でもそのあとは二通りに分かれる。そのささやかな暮らしのために祈る人と、そのささやかな暮らしを呪う人と」私は前者で在りたいと思った。
「眠りの海」もなんとも不思議な気分で読み終えた。何気ない行動のように思えた京子のそれには、確かに殺意と認められるものがある。最初は偶然の事故かとも考えたが、少年の言葉によって意図的な事故かもしれないと思い始めると、ページを捲る指が止まらなくなってしまった。夕暮れの茜色の空のような哀しみが、じんわりと心を満たす。
笑いを促しつつしっかりと涙腺を緩める。本多氏の紡ぎ上げる文章に、すっかり夢中になってしまった。本書は私の記憶に深く、星霜を重ねても褪せないほどの彩りで刻まれた。絶対に手放したくない一冊である。
紙の本
生粋のミステリー小説家
2002/07/04 16:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:司既 敬 - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんなに素晴らしい小説があるかと思った。…だいたい私はミステリー小説は読まないたちなんですが、何の因果かこの本を読んでかなりミステリーに対する私の偏見が変わった。これまで私のミステリーのイメージは「酷い・汚い・終わり方が微妙」などかなりマイナス思考だったのだが、この本で徹底的に打ち砕かれた。この小説は「汚くもない・酷くもない・終わり方もしっかりしている」そして本多氏の素晴らしい所は陳腐なミステリーだけの話じゃなく、その先にある、人間の「心」があるところだと私は思います。ミステリー嫌いにも是非オススメ! 読んでみてください。
紙の本
自分は誰かの心に残るだろうか
2003/04/05 02:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あう - この投稿者のレビュー一覧を見る
膨大な数の本の中から読みたい本を探す時、ジャンル分けされているととても助かります。そういう利点もあるけれど、時に、ジャンル分けされているばかりに損だなあと感じる本も多いです。「ミステリー」というジャンルに分類されている本書も、そんな印象を受ける本です。
タイトル「MISSING」、表紙には、夕暮れの空の下に笑顔で立つ半透明の女性、帯のコピーには、「忘れられない人…いますか?」 あらすじを読まなくても、興味を惹かれる要素が十分に揃っていました。そして、これらの要素から受けるイメージそのままの中身でした。タイトルになっている「MISSING」という作品は存在しませんが、収録されている5編全部に共通している言葉だと思います。ストーリー的には“ただそれだけ”の話なのですが、文章や人物の台詞に魅力があリ、心に染み入ってきます。そして、どれにも「死」というものが絡んでいて切なさを強く感じるものの、暗い気持ちになるということはなく、逆に読み心地の良ささえ感じました。決して死を美化させていないのに、透明感のある綺麗な印象を受けるのはなぜなのか不思議でなりません。
人が亡くなるとその人との思い出は永遠にそこで止まってしまいます。けれど、思い出は変えられなくても、それに対する想いはきっと変えていけます。人の心の複雑さと深さを感じる一冊でした。そして、自分の心に残っている人たちのことを考えながらも、自分は誰かの心に残っているだろうか、たとえ死んでも忘れられない人として残るだろうか、どんな印象で残るだろうかと、そんなこともぼんやりと思いました。人の心に残るということは簡単そうで実は難しいものなのかもしれません。
紙の本
人情物
2002/08/20 04:43
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ともかくもあちこちの書店で派手にポップをつけて平積されていたので、そもそも「出来の悪い作品ではなかろう」、という予想はしていた。で、実際に買って読んでみても、たしかに期待が裏切られることはなかった。充分に面白かったと断言出来る。
だけどだけど、……そんなに騒ぐような秀作かなあ?
という疑問が、読後、ぽつりと脳裏に浮かんだ事も事実。
たしかに、造作的はそれなりによく出来ている、……とは思うんだけど。あのー。ようするに、その、人情物でしょ?
紙の本
ミステリだけでなく
2002/05/13 07:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:琴 - この投稿者のレビュー一覧を見る
MISSIGという題名どおり、何かを失った人たちの話。短編集。次作のALONE TOGETHERも、それなりに面白いですが、こっちのほうがレベル高いです。エンターテイメントなのに、純文学の香りを帯びているところがなんとも言えず素敵。ちゃんとミステリーしているんだけれど、仕掛け以外のところが読ませる。むしろ、ミステリ的な部分はおまけという感じすらします。静かな感動の静かな物語たちです。表紙もイメージどおり。
紙の本
タイトル通り、せつなさが残る短編集
2002/04/16 01:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:リゲル - この投稿者のレビュー一覧を見る
5つの短編のすべてに何らかの形で“死”というものが関わっているが、物語の最後は、ほんの少しだけど、希望とか救いがあるように思う。
印象的なのは、“祈灯”の最後のシーンで、主人公の妹が言う言葉。高いところから夜の町を見下ろすとき、一つ一つの小さな灯りの中に知らない人のささやかな、それでもかけがえのない暮らしがあるんだって考える。
でも、その後は二通りに分かれる。“そのささやかな暮らしのために祈る人と、そのささやかな暮らしを呪う人と”“私は祈る人になりたい”と妹は本当に祈る人のように両手を組んで瞼をとじた。私もそうありたいと思う。
文章もきれいだし、雰囲気が村上春樹に似ているので、春樹さんが好きな人は気にいるかもしれません。